嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

遭遇EX

俺はリビングに行き、珍しく父と母のそろった様子をみて感動してしまった。昔から父と母がこんな風に一緒にいるのってあんまりみたことが無いんだよな。そのわりに仲は、無茶苦茶いいから不思議だ。やっぱりあんまり関わらないのが夫婦円満の秘訣なのかね?いや、でも子供作ってるわけだしな。しかも3人も。案外この二人は無茶苦茶仲がいいのかもしれない。いや、むしろこの家族全体がそうなのだろう。俺を除いて、ではあるが。・・・いや、違う違う。俺だって母さんには好かれてるから。ホントだよ。嘘じゃないよホントだよ。主夫になるまで養ってもらうつもりだしな。あ、いいこと、思いついた。俺が如何に家族に愛されているのかを証明してみよう。とりあえずは拓を可愛がってやろう。
「おお、結構可愛いな」
「お兄ちゃんが言うとマジでロリコンっぽい。」
「いや、まだ生まれて1年も経ってない奴に可愛いって言ってロリコン扱いならば世の父親の大半がロリコン扱いじゃねえか。俺なんかまだまだだ」
「いや、お兄ちゃんがいうと、って言う話だから。」
「それ、もっと酷いじゃねえか。肉親に、しかも妹にロリコンっぽいって言われる兄の気持ちを考えろ。考えてください。マジで。傷ついちゃうから」
泣きそう。泣いてもいいんだよ。いいや、妹の前じゃ泣かないね。
「お兄ちゃんって言ってることが分かりにくいよね」
「いや、お前の文章読解力がなさすぎなんだよ。中学から本格的に国語始まるんだから気を抜いてるとすぐにやばくなるぞ」
「でもお兄ちゃん。春はね、もう稼げるのだよ。暮らしていける」
「世の中そんなに甘くないぞ。ちょっとのミスですぐに破綻するんだ。今はネットで稼げたとしてもそういうのって大抵危険なんだ。やめろよ」
「ええ~~」
「それ、拓?お兄ちゃんだぞ~~」
「(ぷい)」
春を無視したのがいけなかったのだろうか。拓に話しかけても目線をそらされてしまった。これ、マジでダメージ大きいんですけど。
「ああ・・・・。俺ちょっとやんなきゃ行けないことあるから部屋戻るわ」
「そう。じゃあね」
「そうだな。しっかりしろよ、2人もしたの子が出来たんだから」
俺は、あまりにも気まずかったので部屋に戻ることにした。ちょっと本気でショックなんですが何より言い分も降りてきたしロリコン発言がまだ突き刺さってるし眠いし。


部屋に戻り、俺はすぐに作文の書き直しに入る。確かテーマは人生についてか。まあ、俺の考えておいた分で十分だろう。小説書いて文章力はあるし。


人生
人生とは養われることから始まる。子供に生まれ通常は二人の親に養われるのだ。そこで人との関わり方を知る。例えば人間関係が得意そうな親二人に生まれたら自分もそうなろうとするだろうし逆にちょっと図々しかったりして回りに迷惑をかけるような非常識な親の元に生まれれば迷惑をかけまいとぼっちになる道を選ぶであろう。全ては観察である。人間観察だ。その点で言ってしまえばそれが趣味であるぼっちは、原点回帰している素晴らしい人種であるといえよう。「初心忘れるべからず」の名言がある以上、原点回帰こそ正しい。ならば養われる、という原点回帰もまた正しいといえよう。俺は、これから親のすねをかじりつくそうと思っている。実家暮らしとか幸せだし。でもまあ、愛されていなければそういうことは出来ないだろうな。しかし俺は違う。無茶苦茶愛されている。それこそ、小学生の頃なんかは家事全般や、買い物を大体任せて来るレベルに信用されていた。信じる=愛すである。それに小2の頃、両親が喧嘩した時なんかは、母さんが死のうとして俺を道連れにしようと考えていたレベルである。無茶苦茶愛されているであろう?だから俺の将来は安泰。後はゆっくりじっくりマダムキラースキルと女性受けのいいスキルを獲得して専業主夫になるだけである。
まとめとして言うのであれば一言。まずい飯をかじるくらいなら親のすねをかじれっ!


うむ。前回に負けず劣らずの出来だな。寝よ。




翌日。昨日と同じ時間帯に俺が職員室に行くと誉田先生と生徒が話してきた。上履きの色から察するに俺と同じ学年であろう。なんたって赤学年だしな。アイドルじゃないのでそこは注意です。ちょっと魔だ時間が掛かりそうだったので踵を返して職員室から出た。それにしても全然声が聞こえなかったな。いろんな意味で声が聞こえなかったな。神の耳でも普通の耳でも聞こえなかった。少なくとも悪意の音が聞こえなかった。それは匂いからも色からも空気の動きからも分かる。もしかして誉田先生を信じているのだろうか。まだ数日しか経ってないのに?それっておかしいだろ。


しばらくして話が終わったのか職員室からさっきの奴が出てきた。それにびびってちょっと衝突しちまった。個人的に無茶苦茶気まずい。
「あ、とごめ」
「(ぺこぺこ)」
俺が謝ろうとすると全力で礼を何度かしてから立ち去ってしまった。何はなしてたのか聞くのは、流石に野暮ってもんだし興味も無いんだがそれしても俺の予想を裏切るような奴らばっかりこの学校にいて驚く。俺の力に過剰に反応したり反応がゼロだったりする奴もいれば始めからゼロの奴もいる。ただ、いつもひっきりなしに聞こえてしまう本音があいつらからは聞こえないからちょっとだけ安心してしまう部分もある。まあそんな事はどうでもいいだろうな。それよりもさっさと先生のところに行って出さなければ。そう思って職員室のドアを開け誉田先生の元に向かう。


























けれども俺には安心する資格は無いのだ。そもそも俺でもほんの少し自覚していたのだ。俺がこんだけ不器用で、どんだけこの世界の奴らを上回っても”不適格”であるのだ、と。そしてこの世界はそんな俺を超えてくれなかった。例えば超えてくれたならば俺も自分が不適格であると本気で認められたであろう。でもこの世界は俺に負けた。そんな世界に俺を安心させる資格は無い。それと同時に俺も安心する資格や世界に適合するだけの資格が無いのであろう。それもうすうす気付いていた。気付いてしまっていたのだ。けれど気付かないふりをしていた。それが正しいと思っていたし俺は誰よりも優れているのだから考える必要もないであろうと思ったのだ。けれど昨日、北風原に出会い、KAMOと対戦しそして今さっきあいつにぶつかってそれで少しずつ崩れていた俺の中の何かが動き出してしまったのだ。それは俺以外の俺な様な気がして俺の中にとんでもない獣がいるのだと、肝に銘じた。

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