嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

前夜

この世には残酷な運命とは言うものが存在する。例えば俺の人生。きっと俺の人生はかなり残酷なものなんだと思う。それは例えば客観的にみて哀れむべき人生だ、とかそういうことじゃないんだと思う。多くの創作家が言う。伝える。「この世はとても生きづらい」と。そして結果的に言う。「頑張ってみる価値ぐらいはある世界なのだ」と。もしも、もしもそうだとしてそれを語る彼らはこの世界を完全に知っているのだろうか。それを知っていなければ頑張ってみる価値くらいはあるだなんて言ってはいけない。ライトノベル、アニメ。そういった文化は宝だ。創作の中でもライトノベルやアニメといったものはよりリアルに人々の”理想”をあらわしている。つまりラノベとは、アニメとは理想である。それこそもてない人間がきゃっきゃうふふなラノベを欲しアニメを欲するように、周りに可愛い人のいない人間が可愛いキャラを欲して求める。気が利くキャラやぼっちのキャラ。結局は全て求められているのだ。そんな世界で誰しもが始めに提示する「世界が腐っている」という言葉と最後に提示する「世界をまだ見限るのは早いかもしれない」という文言。それがとても嫌いだった。というより大嫌いだ。何度も何度も攻略した。この世界を。小学生の時も中学生のときも完璧に自分を磨き結果としてゲームを完全に攻略しきった。その結果得たものは、ただ一つの結論。
   「世界は腐りきっていてどうしようもない。」
そのありきたりでけれども俺が十数年かけて得た結論こそ、この世界のルールである。まあ、大抵のやつはこんなことを言っても聞き流すよな。けど俺はそいつらよりもやりこんでいるし縛りプレイをしている。そんな生半可な俄かプレイヤーに否定されるほどの攻略レベルじゃない。
――――――――――そもそも俺は強キャラだった。親にはかなり恵まれた。子供は生まれてくる親を選べないって言うがその中で俺は結構いい親に生まれられた。それについてはラッキーだったがそれが無くても何とかなっていただろう。母親は作家、父親は役者。中学校生活3年の間にも二人はどんどん成功して行き父親はレギュラー番組も数本掛け持ちしているし自分の冠番組ももっている。かと思えば母親は、推理小説から純文学、童話など様々な分野に創作を広げていってシンプルで奥深い童話をベースにしている純文学「昔話の行く末に」シリーズがかなり売れていてドラマ化もされた。ラノベについては、かなり厳しい姿勢をもっているようでコメンテーターとしてもよくテレビに出て話している。妹は中学生になっている。と、言う事は勿論俺は高校生になったのだが何より妹は、すごい。ネットでアイドルをやっているらしい。テレビには出ていないがそれでもかなり人気だ。歌が上手いのと可愛いのと喋り方が上手いという3点によってかなりの人気を博しており俺も鼻が高い。まあ、基本的には俺の教えた技術なんだけど。まあ、俺の家族のことだなんてどうでもいい話だ。高校生。義務教育ではない。正直勉強はそこそこ難しい。それでもよく考えれば何とかなる部分はある。ゲームのおかげで時間がどんどん削られている部分があるがその分ゲームもやりこめた。アクションRPGであるライデイは、3まで発展しレート対戦が可能になりよりシンプルかつ奥深いアクションどスキル制ゲームになった。その中で俺は「NEKOMI」というキャラ名で登録しレート1位を保っている。同率、だけど。


そんなわけで同率で並んでいる「KAMO」を抜くために今日もレートをもぐっている。俺の名も知られているので大抵、俺をみたら捨てバトルのように捨て身アタックをしてくるがたまに慎重になる奴以外は簡単に倒せる。最速タイムを更新してまた一戦を終える。楽勝。ノーダメージだ。今日だけで既に15勝目。まだ1時間もやっていない。だが色々とやらなくてはならない部分もある。そのうちの一つが入学時に出されていた宿題。作文である。テーマは人生について。めんどくさいテーマだが、それでも書かなくてはならない。何しろ明日が高校の入学式当日。正直この世界はクソゲー判定されたのでライデイほどの価値もないし攻略する気はさらさら無いのだがそれでも作文は書いておかないと将来に差支えがある。一応食って行く分の金ぐらいは自分で稼ぐつもりだしそうなった場合、よりいい大学にいかなくてはならない。そこから派生して少しでもいい印象を与える為にも始めから忘れ物とかありえない。かつて、印象について学んで置いただけの事はあって人の印象のコントロールは得意だ。けど人にこびるつもりは無い。友達は作る必要性もないしだったら人の感情を伺ってコミュニケーションを練習して作戦を練る必要も無い。ここまで来るのに時間が掛かったが攻略し終わったゲームだと思えばそれで問題ない。一度ライデイをストップして机に向かい、作文を書く。と、思うのだが時間は既に19時を回っていた。ついつい春休みということもあり時間感覚がずれている。料理は俺が作ることになっているので流石に作文を書いてる余裕も無い。そんなことしてたらきっと・・・。
「おにいちゃーん。おなかすいた。ご飯まだー?」
間延びした妹猫実春ねこざねはるの声が響く。やっぱり、
こいつ食い意地は張ってんだよな。まあ、別にいいけど。
「すまんすまん、今から簡単なの作るから。それで?父さんと母さんは?」
「あ、ああさっき電話でお母さんは、ネタ探しで急に北海道に行きたくなったから2泊3日でいってくる
らしい。お父さんは収録で泊まり。」
「おうよ。全く母さんのマイペースさはどうにかして欲しいもんだ。まあ、小説自体は面白いから
文句言えないんだけど。じゃ、今日ぐらいはお前の好物作るか」
「おーサンキューお兄ちゃん。大好きだよー」
そんなやり取りをして夕飯をつくる。ずっと昔からこいつとは一緒にいた。けれどこいつも知らない。
3年前。中学校の入学式とは全く別物のこの日常がある。同じ入学式前だけれど違う点ばかりだ。
俺が今住んでいる家だって違う。千葉じゃ不便だってことで東京に引っ越すことになりならば自由が丘とかおしゃれな町にいけるところがいい、ってことで引っ越した田園調布。近くに専門のゲームショップが無いのと千葉じゃなくなってしまったのが残念だが俺がすんでいたところは標準語を使っていた地域だったので言葉で困ること自体はなかった。けれど全くの別物。年だけじゃなくて俺の思考自体が変わってしまった。いや、俺の目標の一つが達成された。だから構わない。変わってしまっているわけじゃなくてただ一歩進んで成長しただけなのだ。そう信じたい。

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