嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

始まり~4

過去の事は、過去のことだ。あの先生がもしも俺の過去の暗号を解いたとしてもそれは小学生の脳で作った程度のレベルの低いものでしかない。まあ、勿論それでも解ける人間なんて限られているだろう。それは、勿論母譲りの言語能力がなせる業であり俺の努力のなせる業だ。だからそれについての言及はしない。問題は、あの先生をどうやって遠ざけるか、である。それについて考えるのに4時間目を消費してその後その日は、解散ということになりいつものメンバーに加えてグループの中心に慣れそうな候補数名と側近として扱いやすそうなメンバー数名に声をかけておく。それこそつばをつけておくのと同レベル。俺が牽制しておけば後々仲間になってくれるであろう。後は勉強と運動。この辺でそれなりの実力を示せば何かしなくても見方は増えてくれるし生徒を味方につけてしまえばたった一人の先生にはどうすることも出来ない。俺を変えようだなんて俺に面白さを求めようだなんてそれこそ傲慢な話だ。俺に期待してもいいことなんか無い。期待なんかされても重いだけだしそれこそ受け流してしまうだけなのだから。
そして俺は家に帰った。母は、部屋に篭ったままで小説を執筆しているので必然的に鍵をあけるのは俺、ということになる。妹には鍵を持たせるのはまだ早い。というかあいつ、結構遠いところのあんまり頭のいいとはいえない普通の小学校通ってるから俺の方が帰宅早いからな。そんなことを考えながら鍵をあける。
オープンザドアである。正直遺産相続で得た、古い家なのでお世辞にも新品さながらにきれいとは言えないためドアをあけるとギギギッという効果音が鳴り響く。まあ、そんなのはいつものことで山を越えたら引っ越すらしいし気にすることは無いのでさっさと中に入る。家に入り自分の部屋に直行。制服から部屋着に着替えベッドに横たわる。明日の策を考えなくてはならない。これについてはまあ、俺が特に困ることは無く問題はどこまであの先生に飽きられずに生徒の人気を集められるかである。人気を確かめるのに最も便利なのは生徒会長選挙。口では人気投票じゃないといっても中学生、高校生の選挙なんて人気投票がほとんどである。それが9月なのでまあ、時間は残っている。9月までに全校生徒の5分の4以上の票を獲得できるような人気を得る。それが俺の目的だ。なのでそれまでにプロセスを立てる。
まず1つ。男子の人気を得る。これが第1段階。これは部活などを使うと効率がいいのだが正直部活だと偏ってしまう可能性があるために使えない。なので部活以外の方法。まあ、部活に行く奴を応援してやったりすればいい。帰宅部、というのは中学生じゃ少ないのでそれもまた一つの話題として使えるだろう。これをしておくことによって「男らしい」みたいな印象を女子から受けることが出来る。女子とばかり話すとなよなよしてるぅ~~と思われたりしてしまうからな。
「たっだいまぁーー」
考えていると妹の間延びした声が聞こえる。俺の妹ということもあってそこそこ可愛い。だからモテルに決まっているのだが中々友達を家に連れてこない。いやいや、妹の事はどうでもいいから。
第2段階。女子と仲良くなる。まあ、基本的には頼れるという印象を与える。それ以上に好意を持たせることが出来れば最高。中学生だ。マセていなくたってそれぐらいありえるだろう。彼女も作る気が無いけど多分いつか告白されるだろうな。むしろそれが目標。
そして第3段階。クラスの中心になる。そして第4段階、学校の中心になる。第4段階とゴールはほぼ等しいものである。それよりも、あいつ五月蝿いな。
「お兄ちゃん、昼ごはん作ってよ。おなかすいた」
「っち、五月蝿いな。分かった分かった。ちょっと待ってろ。」
妹の五月蝿い声をさえぎりキッチンにたった。


あれから何日もたった。俺の人気は鰻登りで誉田先生以外の先生からも生徒からも人気だった。下駄箱にはラブレターが入っていることもしばしば。それがものすごく悲しかった。始めにラブレターを入れられたのは入学式の2日後。それから増えておそらく女子生徒の全員から貰ったであろう枚数になった。勿論複数入れられることを考慮して、である。何より中学2年の時には既に直接告白されるようにもなった。皆が皆俺の本当の姿なんかみてなくてなのに恋をしていた。ただ、勘違いならそれもよかった。けれど俺の作り上げた仮面に本気で”マジ”で恋をしてきているのだ。それが絶望的だった。ふざけるな、そう叫びたくなった。結局俺と同世代の奴は誰一人仮面の奥を見破れず先生だってかなり鋭いであろう誉田先生以外見抜くことは出来なかった。児童心理学を学んでいる教師ですら、見破れるのはただ一人。いや、あの先生だって全ては見破っていない。むしろ大事な一点を見逃している。つまり俺はこの世界に完全に勝利したわけだ。ゲームをクリアしきった。ゲームセット。完全クリア。裏ラスボスも何十回も倒してステータスをしっかりと振ってレートで1位になったようなレベルにやりこんでクリアした。そして何より勉強に於いても俺が1位だった。勉強については傾向を読んでしまえば簡単に暗記できたし授業中の話を記憶するだけで十分だった。中学1年の選挙で俺は生徒会長になった。それから学校の改革にも成功した。神になった。GMとして学校というミニゲームを制御するにいたった。それがちょっと策を練って努力しただけで出来てしまった。それに絶望してショックでショックでたまらなかった。
「お兄ちゃんさ、何か最近元気ないよね。生徒会長を続投することになってでもそんなんで疲れるほどお兄ちゃんがやわじゃないのも分かってるし何かあったの?振られたとか?」
「振られた?・・・ああまあどうだろうな。振られたことねえし分かんねえけどな。でも、ほら1年間待って読んでたラノベの最終巻を読み終えたときみたいな感覚なんだよ。分かるだろ?」
「あぁ、なるほど。たとえが中学校でのお兄ちゃんのリア充っぷりに反してオタクすぎるけどまあ分かる。そっか・・・そんな感じ。まあ、いいんじゃない?頑張っていこうよ。もう、あと数ヶ月でおにいちゃんも受験の中学3年生なんだしさ」
「そだな」
1月1日。正月の朝。そんなことを二人で話した。




俺はこのゲームを攻略し続けた。この世界がクソゲーかどうかを断定するにも十分な材料がある。けどそれ以上に断定できたことがある。それはこのゲームの”プレイヤーがくそ”だということだ。


この日、俺はこのゲームを攻略するのをやめた。この世界がクソゲーなのも確かでプレイヤーもクソでだったら攻略する必要が無いのだと俺は断定した。そしてアニメ、ゲームにのめりこんだ。

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