嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

入学式~3

続々と名前が呼ばれC組の出席番号30番の奴の名前が呼ばれ次のプログラムに進んだ。例によってというか型にはまってというのか校長先生の話である。声が野太く、やはり色々な手を使って昇進したんだなと思ってしまう。しっかりと仮面を被りあたかも優等生のように話をよく聞く。だが正直言って全く面白くない。何が協力して頑張ろうだ。何が共に学びあえだ。全くもっと馬鹿馬鹿しいしこんなことを毎年毎年話す校長先生側の気が知れない。まあ、覚悟はしていたので聞き流す。後で感想を聞かれたときのために完全に頭にインプットしておく。なに言ってたか分かる?とか言われたら困るし一字一句記憶し同時に要約してその感想を教師用と生徒用で分けて更に保存する。どうよ、この高スペック。努力の甲斐があってこの程度造作も無いといえよう。他の生徒もだるそうながら一応そこそこの優秀な人間たちということもあり流石に言葉をさえぎって話していたりはしないようだ。だが、甘いといっちゃ甘いけど。
「ええ、これど話を終わりたいと、思います。新入生の皆さん。あなた方の先輩はあなた方を見ていてくれると思います。なのではじめのうちはどんどん頼ってください」
テンプレコメントで話を終えた校長先生は舞台から降りて席に座る。この次はPTA会長の言葉。その次が現生徒会長の言葉でその後が新入生代表つまり俺の言葉である。PTA会長は、呼ばれて席を立ち舞台にあがって行く。ものすごく記憶に根深い光景。それこそ卒業式の時だってこんな流れだったしもう慣れた。
「この良き日に皆さんが入学できたことを喜ばしく思います――――――――――。」
またいつもの言葉から始まりさっさと進む。小学校の入学式のときは子供ではなく親に向けていっていた言葉だが6年たった今。俺たちに向けて話す言葉はあの頃のような幼子に言うようなものではなくだからといって自身のしたの存在であることを明確に示すようなトーン。トーンの扱いが下手すぎるな。
「これをもって祝辞とさせていただきます」
その言葉と共に話が終わった。次は生徒会長の言葉だ。生徒会長は舞台に向かって後ろから歩いていき舞台に立って話し始めた。男だ。かなりトップカースト。やはり生徒会長選挙は、人気投票な節があるな。いくら人気投票じゃないと分かっていたとしても自分が仲がよくも無い人に公約だけで票を入れるのは無理な話だ。例えば応援演説だって人気が無ければやってもらえないし推薦人だって人気が無ければいくら日ごろ働いていたとしても不可能である。つまりこの世は、非常だ。一歩踏み間違えればそれでアウト。
「在校生一同、皆さんの中学校生活を応援したいと思います。何かあったら迷わず声をかけて下さい」
そんなリア充オーラ全開の言葉が連なり最後にまた一緒に頑張りましょう的な言葉を発して生徒会長の言葉も終わった。あたかも人生の成功者のような話だった。トーンも無意識にやっているのだとすればホントにリア充の中でも最高峰の天才。いや、リア充自体おそらくかなりの天才だ。人生の天才。人間関係の天才。いろんな意味の天才であるけれどその点で言えば俺は何も出来てはいない。俺は天才じゃない。努力家だ。
そう考えていると俺の名が呼ばれた。俺の言葉である。原稿は舞台においてあるといっていたしおそらくあのよく使われる台的なところにあるんだろう。ほら、司会が書類とかおいてるあれ。ということで舞台に上がりおいてあった原稿をとる。まあ、言う事は完全暗記してるけど。これは才能じゃなくて特別に記憶能力を鍛えたからというだけだ。やっぱり天才がうらやましい。
「在校生の皆様、ご来賓の皆様、職員の皆様。温かいお言葉有難うございます。桜吹雪の舞う心地よいこの春の日にこの学校に入学できたことを心地よく思っております。」
よし、完璧だ。順風満帆。原稿をみたふりをしているものの全く読んではいない。さらさらと次の言葉が出る。こういう多くの人間が俺をみているとどうしても内臓の奥の奥に隠して埋め立てた言葉を吐き出してしまいそうで気持ちが悪い。でもそれを顔には出さない。よし、次の言葉だ。
「先程まで、先輩方が怖かったらどうしよう。先生方が信用なら無かったらどうしよう。同級生と仲良く出来なかったらどうしようと思っていた人もいたと思います。ですが校長先生の温かいお言葉やPTA会長様のためになるお言葉。生徒会長様の頼りがいのあるお言葉を聞きそんな心配は吹き飛んだんじゃないでしょうか?僕は勿論吹き飛びました。中学生になったら優しかった小学生でさえ冷えきってしまうのではないかとそう心配でしたがそのような心配は無駄だったのでしょう」
息を呑みながら次の言葉、次の言葉と御託を並べていく。だめだな。どうしたって吐き出してしまいそうだ。でも俺の仮面ならば抑圧するぐらい簡単だ。トーン、スピード、声量。どれもしっかりしている。それでも課題は見つかる。それはもっと努力しておかないといけないな。
「今一度先生方、ご来賓の皆様、先輩方にお力添えをお願いいたしまして結びとさせていただきます」
最後の一言、力を入れて集中して発する。何の問題も無い。天才に追いつくレベルの努力を俺はしている。天才すらも見下しうるようなそこまでしても許されるほどの努力が俺にはある。一礼して原稿をおき席に戻っていく。周りでは、「すげぇ、同い年かよ」「完璧じゃん。まじカッケー」などの声が聞こえる。
それらの言葉にはどうしても喜べないし苛立ってしまう。いや、これはただの八つ当たりだな。ただの八つ当たりでしかないのならそれは、忘れるべき感情だ。
その後、保護者向けの説明を少しされて教室に戻り担任の話を聞いてから集合写真を撮った。簡単だ。写真一つ取ってもものすごく集中力が必要だ。何が大変って同級生の両親にいい印象を与えるにはこの方法しかないのである。故に作り笑顔を完全に隠す究極といえるような笑顔を見せた。
「はい、いいですね。有難うございましたこれで終わりです」
そう、写真家の人が言ってその日は、解散となった。さっき約束したように俺は同級生と帰る約束をしているのだがそういったときは親を親同士で仲良くさせる。それにより印象がアップする。ちょうどよく母親はそこらの親が食いつく仕事をしているからな。


             ――――――俺の策に抜かりなし。1日目完了。

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