ゼロとアイ

秋原かざや

3 探索しようっ!!



 さて、どこから調べよう?
 とりあえず、クローゼットの引き出しを開けてみる。
 まずはひとつめ。


 …………空だった。


 うん、これはこれでおいといて。


 二つ目に行こう! きっとそこにはっ!


 ぐいっと力いっぱい開くと、すっぽーんと引き出しがすっ飛んでいった。


 …………………えっと。あの?


 かん、こん、かんっ!!
 良い音を響かせて、壁にぶつかって、落っこちた。
 ついでにいうと、やっぱりそれも空。


 はあ、はずれでしたか。はあ。
 何だか重い気がする引き出しを戻して、もう一度、部屋を見渡す。


 気になるのは……やっぱり、あのポスター。
 ちょっと、むかつくんですけどっ!!
 胸も大きくて、しかもあたしよりも可愛くて、むかつく。
 本当に……むかつくっ!!


 べりっと破る勢いで、それを剥がした。


「……なに、これ?」
 そこには、ピンクのカードが貼り付けてあった。
 何も書いていない、まっピンクのカード。
「一応、貰っておこう」
 壁から剥がすと、自分のポーチに入れる。




 そういえば、と思う。
 確か、窓があったはずだ。そこから出られないかしら?
 あたしは思い出して、窓の外を覗く。
 ついでにいうと、窓を開けずに、だ。
「きゃあっ!!」
 突然、巨大な鳥が窓を通過した。
 まるで、あたしを狙っているみたいに……。
「あ、開けなくて良かった……」
 開けていたら、きっと、鳥があたしを襲っていたことだろう。
 鋭い爪に嘴、タダではすまなかったはずだ。
 ほっと息を吐いて、少し落ち着いてから、もう一度、ぐるりと部屋を見渡す。


 後、怪しいといえば………ぬいぐるみ、かな?
 ゼロの部屋にもなかったし………ん? でも、このぬいぐるみ、どこかで見たような……?




 そこは騒がしいゲームセンター。
 あたしは、じっとUFOキャッチャーの前で見つめていた。
「可愛い……」
 けれど、こんなの、あたしじゃ絶対に取れない。
 1000円くらい、ドブに捨てるようなものだ。
「なら、取ってあげようか?」
「えっ?」
 そこにはゼロがにこっと微笑んで。
 そのキャッチャーの前にいくと、コインを入れる。
 数分もしないうちに、ゼロは。


 ぽとん。


「ほら、取れたよ」
「あ、ありが……とう……」
 まさか取ってくれるなんて、思ってなかったし。
 こんなに早く取れるなんて思ってなかったし。
 本当に本当に嬉しかった。嬉しかったから、あたしは飛び切りの笑顔で……ゼロに抱きついたのだった。




「思い出した……」
 そう、これは思い出のぬいぐるみだ。
 そして、ぬいぐるみといえば、中に硬い物が入っていれば、きっと。
「うん? なんか入ってる……」
 ご丁寧に、背中にはチャックがついてあった。
 あたしはそれを慎重に下ろしていく。
「箱?」
 小さな小箱が入っていた。……箱!!
 もしかして、あたしが探していたあの『アトラクタの箱』!?
 ……でも、蓋が開かない。
 鍵も付いていないし……あるのは、何かを差し込む隙間だけ。
 ……隙間?
 あああっ!!


「さっき手に入れたカードっ!!」
 あたしはポーチからピンクのカードを取り出し、その中に差し込んだ。
 すると、箱はぱかんと音を立てて開いた。
 その中には、鍵が一つ。


「アトラクタの……箱じゃない……」
 『アトラクタの箱』ならば、その箱の中にはパズルのようなピースが入っているはずなのだ。
 それが入っていないとなると、これははずれ。


 でも……この鍵があればもしかして!!


 あたしはすぐに部屋の扉に駆け寄り、鍵穴に差し込んだ。
 かちりと音を立てて、鍵が……開いたっ!!


 こうして、あたしはなんとか、ゼロの部屋から抜け出すことができたのだった。

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