ゼロとアイ

秋原かざや

4 行き先は行き止まり?

 やっとゼロの部屋から脱出できたと思ったら……。
「あ、あれ?」
 そこは見知らぬ通路でした。
 しかも……行き止まり。
「見たことない通路だし……えっと?」


 そういえば、思い出したんだけど。
 確か、あたしの探してる『アトラクタの箱』。
 夢の深いところにあるって言っていたような気がする。
 深いところって、もしかして、もっと部屋の奥に行かなきゃダメ?


 ……じゃあ、あの部屋には、ないってことだよね。
 つまりだ。
 ここも実はハズレだったりする?


「その前に、行き止まりなんですがっ!!」
 そう、それよそれ!
 まずは、ここから出て、更に奥に行かなきゃならないのよ!!


 というわけで、ぐるっと通路を見渡してみる。


 あたしの背中にはゼロの部屋への扉があるのは前提ね。
 で、向かって右から見ていきましょう。


 目に入るのは、大きな窓、3枚。
 その下には、赤い消火器が一つ。
 ん? 奥の方できらっと光ったような……気のせいかな?


 次に左側。
 なぜか知らないけれど、壁にぴったりと貼り付けたような形で大きなジオラマセットが……設置してある。
 田舎の風景を模した、鉄道模型。あ、電車は動いているんだね。可愛い。
 ……で、でも……なんで、そんな長閑な世界をぶち壊すように、ちょこんと怪獣が乗ってるわけ?
 しかも一つだけ。かなり異彩を放ってます。


 そのジオラマがある左側の壁には、上の方に張り紙も張ってある。
「見ないでっ!!」
 さっきの部屋で見た紙と同じ文字。
 どういうことだろう?


 ジオラマの途切れた壁には、大きな鏡。
 全身だけでなく、窓の風景もばっちり見えそうなくらい。
 本当に大きい鏡よね。
「ついでに髪を直そうっと」
 これで、よし。


 で、行き止まりの壁には、扉はない。
 あるのは、一枚の額。
 しかも風景画だ。
 どこかの展望台から見た、湾岸風景みたいな?
 夕暮れなのが、何だか素敵。
 ……あれ? これ、どっかで見たような……?


 とにかく、次の扉がないから、この通路を探って、道を見つけなきゃいけない。
 道じゃないかもしれないけれど、ここを出て、更に奥に向かって。
 あの『アトラクタの箱』を見つけないと……。


 そう思って、あたしはもう一度、通路の中のものを改めて確かめたのであった。















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