廃屋に潜む、闇の中

秋原かざや

怖くて死にそうです!!

 ひょんなことから、私は廃屋に来ました。
 最初は私を含めて5人だったのに、何時の間にか1人になっちゃいました……って、マジですかっ!?


 うううう、廃屋内が非常にリアルで迫力アップしてるんですがっ!!
 しかもね、壁の落書きの文面もなんだか……。


『おいで』
『早く早く』
『あそぼ、あそぼ』
『赤城参上!』
『すぐそば』
『好き、だから』


『一緒に死んで』


 ひーーーーーっ!!!
 ま、ままま、まだ、まだ死なないですからっ!!


 と、とにかく、早く皆を見つけよう!
 なのに、歩いた形跡が見当たらないし!!
 廊下が少し土に埋まってるから、足跡が見えると思うんだけど、それが分からない。
 ふみふみしてみると……意外とこの土、固いんだ。
 ……ふえー、もしかして、本格的に迷ってるっ!?
 あ、また部屋発見。
 ……いや、私、入らないし。
 そう思って、通り過ぎたときだった。


「くすくすくすっ」


 わ、笑い声!? も、もしかして、皆、ここに隠れて私を驚かそうって魂胆かっ!!
 なら、開けてしんぜよう。一人っきりの怖さを教えてあげるっ!!
 えいやっと、勇ましく雄々しく勢い良く扉をがちゃりと開けた。


「……あ、あれ?」
 誰もいない……。だって、さっき笑い声が……。
「くすくすくすっ」
「そこっ!!」
 とライトを声の聞こえるところにかざした、そのとき。


「そんなんじゃ、足りないよ?」
 目の前に、すぐ目の前にドアップで、おかっぱ頭の女の子が出てきたっ!?
「ひっ!!」
「くすくすくすっ」
 しかも小さい子供なのに、背が高い……違う、浮いてるんだっ!!
 体も透けてて、後ろの背景も見える……。
「ゆ、幽霊っ!? きやああああああああ!!!」
 びっくりして、急いでその部屋を飛び出した。
「くすくすくすっ」
「ひーーーっ!!」
 走って走って、階段を駆け上がる。
「はあ、はあ……」
 なんとか、幽霊を撒いたみたい……。


 私は1階から2階に来ていた。
 だんだん、涼しいから寒いって感じになってる。
 パーカー着てるのに寒いってどういうこと?
 ぶるりと震えながら、頼みの懐中電灯を通路へと向けた。


 カシャン。
「へっ?」
 誰かいるの?
 そう思った。
 カシャン、カシャン。
 また、音が鳴った。
 まるで、金属と金属がぶつかったような、そんな音。
 きっと、誰かいるんだ。
 ハルカ達だっ!!
「ハルカ、ユキ、カズ君? トール君!?」
 音の聞こえたところに私は駆け出した。
 近づくのは一人の影。
 え? 一人?
 だって、私以外は4人いるはずで……え?


 カシャン。
 何か大きな荷物を背負っていた。
 カシャン。
 どこかで見たことのある軍服。
 カシャン、カシャン。
 それが近づいてくる。
 あれって、確か銃剣とかいう……銃剣っ!?
「きやあああああ!!」
 たたたた、確か、トール言っていなかったっけ?
「兵士の幽霊が出るってぇええええっ!?」
 こっちに向かってくるっ!! 来るよーっ!!
 撃ってこないことを見ると、あれには弾が入っていないのね!?
 って、分析してる場合じゃないっ!!
 急いで走って逃げる。
 カシャン、カシャン。
 近づいてくる音から離れるように、もう全速力で!!
 階段を上がると……兵士はやってこなかった。


 もしかして……階ごとに居る幽霊が違うってこと?
 ってことは……や、やっぱり、ここにも幽霊が……?
「ふえええ、もう止めてよぉ~」
 帰りたいけど、皆が居ないなら、帰れないよ?


 ぴちゃん。
「きゅあああああ!!」
 せ、背中に水、いや、雫が落ちたっ!!
 っていうか、なんで雨漏りしてんの、ココ!!
 思わず、また走って逃げちゃったじゃないの!!
「び、びっくりさせないでよねっ!!」
 ぷんすかと、思わず地団駄を踏んだそのときだった。


 べきっという音と共に、ふわりと浮く感覚があって。
「えっ?」
 思わず下を見てしまった。
 見てはいけなかったのかもしれない。
 深い深い暗い闇。
 私はそんな穴に……落ちていってっ!!
「きゃあああああっ!!」
 急いでさっき来た廊下をつかもうとして、遅かったことに絶望する。
「だ、誰か助けてぇ~~!!」
 吸い込まれるように、私は……穴の中に落ちていった。
 もちろん、懐中電灯はしっかり離さずに。

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