ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE EX-2 らぶらぶデートの行方

 えー、はじめましての方もそうでない方もこんにちはな、実況のキッドです。
 今日は披露宴をやった二人……えっと、うちの友達、サナっちと、おっそろしい化け物ならぬ、ラナンがデートするというので、仲間と一緒に尾行中。あ、お子様まゆっちは、宿屋でお留守番。後でお土産買ってあげないとね。
 それはさておき、あたしは尾行スキルあるからいいけど、他の人、大丈夫?
「あら、私、まだ盗賊よ」
 ああ、ミスティさんはおいといて。
「問題ない、カモフラージュアイテムはバッチリだ」
 きゅぴーんと目を光らせて、アルフさんは両手に木の枝を持ってます。
 そういえば、隠れ枝っていう、アイテムがあったっけ。
 それさえあれば、尾行スキルと同等の効果を発揮するっていう……ああ、両手に持ってるのそれですか。
「ボクは、いざとなったら、透明マントで隠れるから」
 セレさんも凄いアイテム持ってるんだ。それ、いくつもイベントこなさないとゲットできない、レアアイテムなんですけど。
「気配消せるから、問題なし」
 ああ、銅山さん……あっと、ここではとうさんって呼ばれてるんだっけ。
 流石はハイレベル武士! そんなスキルをお持ちでしたか。
 そういえば、カインはどうなの?
「ああ、私か? 尾行スキルなら習得済みだよ」
 あれ? 確か、カインって魔法騎士だよね? そんなスキルゲットできたっけ?
「課金してゲットしました」
 ……マジ?
「大切な人が狙われたら大変でしょ?」
 いや、そういう意味じゃなくってさ……ああ、もういいよ。
 とにかく、みんなと一緒に、二人のデートを尾行して楽しんじゃおう作戦発動中っす!!


 で、やってきたのは……ファーストレイン・バザール!
 今日は格安バザーの日なので、いろんな人でごった返してる。
 みんな、はぐれないように……って、言ってる先から、もうアルフさんの姿が見えないんですけど!
 まあいいや。
 途中で合流できるでしょ、たぶん。
 えっと、サナっちたちは……お、アクセサリー屋で物色してる。
 あそこのアクセサリー屋、安くてかわいいのが揃ってるんだよね。
 あたしも一つ、買ってこようかな?
 え? バレる? 大丈夫、尾行スキル88をなめんなっ!!
 ………。
 獲物、ゲット。
 …………。
 お買い物、終了!!
 ほらできたー!! サナっちも気づいてないよ。すごいでしょ?
 ………、ミスティさん、そこで呆れない。
 おっと、サナっち、いいの発見したみたいで、あそこから動きません。
 どうするどうする? ここで良いトコ見せないと、男がすた……おおっと!!
 さっすが、金持ち魔人!! 買ってあげました!!
 おおお、まずは好感度プラス5って感じだ。
 買い物を終えた二人は、そのまま店を出ていきました。
 あれ? ミスティさん、セレさんとカインは?
「さっきの店で欲しいのあるんですって」
 また脱落者が……ま、いっか。
 とにかく、あの二人を追いかけなきゃ!!


 今度はオープンカフェに入った模様。
 こちらもこっそりと覗き見してます。
 えっと、サナっちはパフェを選んだみたいだね。魔人は……へ? ちょ、マジ!?
 そこで、それ注文する!? アホか、アイツは!!
 何を注文したかって?
 ここのカフェオリジナル……巨大トロピカルスペシャルパフェを選んだんだよ!!
 あほ、あほの言葉しか出ないよ。なに考えてるの?
 っていうか、サナっち止めないし!!
 むしろ、応援してる? つーか、マジ止めろって!!
 ほーらー、きちゃったよ、超でっかいパフェ。サナっちは普通のサイズよりやや小ぶりのパフェだけど。
 あーあ、知らないよ。腹壊しても、うちら責任取らないからね。
「大丈夫」
 とうさん、それ、シャレになってないし。
「ラナン大食いだからねー」
 へ? 今、なんて?
「いっただきまーすっ!!」
 嬉しそうにがっついてます!!
「ファイト、ラナ君!! あまったら私も食べてあげるね♪」
「んーん。らいじょーふ。これくらいなら、たべれふ、あぐもぐ」
 ………マジ?
 がんがん食ってるんですけど?
 ホントに、マジ?
「だから、言ったじゃない。あの子、よく食べるのよ。ここではセーブしてるみたいだけど」
 マジ? 思わずガン見しちゃうんですけど!!


 一時間後。
 あの人は、ばっちりあの超巨大パフェ、完食しました。
 ……レベルあげたら、あたしでもなれますか?
「やめときなさい。あの子が特別なのよ、食に関しても」
「はーい」
 自ら危ない橋を渡るのは、やめよう。うん。
 なんていうか、化け物は、本当に化け物でした。敵に回したくない。マジ。


 場所は変わって。
 デートもいよいよ終盤に差し掛かりました。
 ムード溢れる小さな池のある公園に来ました。
 なるほど、あの池のボートに二人っきりで乗ると。そういうことですか。
 空は既に黄昏色。
 雰囲気はバッチリ。
 流石は魔人。そこらへんも考えているようですね。
 ………あれ?
 ここに来て、とうさんの姿が見えないんだけど?
「ああ、いつの間にかいなくなってたわ。どこに行っちゃったのかしらね?」
 ミスティさん、気づかなかったんですか。
 いや、あたしも人のこと言えないんだけどさ。てっきりついて来てると思ってたんだけどな。
 お、二人を乗せたボートが、木陰に入りました。
 むむむ、ここからだと見づらいな……。
「あら、まあ!!」
 え? なになに? なにがあったわけ?
「ふふふ、二人、キスしたわ」
 なんだってーっ!! こっちじゃ影になって見えないんだけど!!
 あ、見えた!! ……って、もう終わってるじゃん!!
「残念だったわね~」
「くー悔しいっ!!」
「まだまだ覗き見のスキルが甘いみたいね」
「くー、なんかとっても悔しいー」
 ん? 何? ミスティさん、こっち見てにやにやして。
「じゃあ、覗き見の極意、教えてあげましょうか?」
「え?」
「大丈夫、痛くしないから、ね?」
「ちょ、ちょっと待って、それって痛いんですか!?」
「あら、ちくっとするだけよ。最後に」
「いや、そんな怖いことイリマセンカラ!!」
「そう言わずに、照れないで」
「照れてないっ!!」
「ほらほら、デートまだ続くわよ。ここからが本番なんだから」
「いやもう、いいです!!」
「……先輩の言うこと、聞けないって言うのか?」
 は、はいっ!?
「はい、いい子ね。じゃあ、行くわよ!」
「あーーーれーーー!!!」




 ちゃぷん。
 池の中に手を入れて遊んでいるサナはふと、顔をあげた。
「どうしたの、サナ?」
「うん、なんかね、キッドの声が聞こえたような気がしたんだけど」
 ラナンは遠い場所を眺めて、そして告げる。
「大丈夫だよ。彼女も向こうで楽しくやってるだろうし」
「だよね、うん、きっと気のせいだよ」
 こんな感じで、二人も素敵なデートを満喫したのでした。

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