ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE24 凄い呪文ゲット!? ついでに、えええ!?

 夢を、見ていた。
 とっても気持ち良い場所で。
 ふわふわしていて。
 光に包まれているのに、全然眩しくなくって。
 むしろ、本当に守られているって感じで幸せだ。
 このまま、ここにいたい……そう思ったときだった。
『そこで、何をしている?』
 知らない男の人に訪ねられた。
 青い髪の不思議な服装をした、たぶん、年上の人。
 けれどおじさんとかじゃなくって、お兄さんみたいな感じ?
 それになんだか、目に見えないカリスマオーラが凄すぎるというか。
 恐れ多いというか。
「あの、ここ、どこですか?」
『……知らずに来たのか?』
「いやあ、気がついたらここにいて」
『……そうか。なら、もと居た場所へ帰るが良い』
 ずっと表情がなかったんだけど。
『そう心配するな。途中まで導こう』
 そう僅かに蒼緑の瞳を細めて、僅かに微笑む笑顔が、なんだかとっても素敵で。
「ありが……とう……」
 お礼を言ったんだけど、届いただろうか?
 とっても、胸が温かくなる、素敵な素敵な、夢が……。




 気がついたら、私はファーストレインの町にある宿屋で、横になっていた。
 ご丁寧にベッドの中で。
「あ、あれ……?」
「サナっち起きた!?」
 がばっと覆いかぶさるように出てくるのはキッド。
「カイン、カイン!! サナっちが起きたよ!」
「サナ嬢、無事か!?」
 キッドの声で、カインさんもやってくる。
 二人とも安心したかのように、笑顔を見せてくれた。


 二人の話によると、私が突然、凄まじい呪文を放って、ぶっ倒れてしまったとのこと。
 お陰でモンスター達を一掃し、イベントもクリアできたが、すぐ帰ることができず、ここの宿屋で一泊したということだった。
「ああ、1日しか倒れてなかったんだ」
「一日でも充分!! もう、サナっちが声をかけても全然反応しなかったから、本当、心配したんだよ!!」
「ごめん、でも……すごく気持ちの良い夢みてた」
「「はああっ!?」」
 それなによーといわんばかりのキッドを抑えつつ。
「夢の内容、もう、忘れちゃったよ……」
 とっても気持ちの良い夢だったことは覚えているんだけどな?
「そ、それよりも、サナ嬢。昨日のあの呪文は何なんだい?」
 カインさんの言葉に。
「そうそう! あたしもそれ、聞きたかった!!」
 キッドが加わる。
「うん、あのとき、もう限界だーって思ってたんだけど」
「私もそう思ったな」
「あたしもあたしも」
「もう面倒くさいから、一気に倒せる力を下さいって願ったの。そしたら、女の人の声が響いてきて、呪文を教えてくれたの」
「「何だってーーっ!?」」
 だって、そうなんだもん、仕方ないじゃない。
「そんなんで、会得できるものなの!?」
「いや、それはとても稀なパターンだと思うが……」
 かなりプレイしているだろう二人も困惑してるみたい。
「と、とにかくさ、サナっち。昨日、唱えた呪文って、ちゃんとステータスとかにあるわけ?」
「えっと……あ、あった『ライジング・ディア・ランサー』周囲に居る敵全てを、天から降って来る雷神の槍でなぎ払います。但し、必要なHPとMPを大量に消費します。足りない場合は、あなたの全てのHPとMPを消費します……だって」
 私の言葉を聞いて、カインさんもキッドも静かになった。
「なるほど……だから、倒れたんだね」
「っていうか、消費HPとMPってどれくらいよ?」
「んーと、HPが1000で、MPが6500。ちなみに私の今のHP400にMP1500」
「倒れるわな」
「倒れるね」
 納得してくれたようだ。
 私も納得。っていうか、こういう凄い呪文って、こんなんしてゲットできるもんなの?
「いや、普通は……まあ、私は魔術師ではないから、詳しくはないけれど、普通ならば、いくつかのイベントをこなしてからでないと会得できないはずだ」
「どうして、サナっち、レベル以上の呪文習得できたんだろね?」
 とにかく、私も目覚めたってことで、食事して。
 落ち着いたところで、まずは、セレさんのところに戻ろうって事になった。
 もしかしたら、セレさん達なら、何かわかるんじゃないかってね。


「えっと、移動、するね?」
 緊張した面持ちで、私はセレさんから渡された銀色の鍵を取り出す。
 確か、何もない空間に突き刺すとかなんとか……。
 かちっ!!
 何もない場所に突き刺しただけで、すぐさま半透明な扉が出現!!


 ぴろりーん!!
『移動先を指定してください。
 なお、他PCの転移魔法で行った場所は省かれます。ご了承ください。
 ⇒ファーストレイン
  アクアバラン
  ガルドラシス』


 多少、少ないけれど、まあいいでしょ。
 ガルドラシスを選んでっと。
『それでは、ガルドラシスに向かいます。よろしいですね?』
 ちゃんと、最終確認もするんだ、これ。
「まあ、そうでないと、間違ったとき大変でしょ?」
 キッドの言葉に、それもそうだと納得して。
 私達は、その扉を開いて、あっという間にガルドラシスにたどり着きました。


「おっかえりー♪」
「「っていうか、なんで、王宮庭園!?」」
 そこにいたのは、またもやお茶を楽しんでいるセレさんと王子と姫の三人。
「イベントクリア、お疲れ様。大変だったでしょ? 20匹も倒さなきゃならないイベントだからね」
 ちょっと待った、今、なんと言いました?
「え? えっと、イベントクリアおめでとう?」
 いや、そうではなくて!! その後!!
「んーと、20匹倒さないと、かな?」
 私達の剣幕にびくびくしながら、セレさんが答える。
「「20匹で終わらなかったぞーーーー!!!」」
「はいっ!?」


 お茶をしつつ。
 私達は、今までのことを報告した。
「えー、どうしてそうなったんだろう? あれかな? 出れなくなったバグの影響があるのかも……サナちゃんの呪文もそんな過程で習得できる呪文じゃないし」
 ああ、やっぱりそうなんだ。
 あれは特殊なんだって、今、わかりました。はい。
「とにかく、ボクにもわからないことだらけだよ。そうだなー全部のイベント網羅してるラナン君なら、何かわかるかもしれないよ」
 あ、そういえば、ラナ君は?
 その言葉にセレさんは笑顔で答えてくれた。
「うん、ちょっと手こずってるみたいだけど、そろそろ終わるって報告来てたよ。もう少ししたら、戻ってくるんじゃないかな。そのときに聞いてみよう」
「はいっ!」
「……ということは、サナちゃん、かなりレベル上がったんだね?」
 ステータスを確認してみる。
 今までのイベントの経験値。
 そして、さっきのイベントの経験値で……レベルは130になりました!! おおおお!!
「うんうん、かなりいい感じ。後でEXP倍増アクセサリーつけて、戦えば大丈夫そうだね」
 その、なんかドーピングっぽいアイテム、何ですか?
 思わず、尋ねちゃいますよ?
 そう、思い口を開いたときだった。
「た、大変です、大変です!!」
 またまた兵士さんがやってきた。
「今度は何があったんですか?」
 もう、何があっても驚かないぞ。
「アクアバランの軍隊が、こっちに近づいてきています!!」
「「何だってーー!!」」


 一難去ってまた一難、オマケにまた一難!?
 もうそろそろ、打ち止めにしてよぉーーー!!
 私達が確認すると、目視できる距離に、ばっちりアクアバランの紋章を掲げた軍隊が、近づいてきていました。
 えええええええ!?

「ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く