ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE23 ファーストレインで、キミの名は?

 ぽわわわーん!!
 お茶会最中にファーストレインの町が襲われているなんて、緊急伝令をもらった私達は、セレさんの転移魔法で、その町へと向かったんだけど……。


「本当に、襲われてる……」
 モンスターがいっぱい居て。
「キャー助けてー!!」
 襲われてます、町の人が!!
「大変っ!!」
 私が呪文を唱える前に。
「ミラージュアタック!!」
 いくつもの幻を纏いながら、キッドが強烈なアタックをかまし。
「クリムゾンローズ!!」
 真紅の薔薇を撒き散らしながら、カインさんが華麗なレイピア捌きで、モンスターの息の根を止めた。
 私の出番は、なしですか?


 そう呆けてたときだった。
「グオオオオ!!」
 後ろからの攻撃に、私は防御も取れずに!!


 がきーーーんっ!!


 だけど、モンスターからの攻撃は、なかった。
「バカ、ちゃんと周りを見てろ! バトル中だぞ!!」
 フードを被った少年が叫ぶ。
 そう、彼の二つの剣がモンスターからの攻撃を守ってくれたのだ。
「サイクロンウェーブバスター!!」
 剣から繰り出す竜巻で、モンスターは宙に放り投げられ、消え去った。
「あ、あのっ……」
 お礼を言う間もなく、彼はいつの間にか、どこかに去っていって。
「サナっち、こっち!!」
「はい!!」
 キッドに呼ばれて、私はバトルに戻った。


 もう、かなりのモンスターを倒した。
 これでもかってくらい。
「ねえ、キッド。聞いても良いかな? ファイヤーアロー!!」
「いいよ、サナっち。行ってみなよ」
 回し蹴りを見事に敵に当てながら、キッドが振り返る。
「ライジングって何?」
 ずごっ!!
 キッドは見事に転んだ。それはもう、芸人さんもびっくりするくらい。
「そういえば、サナは初心者の館をパスしてしまったって言ってたね。ローズトゥローズブレイド!!」
 カインさんも華麗なレイピアの技で、一気にモンスターを5匹も倒した。
「ライジングっていうのは、この世界を造った太陽神さんだよ」
「ついでに言うと、ライジングと対で聖母神ディアナも存在する。こっちは闇を司っているんだ」
「へえ……だから、ライジング・サーガなんだ」
「い、今更、かい?」
 思わず、カインさんもずっこけた。こっちは何か、優雅に見えた。
「だから、ライジングの名前がある技や武具は、ライジングの加護があるから、強力なものばかりなんだ。覚えておくといい」
 カインさんにそう教わって、私は5かしこさがアップした気がした。


 敵の半数は、たぶん、倒したと思う。
 けれど、敵はまだまだいる。
 既に何個かセレさんのポーションを使っていた。嬉しいことにHPだけでなくMPも回復してくれるので、私はすっごく助かる。それでも貴重なものだから、私だけでなくみんなもギリギリまで使うのを待ってから、使っていた。
 途中、何度もレベルアップの音を聴いた気がするけど、気にしてられない。
 だって、もう、たっくさん来るんだもの!!
「はあ、はあ……」
 だから、また気がゆるんでたんだと思う。
 どんっ!!
 気がついたら、空を舞っていて。
 どさっ!!
 HPが残り僅かで。ステータスが危険な色をしていて。
「グルルルゥ……」
 強そうな敵がゆっくりと迫ってきていた。
 体が動かないのは、マヒみたいのがかかってたんじゃないかな。
 瞳を閉じて、覚悟した。


 キイイイイン!!!
「何してんだ、バカ!!」
「バカは余計!!」
 思わずつっこみしてしまった。
 命を助けてくれた、相手に向かって。
「レイジングサンダーブラズマ!!」
 稲光がモンスターを貫き、丸焦げにしてしまった。
 その際に、ふわりとフードが落ちた。


 ラナ、君?
 でも違う。若すぎる。
 だって、背が小さいし。
「悪かったな、小さくて」
「ごめん、聞こえてた?」
 彼は私に近づくと……。


 ええええええっ!!!!


 キス、した……。
 ちょ、ちょっと待って!?
 私、まだ、ファーストキス、してなかったような……あれ、あれあれあれ!!!???
「これで、回復しただろ?」
「ふえ?」
 彼の言うとおり、回復していた。MAXまで。
 立ち去ろうとする彼の手を、私は握ってて。
「待って、名前! 名前教えて!!」
 驚いたように振り返って、でも、すぐに嬉しそうな笑みを見せた。
 その笑みが、とっても可愛らしくて。
「ダーク。ダークって呼んでよ」
 そういって、彼はまた消えてしまった。


 戦いも終盤。
 だと、思う。
 だって、まだまだ減らないんだもん!!
 お陰でレベルがガンガン上がって、さらに強くなってるけど、そろそろ面倒になってきた。
 キッドもカインさんもだ。
 なんていうか、もう限界だ。
 なにもかも、限界だった。
 精神的にも肉体的にもモンスターの顔を見るのも。
 だから願った、これを一気に倒せる力が欲しいって。


『いいでしょう、力を貸しましょう』
 とたんに女性の声が聞こえた。
 優しくて、けれど、気品のある凛とした声だった。
 私の心の中で、言葉が紡がれる。


「ライジング・ディア・ランサー!!」
 強烈な鮮烈な超特大稲光と。
 それを宿した巨大な槍が、大量に居たモンスターを一匹残らず貫いた。
 とたんに晴れていく、青い空。
 ああ、どこまでも青く澄んでいて、綺麗……。


 私はそんな呪文を放って、ばったりと気絶したのでした。
 それはもう、見事に後ろにばったりと。

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