ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE18 嵐の舞踏会

 そこは、異世界だった。
 いや、今も異世界にいるんだけど。
 その……なんていうか、びっくりするくらい、目映いというか。
 煌びやかというか。
 ここにいるのは、場違いじゃないかなんて、思ってしまう、私です。
 それでも、行かなくてはならないんですけどね!!
 未だ慣れない、きっついコルセットにぼわんぼわんの豪華なドレスに身を包んで、いざ、舞踏会へ!
「姫、お手を」
 エスコートしてくれるのは、カインさん。カインさんも舞踏会に参加するとあってか、豪華な軍服を着ている。しかも、めっちゃ、格好良いんですが!!
「ありがとう」
 そんな言葉は心の中に秘めておくとして、今は、王女として、この舞踏会に参加し、成功させないと!!
 ちなみにキッドさ……いや、キッドは、影でお手伝いやってるそうです。主にご馳走運びらしいです。羨ましいだなんて、ちっとも思っていませんよーだ。
 うう、頭が重い。頭もこんもり盛られているんだよね。ほわんほわんです。ティアラもつけてます。あ、これは借り物。失くさないように気をつけないと。
 そんな感じで会場に入った途端。


 ざく。
 ざくざくざく。


 突き刺すような視線を感じた。
 ええ、剣山をこれでもかってくらい、突き刺されたような、そんな感じ。
 そっと辺りを見回すと、それらしき人物が………。
 ………!?
 視線が、合った。
 ガルドラシスの、王女様と。
 え? これって、どういうこと?


 ちなみに向こうの王女様も可愛らしいです。
 小さくて、抱きしめたくなるくらい愛らしいです。
 ですが、大人の女性……ではなく、愛でたい方の女の子でした。
 そんなあなたが、なんで、私にそんな視線を?
「サリューン王女、入場です」
「あ、はい」
 今は、舞踏会に集中しなくっちゃ!!


 挨拶もダンスも練習の甲斐あって、なんとかなりました!!
 舞踏会も半ば、後はこのまま何事もなく過ぎれば……。


 どんっ!!
「きゃっ!」
 倒れ掛かったその先は、なんと美味しそうな生クリームたっぷりのケーキの前。
 このままだと、私の顔とドレスはケーキまみれに……。
 もふ。
「大丈夫でしたか? 姫」
「カイン、さん……」
 ありがとうございます、カインさん。
 なんとか、大惨事になりませんでした。
 けど、さっきのは……。
「転べばよかったのに」
 聞こえちゃいました、王女様!!
 えっと確か名前が。
「ミラーセ姫、でしたね」
「確か、そんな名前だったはず」
 嫌な予感は……当たった。


「うっ……」
 渡されたものを食べたら、激辛スパゲティだったり。
「ミラーセ姫からダンスが上手と聞きまして、よければご一緒願いませんか?」
 不細工な貴族(だと思う)さん相手にダンスを数回、踊る羽目になったり。
 嫌がらせは止まることを知らない。最後には。
「きゃっ」
 ドレスにワインが掛かりそうになるのを、カインさんが身を呈して庇ってくれた。
「大丈夫?」
「助かりました」
「でも……このままじゃ参加し続けられないよね?」
 盛大に汚れてしまった服。確かに、これはダメかも。
「部屋に予備があるから、それに着替えてくるよ。その間も気をつけて」
「ありがとうございます、カインさん」
 といいつつも、嫌な予感しまくりです。
 だって、こんだけエスカレートしてるんだもの。
 それにしても、王女様、ミラーセ姫に何したんですか?
 そんなときだった。
「リシアス王子、ご到着ー!!」
 リシアス、王子?
 やってきたのは、金髪碧眼の美形王子さま!!
 やってくるなり、リシアス王子はミラーセ姫の元へ。
「隣のマーベリアから、わざわざ来てくださったのですね?」
「ええ、姫にひとめ逢いたいと想い、馳せ参じました」
 片ひざをついて、姫の甲にキスを落とす。それがまた、様になってる。
 ミラーセ姫は、ぽーっと頬を染めて、うっとりしてる。
 ………嫌な予感。
 こういうときの、予感って、妙に当たるんだよね?
「これはこれは、サリューン王女ではありませんか」
「ごきげんよう、リシアス王子」
 王女らしく、丁寧にご挨拶。ちくちく。ああ、ミラーセ姫の視線が痛いです。
「サリューン王女が来ているのなら、あなたに似合う耳飾を用意したものを」
 そんなの要りません!! ミラーセ姫の視線がグレートソードになってきてます!!
 もしかして、もしかすると、魔の三角関係ってやつですか!?
 やばい、やばすぎる……。
「相変わらずつれないお方だ。だが、それがいい」
 よくないです! 大人しくミラーセ姫とくっついてください!!
 王子の台詞からすると、サリューン王女もこの王子、気に入っていないってこと?
 なら、こっぴどく振ってやろうか?
 いやいや、ムリムリ!!
 確か、リシアス王子って、別の国の王子様なんだよね?
 もしかして、国事情も絡んでる?
 だとしたら、無下にすることもできないんですか?
 王子様は、ずっとこっちに熱光線。
 姫は、ずっとこっちに剣光線。


 やばいよやばい!!
 このままだと、マジ、何か起きそうです。
 というか、困ります、困りますよーー!!
「ラナシード・ユエル殿下、ご到着ー!!」
 そんな中、入ってきたのは。
 銀髪の……ラナ、君!?
 っていうか、その王子様ちっくな格好はどうしたの!?
「良かった、間に合ったようだね」
「ラナ、君……?」
「ごきげんよう、ミラーセ姫。その華やかな美貌は衰えることはありませんね。そして、リシアス殿下」
 ミラーセ姫の手の甲にそっと口づけして挨拶すると、ラナ君はきっとリシアス王子を見据えた。
「我が姫に、何用ですか?」
「な、なぜ、そなたが……?」
 すっと瞳を細めて、私の腰を抱き寄せて、微笑んだ。
「サリューン姫がここにいると聞きまして。私と彼女は愛を誓った者同士ですから」


 ええええええええっ!!?
 いや、この場合はいいのか?
 でもでも、叫ばせて。
 ええええええええええええっ!!?
 

「ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く