ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE17 王女が、おど……る?

 アクアバランの王様とガルドラシスの王宮の粋な計らいで、私は、さっそくトレーニング開始となった。
 っていうか、早いよっ!!
「いえ、期日もありませんし、早く覚えていただきたいのです」
 眼鏡のきりっとした女官さんは、びしばしやるぜ! という空気満々で部屋にやってきた。
「まずは、マナーに関して、いくつか確認させていただきますね」
「あ、はい」
 挨拶の仕方、食べるときのマナー、お喋りするときのマナー等、いくつかあったが、まあ、なんとか合格点を貰った。うん、これなら、なんとかできそうだ。
 ただちょっと、挨拶の仕方というか、挨拶のポーズが中腰なのは、ちょっと腰にきそうだけど、ここがゲーム世界だからが、腰には響かなかった。精神的に疲れた感じ。
「大丈夫?」
 キッドさんが声をかけてくれた。
「うん、まあ、なんとか……」
 カインさんが、そっと暖かい紅茶をくれた。
「これでも飲んで、次のレッスン行こうか」
 あの、まだ続くんですか?
「らしいよ?」
「がんばれ、サナっち!!」


 今度はいよいよ、ダンスの練習。
 一応、現実の世界で社交ダンスはやったことはあるんだよね。
 パパに連れられて、一週間の体験コースだったんだけど。
 結構楽しかったのを覚えている。
 ただ、当時は受験生で時間があわなかったので、泣く泣く止めたんだと思う。
 続けていたら、こういうシーンでも役に立つのかも!!
「では、サリューン王女、こちらに来てください」
 眼鏡女官がこいこいと招いている。それにしずしずと近づく私。
「これを頭に」
「あ、はい……」
 乗せられたのは、美味しそうなリンゴだった。
「次はしゃがんで、そのポーズをキープしてください」
 はい!?
「しゃ、しゃがむの、ですか?」
「初めて来る方は、驚かれますわ。もうワタクシも慣れっこです」
 そう告げて、女官は続ける。
「我がガルドラシスで踊るのは、伝統的なコシャナクです。しゃがんで足を交互に動かし、優雅さを競います」
 い、今、何て? コシャ?
「コシャナク、です」
 ちょっと待ってよ。ちょっと思い浮かべるよ。
 しゃがんだポーズで足を交互に動かす。うんうん。何となくイメージできた。
「それと、男性の方は腕を組みます」
 男性は腕を組む? 待ってよ、それもどっきんぐさせようか。
 しゃがんだポーズで、腕を組んで、足を交互に動かす。
 ………。
 ……………!!!
 コサック!!
 ロシアで有名なダンス、コサックじゃなくて、それは!? 名前も似ているし!!
「えっと、こんな感じでしょうか?」
 頭のリンゴがヤバイが、なんとか、やって見せることができた。
「まあまあ、初めてにしては上出来でしょう。本番ではそれを1時間踊っていただきます」
 なんだってーーー!!?
 心の中で世界中に叫んだ。それ、絶対に、無理っ!!
「やっていただきます」
 それ、なんの罰ゲームですか!?
「では、今度はポーズを完成させましょうか」
「いやあああーーー!!」


 その後、私は何とか、ダンススキル:コシャナクレベル1をゲットして、何とか一時間踊れるようになりました。なんとか。
「ねえ、キッドさん、カインさん、なんかこう、ボルシチとか食べたくなってこない?」
「それは気のせいじゃないかな?」
 カインさんが苦笑しながら言った。
「言われると食べたくなるけど……サナっち、一ついいかな?」
「ん? 何?」
「あたしのことは、キッドって呼んで。さん付けって何だか他人行儀で嫌!」
「え、えっと……がんばります」
「じゃあ、もう一回」
「キッドさ……キッド」
「うん、OK」
 そうこうしているうちに、夕食の時間になりました。
 出たメニューが。
「ボルシチ……」
「だね」
「うん」
 私達は、ロシア風の国、ガルドラシスで、ボルシチを食べました。
 舞踏会まで、あと数日。
 激しい特訓の甲斐あって、コシャナクレベルが5になりました。
 嬉しいやら困っちゃうやら。これって、他のイベントにも使えるよね? ね?


 そして、私達はいよいよ、噂の舞踏会に参加するのです。
 舞踏会って、社交ダンスじゃないの!?
 という突っ込みは、見なかったことにします。そうしないと、心が折れそうだから。うん。

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