ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE5 二度目のおつかいと、うっかり落とし穴

 前回までのあらすじ。
 レベル上げしようとして、お使いクエストやったら、それはお金持ちクエストでしたっ!!
 (レベル一つも上がりませんでした!!)


 翌日。
 ドキドキしながらログインしたら、普通にファーストレインの町に来れました!!
 事故らずに来れて、本当に良かったです。
 って、ラナ君に言ったら。
「それが普通だよ?」
 って、言われると、ちょっとマジ凹むんですが。が。


 とにかく、気を取り直して。
 今度こそ、レベル上げ!!
 たっくさんの資金もあるし、さっさとレベル上げて、新しい装備が欲しいですっ!!


「まあ、ラナン君が意外に使えないことが分かったので」
「ち、違っ……」
 セレさんの無情な言葉に、慌てるラナ君。
「でもホントじゃない。普通、間違えないわよ? クエストの背景色も違うのに」
「うっ……」
 ミスティさんの追い討ち、華麗に決まりました!
「まあまあ、流石に今度は、一人じゃ大変だろうしな。俺たちも行こうぜ」
 アルフさん、良い人です。
「見入りいいところ、頼む」
 とうさん、ちゃっかりしすぎです。


 というわけで、冒険者ギルドに入って。
「じゃあ、ボクが選ぶね。うーんと……ねえねえ、これなんてどうかな?」
「あら、いいんじゃない♪ なかなか行けないところだし」
「お、あそこ行けるのか! 久し振りだな」
「しっかり、狩る」
 とうさんが意外とマジです。
「じゃあ、それでお願いします」
 ぺこりと私が受付のお姉さんに頼むと、またあのプレートをくれました。
 前は黄色だったけど、今度は緑。
「お金と経験値が入るのは、緑だから。ついでにお金だけなのは、黄色。覚えやすいよね」
 にこっと微笑むセレさんが、格好良いです。
「じゃあ、行きますか」
 ラナ君がさっそく転移魔法の準備をしてます(これって、ちょっとだけ時間がかかるんだよね)。
「あ、ちょっと待って!」
 すっかり忘れてた。
「このクエスト、内容聞いてなかった」


「「聞いてなかったんかいっ!?」」


 てへ、すみません。つい、うっかり。
 改めて、内容を確認。
 どうやら、このクエスト、お使いといっても、前のクエストのようにたらい回しにはされないやつらしい。よかった、あれ、そんなに疲れなかったけど、精神的に疲れる感じしてたんだよね。


 『彼女のために薬草を』。
 可愛そうな青年、セバスの代わりに薬草を採って来てあげましょう。セバスは病気の彼女のために、一度、採りに行こうとして失敗し、大怪我をしてしまいました(セバスはレベル10です)。
 そんな彼の代わりに、フテブテ草を手に入れましょう!
 きっとセバスも、セバスの彼女であるユリアナも喜んでくれることでしょう。


「ねえ、このフテブテ草って、ナニ?」
「あ、それ、どんな病気でも一発で治せるスキットシャンの原料だから。なかなか採れない薬草だから、多めに採ってこよう」
 もう、どこから突っ込めばいいんですか、ラナ君!!


 そんなこんなで、ばびゅんと、フテブテ草のあるハイシシ森にやってきました!!
 この森の奥に、目当ての薬草がある草原があるそうで。
「サナ、がんばりますっ!!」
「じゃあ、まずはアイツから行くか」
 って、あの10メートルもあるイノシシ、誰ですか!?
 ああ、アルフさんが一撃で、伸しちゃってる!?
 あっちは、ミスティさんが、でっかいハチとドンパチしてるんですがっ!?
「サナ、準備ができたみたいだから、先にデカイノシ倒して、その後、ミスティのディスハーを倒してね。サナのその炎のロッドで倒せるから」
「あ、あれ? ラナ君は?」
 炎のロッドで巨大イノシシをやっつけて、さっそくレベルアップしてるみたい。ぴろぴろ煩いです。
「残念ながら、僕の一撃、クリティカルしちゃうんだ。サナの役に立てないのが正直辛い。手加減スキル、ゲットしとけばよかったよ」
 あれあれ? ラナ君、スキル全部持ってるんじゃないの?
 ぺちぺちロッドでハチを倒して、またレベルアップです。順調♪
「魔法は全部取ったんだけど、レベル上げに集中してたら、スキル取り忘れちゃったんだよね。まあ、後で回収するつもりだけど」
 ふふっと笑うラナ君が、ちょっと嬉しそうです。ちょっと怖いのは気のせいだと思います。
 そういえば、ラナ君、コレクター気質だったなぁ。
 私がハマったゲームのフィギュアを全種類集めてたっけ。そのために容赦なく大人買いしてたの思い出した。お陰で、好きなキャラのダブりフィギュア、タダで貰えてラッキーだったけどね。
 今度はセレさんがガシガシ体力を削ってくれた、ミミズクさんを昇天させる。ぴろぴろりん!
 前回の比ではないくらい、上がってるような気がするよ、ラナ君!!
「あれ、これなーに?」
 敵を倒してたら、銀色の鈴が落ちてきた。それも一つや二つじゃない。たくさん。
「あ、それもちゃんと回収してね。最終武器作るのに、必要になってくるから」
「ちょ、ちょっと待って!! 最終武器作る材料が、この鈴!?」
 ちりーん。可愛らしい色とりどりのリボンも付いた可愛らしい、この鈴が!?
「うんそう。そこらへん、このゲームの嫌らしいところだよね」
 当たり前のようにラナ君は、回収しきれなかった鈴をちまちま取ってってる。
 とうさんも腰を低くして、目ざとくゲットしてる。黙って黙々と。
 ツッコミ所満載だけど、とにかく、このクエストを成功させて、もっとレベルを上げよう。
 突っ込みはその後だ。
 そう、決心して、私は勢い良く大地を踏みしめた。


 もこんっ!!


 いま、もこんって…………。
「きゃあああああああっ!!!」
 地面がありませんっ!! 俗に言うこれって、これってっ!!
「落とし穴ぁああああああ!!!! たーーーすけてええええええ!!!」
 こうして、私は穴に落っこちました。


 ぼすん。


「あいたたた……」
 いや、ダメージはないんだけど。何となく、その、言っちゃうんだよね。
 汚れてもいないんだけど、思わず、自分の可愛いローブの埃を叩く。無いんだけどね。


 ……あれ?
 薄暗いとこだけど、意外と明るいかも?
 あっちに大きな岩があるみたい。その上が出口かしら?


 あれ、岩が動いた。
 動いたってっ!?


 目を凝らして、よくよく見ると。


「…………!!!!!」
 叫びたくなる衝動を、手で口をふさいで抑えた。
 だって、だって……そこには。


『サナ、大丈夫? 怪我はない? そこどんな風になってる?』
 この通話のイヤリングのとっても良い所は、言葉にしたいことを思い浮かべるだけでも、相手に伝えられるってところだ。


『洞窟の中で、目の前にドラゴンがいるっ!!!』


『何だってっ!?』
 ラナ君の驚く声が聞こえた。本当に驚いているって気がする。
『今すぐ逃げるね、まだ眠っているみ……』


 抜き足差し足忍び足で逃げようとしたとたんに、私の不幸が始まった。
 ぴくぴくってまぶたが動いたかと思うと。


 グオオオオオン!


『起きたぁあああああ!!!』


 またまた、絶体絶命のピンチです!!
 っていうか、誰か助けてーー!!!
 私、まだレベルの低い、竜の姫ですよぉおおお!!

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