ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE3 さよなら魔王城。パーティメンバーと隠しスキル?

 前回までのあらすじ。
 偶然、出会った魔王(外見は、美人のグラマラスなお姉さん)は、羅那君のお父さんでした!!
 えええええええっ!!!???


「固まってるな」
「本当は、言いたくなかったんだけど」
 呆然としている私に、他人行儀な二人は、ぽつりぽつりと呟いてます。
「って、そうじゃなーーーいっ!!」
 心の中で某親父さんもびっくりなちゃぶ台返しをしてから、私は魔王さんの前に出た。
「えっと、改めて初めまして、サナです」
 ぺこり。


 ……えっと、やっぱ、外見がアレでも、一応、羅那君のお父さんなワケだし。
 ちゃんと挨拶しておかなくっちゃいけないよね?


 あれ? 間違った??
 反応、ないんですけど!?


「ぷ、はははははっ!! 面白い! こんな子、見たことないっ!!」
 迫力たっぷりな魔王さまの笑い。
 こ、怖いよーーーっ!!
「はいはい、それくらいにしてよ。彼女が怖がってるから」
「……ああ、すまん。ホント、受けるコレ」
 まだ涙目になりながら、魔王さん、笑ってらっしゃる。
「とにかく、そういうことだから、後はヨロシク。詳しい現象は、後でメールするから」
「あー、わかった。ちゃんと聞いてくれよ」
「ほいほーい」
 見送る魔王さま、まだ笑ってた。
「あんまり認めたくないけど、一応、アレが親父……なんだ」
 ちょっと目が据わっているのは、気のせい……だよね?
 こうして、私は、無事、魔王城というか、ラストダンジョンから生還することができたのでした。


 初心者の館に行くまで、羅那君は、いろいろ教えてくれた。
 本当はやるつもりなかったライジング・サーガ。
 けれど、お父さんが作ったゲームな上に、デバックを頼まれたんだそうだ。
 そこで、タダでプレイさせてもらう見返りに、こと細かいところをガンガン突っ込んだらしい。
 それに調子に乗ったお父さんが、全てのイベントチェックを羅那君に回すようになったらしい。
「ホント、イベント2000個って、僕を殺す気かって思ったよ」
 え? 今、イベントが2000って……?
「まあ、とにかく、RPGは好きだし、ガンガンイベントこなしてたら、こんなんなっちゃった」
 そういって、羅那君は、私に自分のステータスを見せてくれた。


 ラナン・ユエル。男。種族、魔人。
 職業、魔法剣士。
 体力、MAX。魔力、無限大。使える魔法、全て。


 もうこれだけで、何だかヤバイ気がした。


 レベル1500。


 なんですか、その1500ってっ!?
 私まだ、レベル1なんですけど!?


 そ、そういえば。ちょっと思い出した。
 前にクリアしたRPG(格好いい美形のお兄さんが出てくるっていうから買ったのに、そのキャラが途中で敵になって淋しくなったので、途中で投げ出しそうになりました)をぽーんと渡したら、1週間くらいで、カンストさせてました。
 そのときの羅那君、こういってたような気がします。
「僕、レベル上げ、好きだからね」
 にこって、嬉しそうに。


「納得した」
 そう呟いた頃、気が付いたら、私達は街にたどり着いていた。
「ここが最初の町。ファーストレインの町だよ」
 RPGのオーソドックスな町。ちょっと大きい気がする。あ、そうか。初心者は必ずここの町に行くっていってたっけ。だから、大きいのかな?
 きょろきょろと辺りを見回していたときだった。
「ラナーー!!」
 遠くからいろんな人たちがやってきた。
「あ、紹介するね、彼らは僕のパーティメンバーなんだ」
「その子がラナンの想い人なのね、とっても可愛いじゃない」
 いち早く私に近寄ってきたのは、パープルの髪をした、グラマラスな女性。耳が長いけど、私よりも短いところを見ると、ハーフエルフなのかもしれない。
「こんにちは! 女の子が増えるのは嬉しいな♪」
 白い帽子に白いローブを着た可愛らしい少女が、私の手を握って、上下にぶんぶん振ってくれてる。
「職業は魔術師か。うちのパーティ、魔術師いないから、丁度良いんじゃないか」
 武道着を付けた、色黒のお兄さんが、にっと笑顔を見せる。
「んっ」
 武道着のお兄さんの言葉に頷くのは、和を思わせる服を纏った武士っぽい人。すっごくガッチリした体型で、羅那君よりも大きい。たぶん、200センチ以上、あるんじゃないかな?
「あなたの名前、教えてくれるかしら?」
 しなっと腰を揺らしながら、パープルのお姉さんが尋ねる。
「あ、初めまして。魔術師のサナです」
「ほんっと、災難だったね。でも無事に帰ってこれてよかったね! ラスダンに行ってたんでしょ?」
 白ローブの子が頭を優しく撫でてくれる。
「はい、魔王さんが出てきたときは、ホント、驚きました」


 ぴき。
 空気が、凍りついた。


 あ、あれ? また、変なこと言った?


「ちょ、ちょっといいか? アンタ、魔王のとこにいって、無傷で帰って、これたのか?」
「はい、意外と良い人でした」
 ちなみに、羅那君のお父さんってことは内緒にねって、言われていたから、そこは言わなかったけど。
「ちょっとちょっと、どういうこと? 非情無情の魔王を前にして、あなた、生きて帰ってこれたっての!?」
「あの……よくわからないんですけど……」
「んっ」
 ちなみにコレはあの武士さんの頷き。彼って、頷くくらいしかしないんだね。いや、今はそれどころじゃなくて。
「いいか、あそこのボス。すっげー美人なんだけど、容赦ない」
「えっと、だからどういう?」
「初心者でも、これでもかってくらい、凄い技を繰り出してくるので有名だ」
「えーっと……」
「だからね、相手が女子供であろうとも、最大級の技で応戦するんだって。たとえ相手がHP1でも、最強の技を出してくる。全力全開ってやつだね」
「生きてこれただけでも、奇跡」
 あ、初めて武士さんが話した! ちょっと嬉しい。
 ………って、ええええっ!?
「えっとその、生きてこれたのって、奇跡、なんですか?」
「「うんっ!」」


 とにかく、ここで立ち話はなんだからと、私達は、皆さんが日頃、拠点として使っている宿屋兼食堂屋さんで続きを話すことになった。
 食事でもしながらってことで。
 そういえば、お腹もすいてたんだよね。すごい、このゲーム。ちゃんと五感、感じられるんだ。
「まあ、とにかく。魔王の城に行って生きてこれるのは、魔王を倒した勇者だけってことだよ」
「それ以外は、死人ね。あ、死んでも、近くの神殿に飛ばされるだけだから平気よ。お金が半分になっちゃうけどね」
「や、やっぱり、怖いところだったんですね」
「「そう」」
 テーブルの上には、色とりどりのご馳走が並んでいた。どれも、庶民的な洋風メニュー。ちょっと豪快さがあるけど、味はすっごく美味しい。これなら、たくさんあっても食べきれそうだ。
「ねえねえ、もしかして、彼女、生きてこれたのって、コレのお陰じゃない?」
 白ローブの少女がそう言った。
「え? コレって、なんですか?」
「隠しスキル」
 初めて聞くスキルなんですけど!!
 びっくりしてると、パープルのお姉さんが教えてくれた。しなを作って。
「転生したら、必ず一つ付いているの。良い効果があるのが多いんだけど、たまに使えないスキルとかもあってね。ちなみに私は、『男っぽい』」
「な、何ですか、それ……」
「女なのにちょっと、男の子っぽいの。まあ、若干、力のパラメータにプラスされるってやつなんだけどね」
「ボクはね、『元気満点』!! 一部の精神異常攻撃が、ちょっとだけ掛かりづらいの」
 白ローブの少女も教えてくれた。
「俺は『ほらふき』。このスキルを発動させて、話したことは大げさになって、相手に伝わる。あんま役に立たないよな」
「『冷静沈着』。いつでも冷静に行動できる」
 あ、また武士さんが喋った。けど、必要最小限のことしか言わないんだよね。
 で、私のは?
「『竜の姫』だって!」
 コーヒーを飲んでいた羅那君が、急にぶっと噴出した。それはそれは見事な噴出しだった。被害者がいなかっただけ、マシってやつだよね。
「竜の姫って、なに?」
 自分で見たらといわれて、確認してみた。


 『竜の姫』。
 最上級モンスターのドラゴンが、伴侶として選ぶ女性。ドラゴンにとっても好かれる。


 これって、いいの?
「良くないよ!! これで一部のイベントの難易度が上がっちゃったよ!!」
 羅那君が、すごくびっくりしてる。イベントの難易度? ドラゴンに好かれたら、駄目なイベントってあるの? まあ、それくらいなら、いいんじゃない?
「良くないっ! ドラゴンに見つけられたら、真っ先に狙われちゃうんだから! ドラゴンは防御力無視のブレス攻撃してくるから、防具で調整できないし」
 な、なるほど……。
「どうする? 作り直す?」
「面白いから、そのままにします」
 私の発言を聞いて、がくうと隣で、羅那君がへたり込んでる。でも、その顔でへたり込んでほしくないなー。
 そういえば。
「羅那君の隠しスキルって何?」


 しーーーーん。


 ほら、教えてやれよと武道着のお兄さんに小突かれて、羅那君はその重い口を開いた。


「『暴走』。あるスイッチが入ると、敵味方お構いなく、倒しちゃうって、アレ」
 ………聞かなかった方がいいのかもしれない。
 って、ちょっと待って、それ持ちながら、羅那君、レベル1500って言ってなかった?
「あ、大丈夫。最近はスイッチ入らないよう気をつけてるから」
 気をつければ、大丈夫なんですか、ソレ!!
 とにかく、隠しスキルを話しきったところで、改めて自己紹介することになった。
 言われてみれば、皆さんの名前、聞いていなかったわ。


 一人目。武道着のお兄さん。
 名前はアルフ・ローランさん。本当はウルフと入れるつもりが、間違っちゃったらしい。
 外見どおり、職業は武道家。レベルは800なんだって。かなり高いと思う。


 二人目。パープルの髪のお姉さん。
 名前はミスティさん。ミステリアスな雰囲気を持っていると思っていたら、実はネカマでした!
 つまり、外見女性さんだけど、操ってる中の人は、男の人らしい。
「あらやだ! 男だ何て、言わないで!!」
 と思ったら、オカマさんだった!!
 職業は、盗賊。鍵開け、トラップ解除担当なんだって。レベルは560。


 三人目、白帽子と白ローブの少女さん。
 名前は、セレスティーアさん。通称セレさん。
 神聖魔法のプロフェッショナルな、職業、神官。レベルは900。びっくりするくらいあげているのは、これくらい上げないと、戦闘中に復活魔法を唱えられないんだって。そうなんだ……。


 四人目、あまりしゃべらない武士さん。
 名前は、早雲銅山そううんどうざんさん。通称とうさん。
 大きくて、懐が広いから、みんなでとうさんって呼んでるんだって。うん、言われてみれば、意外に優しそうな顔しているし、体が大きいのもお父さんって感じだよね。
 職業は、武士。レベルは、650で、居合い斬りスキルがマスターレベルなんだって。凄い!


 そして、五人目。
 羅那君、こと、ラナン・ユエル。魔人のレベル1500の凄いキャラさん。
 美形で、私の彼氏さんです。


 ラストは、六人目。
 私、初心者レベル1のサナ。魔術師。


 このメンバーで、冒険することになりました!!
 皆さん、よろしくお願いしますっ!!
 うう、みんなすごくレベル高いよーーっ!!

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