ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE2 魔王さま、もしかしてあなたは……

 前回までのあらすじ……。
 ライジング・サーガというMMORPGにログインしたら、レベル1だってのに、ラストダンジョンに来て、ラスボスの『魔王』に出会っちゃいました!!
 助けて、羅那くーーーんっ!!


 というわけで、目の前にグラマラスな魔王さまがいます。
 私はもう、冷や汗だらだら。
 やば過ぎってもんじゃないよっ!
 死亡確定ってやつですか!?
 って、無言でいたら。


「……ん? ちょっと待て。なんで、レベル1の初心者がここにいるんだ?」
「へ?」
「まさか、違法ツール使ったんじゃ……」
「ち、違いますっ!!」
 即座に私は否定した。
 そんなんあったら、ラスダン来てませんっ! たぶん。
「えっと、転生したらなぜが、こっちに来ちゃったんですーーー!!」
 最後の方は、涙目だ。
 ふんふんと魔王さまは、話を聞いてくれてる。
 もしかして、実は、良い人かもしれない。
 魔王だからって、人を差別しちゃだめだ。そう思う。
「転生事故か……ベータ版のときに修正したはずなんだがな……」
 でも、こうして、現に事故ってます、私が。
「まあ、お前の事情は分かった。本来ならば、ここでボス戦なんだが、今回は見逃すことにしよう」
「あ、ありがとうございます」
 ぺこりと頭を下げる。
 ……ここの魔王さま、絶対良い人だっ!! ありがとう、神様!!
 羅那君、私、無事に帰れそうです、よかったーっ!
「で、では、私はこれで……」
「ちょっと待て。その前にお前の話を聞かせてくれ。そうだな……ここでは話しづらい。もしかしたら、別の勇者も来る可能性もあるからな……」
 少し思案して、魔王さまは言った。
「私の部屋に行こう」
「部屋に、ですか?」
「事故前の様子を聞きたい。何か操作の具合で事故ったのかもしれないからな」
 ああ、なるほど。バグの原因を知りたいと。
 よかった、変なことされるのかと思って、びっくりしちゃったよ。
「分かりました。そういうことなら、行きます」
「ああ、助かる」
 魔王さまはすぐに立ち上がり、私を招く。
「部屋はこっちだ」
 導かれるままに、私は奥にある魔王さまの部屋へと入っていった。


 ……………?
 あの、魔王さま、聞いて良いですか?
 なんで、ここにはソファーがないんですか?
 なんで、ビロードの天蓋があるんですか?
 そいでもって、何で、ご丁寧にでっかいキングサイズのベッドがあるんですかっ!!??


 頭が真っ白になる。
「どうかしたのか?」
 ちょっと待って、ここって、もしかして……。
「私の寝室だが?」
 のおおおおおおおおおおっ!!!??
「すみません、部屋、間違えました」
「いや、間違ってない」
「でも、ここって、話を聞く場所じゃないですっ!!」
 無情にも魔王さまはこう言ってくれました。
「部屋、ここしかなかったから」
 のおおおおおおおおおおっ!!!!!
「それに勇者もここには入れないしな」
 がちゃり。
 ……、今、何しました?
「これで、勇者も入れない」
 がちゃりって、鍵、かけませんでしたか?


 ………羅那君、私、貞操の危機を迎えてます。どうしたらいいんですかぁあああ!!
 良い人だと思ってたのに、魔王さま、レズでしたっ!!


「いや、俺、ホントは男だし」
「へ?」
 間抜けな返事しちゃったけど、今、魔王さま、何ていいました?
「だから、男。まあ、魔王は女だけどな。操作してるのは、男だぜ?」
 にっとニヒルな格好いい笑顔を見せてくれます。
 ……ちょっと待った、どこからツッコメばいいですか!?
「まあ、そんなに怖がらずに、こっちに来い。ここに座って、話を聞かせてくれ。な?」
 そこって、ベッドじゃないですか!!
 やっぱり、私、お嫁にいけなくなっちゃうかもぉおおお!!!
 誰か、助けてーーーっ!!


 どっかーーーーーーんっ!!


「こぉーーーんの、バカ親父っーーー!!」
 どっかーーーーーーんっ、パート2!!
 誰かが、壁を蹴破って入ってきました。
 そのままの勢いで、魔王さまに強烈な一撃をどっかーんとしてきました。
 魔王さまは、その誰かの強烈なアタックにより、後ろに吹っ飛んで……あれ、吹っ飛んでない?
 ああ、そっか。これくらいのアタックで吹っ飛んでいたら、ラスボスじゃないもんね。
 っていうか、さっきの人、親父って言ってなかった?
「何してんだよっ!! 初心者相手に、×××なことや、△△△なことをしようとしてたってのは、噂じゃなかったのか!!??」
「いやいや、あまりにも可愛い子が来たんで、つい」
「ついってもんじゃないだろっ!?」
 激しい攻防は、止まることを知りません。っていうか、なんかその、揺れてません? ココ?
「けど、俺は話を聞くためにだな」
「問答無用っ!!」
「!! 待て、早まるなっ!!」
 きゅいいいいいんと何かがチャージされてきます。
「サウザンド・ソード・ライジング・ブレイカーーー!!!」
 何ですか、その中二病っぽい、強そうな技名はっ!!


 そして、部屋は、大変なことになりました。


「ふう、悪は滅しておいたよ」
 にこっと私に微笑んでくれました。彼。
 サイドの耳に近いとこだけ、少し長めの銀髪。
 鼻もすっと通っていて、目はオッドアイだ。左目が金色で、右目が蒼い色。
 背は高い。180センチくらいあるんじゃないかな。私は157くらいだから、凄い差になってる。
 彼は持っていた二つの剣を腰の鞘に戻すと、言いました。
「遅れてごめんね、サナ」
 ……………!!!?
 もしかして、もしかすると。
「僕だよ、羅那。あ、ここではラナン・ユエルって言ってる」
 っていうか、すごく、飛び切り、美形なんですがっ!!!
 肌も白くて、耳も少しとがってる。私よりも長くは無いけど。
 体もすごくがっしりしてて、でも、太ってなくて、しっかり引き締まってる。アスリートってこんな感じなのかなって感じ。


 どくんどくんどくん。


「サナ?」
「ら、羅那くん?」
 こくりと、静かに美形の彼は頷いた。飛び切りの笑顔で。
「えっと、は、初めまして」
 ぎこちなく、ぺこりと頭を下げた。
「やだなあ、そんな他人行儀しないでよ。ちょっと傷つく」
「だ、だって……だってっ」
 真っ赤になってたと思う。だって、普段の羅那君は、その普通っていうか、話しかけやすいオタクっていうか、その、気兼ねなく話せるって言うか。いつもの羅那君も格好良いけど。


 でも、目の前に居る羅那……いや、ラナン様は、私の理想をそのまま、具現化したような、美形さんなんだものっ!!
 普段どおりに話せませんっ!!


 なんて、思ってたら、くすくす笑われてしまった。
「よかった、サナの好み通りに外見作っておいて」
「へっ?」
「こんな可愛いサナが見られるんだもの、ホント、よかった」
 ちょ、ちょっと待って、こっちに来てくれるのは良いけど。
 ぎゅっと抱きしめられた。
「それに、サナも僕好みに外見、作ってくれたんだ」
「いや、その、金髪好きだって言ってたし……その」
「ありがと、サナ」
 っていうか、その美形顔、近づけないで!! 心臓に悪いですっ!!


「さーて、そろそろいいか?」
 あ、魔王さま、復活した。すごい。あれ喰らっても平気なんだ。
「まだ居たの、親父。死んでなかったの?」
「あれくらいじゃ、まだ死なん」
 ……そういえば、さっきから、親父って言ってるけど……。
「ああ、ごめん。言ってなかったね。あれ、僕の父さんなんだ。外見はアレだけど」
「えええええええっ!!!???」


 あの魔王さまは、羅那君の、お父さんでした。
 って、嘘嘘嘘嘘っ!!!??

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