私、これでも副会長なんだけど!?

秋原かざや

あなたとわたしと

 喉が渇いたわたしは、寮にある自動販売機に向かった。
 気に入っているレモンスカッシュを選んで、コップに注がれるのを待つ。
 そのときだ、彼女がやってきたのは。
「ここにいるって聞いて……」
 おずおずという、彼女の態度にちょっとイラっと来たが、この様子だと、やっと状況が分かってきたというところか。
「あ、あの……さっきはありがとう、美柚ちゃん。それと、ごめんなさい」
「あなたが死んだら、こっちが困るから」
 ゆっくりと落ちていくレモンスカッシュを眺めながら、わたしはそう告げた。
「わたしが言った意味、分かってきたようね」
 わたしの言葉に、彼女はこくりと頷く。
「まさか、先生が大怪我するなんて……思ってなかった」
「わたしも初めて知ったとき、とってもショックだった」
 しかもパートナーを殺してしまって、酷いエンディングを迎えた。
 あれはある意味、トラウマだ。
 だからこそ、死なないようにクリアできるよう、何度も何度も練習をして、トゥルーエンディングを見たものだ。
 特に蒼様以外のキャラは、かなり弱々しいので(ステータスもHP的にも)本当に辛かった。
 けれど、スチル画面をコンプリートする頃には、熟練ゲーマー並みになっていたのは言うまでもなく。
 いや、今はそんなことを言うときじゃなったな。


「いいことを教えてあげる」
 ごくりとレモンスカッシュを一口飲んでから、わたしは彼女にあることを教えることにした。
 どうして、そう思ったのか、よくわからない。
 けれど、彼女には必要じゃないかと思ったのだ。
 もちろん、わたしもこれからそれを実行するつもりなのだが。
「ラインディーヴァは、パイロットとそのパートナーとで動かしてるのは知ってるわね?」
「うん」
「ラインディーヴァには、シンクロ率っていうのがあって、それが一定を越えると反応速度がアップするだけでなく、攻撃力もアップするの。必要なら、パートナーとのスキンシップを図るといいんじゃない」
「スキンシップって……」
「手っ取り早いのは、肌を重ねることね。ベッドの上で」
「えっ!! そそそ、それってっ!!」
 うろたえる彼女にわたしは頷いた。
「そういうこと。まあ、がんばって。あなたはわたしにとっても、必要みたいだから」
 まだ残っているレモンスカッシュを飲みながら、わたしはその場を去っていく。
 一人、取り残されるのは、頬を染めながら、考え込んでいる彼女だけ。


「いろいろとすみませんでしたね」
 声をかけてきたのは、あの謎の教師だった。
 依然として、名前しか分からない。
「いいの? あの子、今、一人よ?」
「彼女には、少し時間が必要ですから。それよりも、僕が言えなかった事をいろいろとアドバイスしていただいたようで、とても助かりました」
 こくりとレモンスカッシュを飲み干して、近くにあった屑箱に投げ捨てた。うん、ナイスショット。
「わたしはただ、必要だから言っただけ」
「それでも、助かります。何も知らないのは、恐らく彼女だけですから。だから、“ありがとうございます”」
「なにそれ、むず痒い。それに先生、攻略対象じゃないよね。あの子専用パートナー?」
 そんなわたしの言葉に、先生は苦笑を浮かべる。
「ええ、そんなところです。それに……あなたに攻略されてしまったら、彼女は一人になってしまいますよ」
「わたしはそれでも構わないんだけど」
 驚くような顔を浮かべて先生は。
「貪欲なんですね。彼女もそれくらいの意気があればいいんですけど」
「あの子とわたしを一緒にしないで」
 じゃあと、わたしは先生と離れる。
「ええ、良い夢を」
 そういって、先生は初めてわたしに、綺麗な顔で微笑んでくれた。
 

「私、これでも副会長なんだけど!?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く