私、これでも副会長なんだけど!?

秋原かざや

みゆにっき その4

 その日は、朝から違和感を感じていた。
 背中がチリチリするような、そんな悪寒を感じていたのだ。
 けれど、わたしは学園のこれからのハーレムを望んでしまった。
 幸せなわたしだけの、甘い世界。


 だけど、それがいけなかった、かもしれない。
 空を見上げて、わたしは震え上がった。
 もともとわたしは視力が良い方ではない。
 けれど、美柚になってから、それは如実に現れていた。
 視力のアップ。
 遠くの物でもはっきりと見える。
 恐らく、動体視力もアップされているんだと思う。
 まあ、ステータスMAXくらいまで上げてるなら、仕方のないことだろうが。
 いや、話が脱線してしまった。


 とにかく、わたしはそんな視力で見つけてしまったのだ。
 空の遠くに見える、黒い影。
 それは紛れもなく。
「嘘、だろ……」
 小さく呟いて、急いでわたしは、リセットを発動した……はずだった。
「っ!!!」
 何度、やっても結果は同じ。


 ―――リセットが、効かない。


「……マジで?」
 けれど、わたしの体が警告している。
 このままでは、『世界が終わる』。
 この素晴らしき『華咲く乙女』の世界が。


 『華咲く乙女』。
 このゲームは、前半は普通の恋愛シミュレーションだ。
 恋する乙女が、素敵なイケメンをゲットする、あれだ。
 だから、前半を『華咲く編』と称していた。
 そして、問題の後半。
 ハードなアクション、いや、シューティングというべきか。
 それをクリアするために、わたしはゲームパッドではなく、専用のジョイスティックをわざわざ購入し、それを使ってクリアした。
 パッドでは上手く入力できない操作も、スティックならスムーズに行える。
 それでも、鬼のような難易度に、何度もスティックを投げ捨てようかと思ったほどだ。
 そんな後半を『華散る編』と称されていた。
 もちろん、ゲームの難易度もある。他にも、このゲームに組み込まれた理不尽ともいえるゲームシステムもまた、華散ると称するに値するものだった。怒りを覚えつつもプレイしていたが、その素晴らしさに感銘を受けていたのも否めない。かなり辛いシステムなんだけど。
 だからこそ、のめり込めたというべきか。


 わたしは、これから何が起きるかを知っている。
 しかも、それはわたしにしか出来ない、使命であり、運命でもある。
 なら、やることは一つ。


 丁度、近くに居た副会長に叱咤しつつ、指示を送っておく。
 そうすれば、ここにいる学生を危険に晒すことはなくなるだろう。
 それに、学園内は強固なシェルターでもある。
 わたしは、幸運にも近くに居た蒼様を捕まえることができた。
 運が向いている。


 ゲームは慣れているが、リアルは慣れていない。
 けれど、やるからにはやらなければならない。
 世界と、蒼様と、わたしの命がかかっているのだから。


 先生に導かれて、わたしはラインディーヴァに搭乗する。
 途中、誘導の終えた副会長が叫んでたが、概ね、引っ込んでろと言っておいた。
 そうだ、命を懸けられる覚悟がなければ、この先、やっていけない。
 それにあんたは、パイロットじゃない。


 わたしが、パイロットなんだ。


 幸いにも操縦桿は、わたしの使っていたスティックの重さに似ていた。
 リアルにしては、少し軽い気がするが、問題ないだろう。
「美柚、大丈夫なのか?」
 そういえば、蒼様は、この状況を知る数少ないキャラだったな。
「大丈夫です、わたしの力、信じてくれませんか?」
「そうだな。美柚は凄い子だったね」
 ちょっと虚勢を張ってしまったか。
 けれど、これくらいでないとやっていけない。
 震える手と足を知られてはいけない。




 初めてにしては、よく戦っていたほうだと思う。
 敵からのダメージも一度も受けていなかったし、何より、調子がよかった。
 これも、連続リセットしての自ステータスMAX上げが良かったんだと思う。
「あともう少しっ!!」
 このまま押し切れると思っていた。


 しかし。


 敵はわたしの数段上を行っていた。
 なぜなら、急にその数を増やしたからだ。
「嘘っ!?」
 その分、避けるのも多くなるし、撃ち取る敵も多くなる。
 見逃す敵も増えてきて。


 がつんっ!!
 ラインディーヴァがとうとう、被弾した。
「ぐっ!!」
 後ろから、蒼様の苦しそうな声が聞こえる。
「蒼君っ!!」
 声をかけようとするが。
「僕は大丈夫だから、前を見て! 美柚! まだ来るっ!!」
 急いで右旋回させる。何とかかわせた。
 けれど、次は?
 その次の次は?
 手が足が、また震えてきそうだった。
 だって、こんなに敵は出てこなかった。
 ある程度、パターン化してたのに、目の前にしている敵はそうじゃない気がする。


 どどんっ!!
 また被弾してしまった。また蒼様の辛そうな声が後ろから響く。
 嫌だ。
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!


 死にたくないっ!!


 泣き出しそうになった、そのとき。
 それは現れた。


 蒼い戦闘機、いや、蒼いラインディーヴァが空を切って、割り込んできたのだ。
 それだけじゃない。
 大量に弾をばら撒いて、しかもそれが全て、敵に当たっている。
「なにそれ」
 思わず呟く。
 ポッと出の相手に、良い所を取られるわけにはいかない。
 わたしも負けじと敵を打ち抜いていき。


 気づけば、戦いは終わっていた。
 気が抜けそうになりながらも、何とかラインディーヴァを地上に降ろして、わたしは外へと出る。
 外の空気が、こんなに美味しいだなんて、思わなかった。


「美柚ちゃんっ! よかった、無事だったんだね!」
「えっ?」
 蒼いラインディーヴァから降りてきたのは、あの副会長と、謎の教師だった。
「ちょっと怖かったけど、なんだかゲームみたいで、なんとかなっちゃった」
 そういって、笑みを見せる副会長に、わたしは。
「なんとかなっちゃった、じゃないだろっ!!」
 わたしの声に副会長は驚いているようだった。
「あんた、少しでも覚悟を持ってやってたのか!? わたしは命をかけて、全てをかけて戦ってたんだ。あんたは、その覚悟を持って、全てを知って、これに乗っていたのかっ!?」
「えっ……?」
 何もわかっていない、このガキ。


 ラインディーヴァが沈んだら、世界が終わることも。
 大事なパートナーが死ぬことも。
 そして、自分が死ぬことも、どれもこれも知らないんだ。


「言ったはずだ、覚悟のないやつに、それに乗る資格はないっ!!」







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