私、これでも副会長なんだけど!?

秋原かざや

メリットとデメリット、そして必要とされること

 私はゆっくりと生徒会室に入っていく。
 もう、その教室には、私ともう一人、会長しかいない。
 黄昏色に染まる生徒会室で、物憂げに会長は、窓の縁に座って、外を眺めていた。
「会長、お疲れ様です」
 そう声をかけると、驚いた顔をしていたが。
「副会長か。副会長もお疲れ様。陸上部もかけもちだってのに、よくがんばるね」
「部活は好きではじめたことですし、それに、生徒会の仕事も嫌いではありませんから」
 そういうと、会長は嬉しそうに微笑んで。
「そういう人材が生徒会に入ってくれると嬉しいね」
「会長は……その、違うんですか?」
「え?」
 私は続ける。
「その、そんな雰囲気を……感じたものですから」
 先ほどの物憂げな様子も重なって、思わず口ごもってしまう。
 私の様子に会長は苦笑を浮かべながら。
「そうだね。下心はあったよ。会長になったら今後について、箔がつきそうだとか、今後の進学や就職に有利そうだとかね」
 窓の縁から立ち上がり、会長は私の所にやってきた。
「いつも考えちゃうんだよ。メリットとデメリットを考えて、有利な方を選択する。いつもそうやって行動してきたんだ。そしたら、ほら、会長様になっちゃったよ」
 くすっと笑う会長が、少し寂しげに見えたのは、気のせいだろうか?
「それに、ここにいないメンバーもそれを考えて、ここに来ないのかと考えると、腑に落ちる部分もあるんじゃないかな」
「そういうものなんでしょうか?」
 メリットとデメリットを常に考え、行動する。
 それの何処が悪いんだろう?
 それに、会長がここまできた歩みが決して悪いものではないと思う。
 だって、そうでないと、ここまできたことが無駄になってしまうんじゃないかって……。
「会長は凄いです。メンバーが一人、また一人と減っていく中で、ここまで生徒会を支えてくれたじゃないですか。私、会長がいなかったら……」
 続けようとした言葉を、会長の指が邪魔をした。
「それ以上は言わないで」
「会長?」
 首を傾げる私に会長は。
「それ、他の子にも言われたよ。俺がいなくなったら、凄く困るって。でも、優秀な人間は他にもいる。現にこの部屋にもね」
「えっ!?」
 そ、それって、私のこと!?
「わ、私はただ、与えられた役割を精一杯果たしているだけですよ?」
「それが出来ない人間も多いよ?」
「そ、それでもっ!!」
 会長の寂しそうな笑みを変えたいと思って、更に言葉を重ねる。
「やっぱり、会長はここにいなくてはならない人です。もし、会長が何も出来ない人であっても、やっぱり居るだけで安心すると思うんです。それに、私もいますよ! 全部背負い込むなんて、必要ないんです。一緒にがんばっていきましょうっ!!」
 そう力説すると。
「君のような子が、生徒会に居てくれて、本当に嬉しいよ」
 ぽんと優しく私の頭に手を置くと。
「ありがとう、柊」
 先ほどの寂しそうな笑みが、優しい笑みに変わったのを見て、私も嬉しそうに微笑んだ。


 これが会長と会った、最後の日のことでした。
 ……えっと、あれ!? どういうことですかっ!?

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