アール・ブレイド ~ソルビアンカの秘宝~

秋原かざや

第6話 荒野のモノリスvs戦乙女モーターギア?!

 惑星ガリスト。
 その大部分が荒野で覆われ、大地に芽吹く植物は少ない。
 赤く染まる岩肌。時折吹く風が赤茶けた砂を巻き上げる。
 幸いなことにそこは、砂漠ではないということだろうか?
 かといって、人が住める環境だとは言い切れない。むしろ過酷な方だろう。
 定期的に吹き荒れる砂嵐で、岩肌が大きな谷間を作り上げていた。
 そんな惑星に、アール達の船が舞い降りる。
 砂嵐が過ぎ去った後なので、思う存分、調査することができるだろう。


「確かこのあたりだけど……」
 船から降りたアールは、座標を確かめた後で当たりを見渡した。
 赤茶けた丘の上。
「……ねえ、これなに?」
 アリサが思わず声を出す。
「モノリス……でしょうか?」
 アールは確かめるかのように、それを指摘する。
 荒野に不似合いなもの、そこには黒光りするモノリスが鎮座していた。


 あのカードに刻まれた座標によると、ここが目的地で間違いないだろう。
 目印になるかのように……10メートルもある巨大なモノリスが立っているのだから。
 恐らく、このモノリスに何かがあるはずだ。
 そうでなければ、あのカードが、ここを指し示すことはないのだから。


 と、じっとモノリスを見つめていたアリサが声を張り上げる。
「!! わかったっ!!」
 ぺたぺたとモノリスを叩きながら、アリサは続ける。
「きっとこれを動かすのよっ!! ぐぐっーって。そうしたら、洞窟の入り口が出てくるんだわ!」
 アリサはふふんと自慢げに反り返ったが、果たしてそれができるかどうか。
 言った後でアリサは、それが不可能なことに気付いたその時。
「……試してみます?」
 軽い口調でアールがそう提案する。
「無理無理、あなた一人じゃ動かせないでしょ? こんなおっきなモノリスなんだもの」
 そう、目の前にあるモノリスは小さなビルくらいの大きさがある。
 人が一人で動かせる代物ではないのだ。
 それでもアールは後ろにいるカリスに指示を出した。
「大丈夫ですよ。カリス、例のものを」
「了解しました。すぐにお持ちします」
 カリスはアールに言われて、すぐに船に戻ると……。
「大きなキャリア?」
 いや、そうではない。カリスが運んできたのはキャリアに積まれた。
「も、もしかして……モーターギア!? 初めて見た!」
 銀色に輝く、戦乙女ヴァルキリーを思わせる美しい、巨大なロボット。
 やや細めで丸みを帯びた女性型のモーターギアが、そのキャリアに横になっている。
「でも、本で見たモーターギアって、もうちょっとゴツい感じだったと思ったんだけど」
 アリサは昔見た本を思い出しながら、首を傾げていた。
 そういうアリサにアールは笑みを浮かべると。
「あれはちょっと動かし辛かったので、自分でチューンしたんですよ。お蔭で装甲が犠牲になっちゃいましたがね」
 ぽんぽんと跳ね上がるようにモーターギアのハッチに乗り込んだ。
「これくらいのモノリスなら、動かせると思いますよ」
 そういって、アールはハッチを閉める。
 ぐぐんと、低い音を立てて、モーターギアの瞳に光が宿る。
 それと同時に、手をついて、女性型のモーターギアがゆっくりと起き上がる。
「おおおっ!」
 初めて見るモーターギアにアリサは大興奮だ。
 アールの動かすモーターギアがゆっくりとモノリスに近づいていく。
 そっとモノリスに手を付けて、ぐいっと動かしてみせたのだが……動かない。
「ちょっと動かせないようですね」
 様子を見ていたカリスが告げる。
「ルヴィでも動かせないとは驚きました」
 銀色のモーターギアから降りてきたアールも驚いているようだ。
「この子が細すぎるからじゃない? あの岩は動かせるの?」
 どうやら、アリサは銀色のモーターギアいや、アールの言う『ルヴィ』のパワー不足を指摘しているようだ。
「試してみますか?」
 不服と言わんばかりに、アールはもう一度、ルヴィに乗り込むと、今度はアリサの言った岩を……。
「う、動いたっ!!」
 ぐぐぐぐと、ゆっくりとではあるが、モノリスと同じくらいの大きさの岩を動かして見せたのだ。
 どうやら、動力が問題なわけではなさそうだ。
「良いアイディアだと思ったんだけど……」
 疑ってごめんなさないとアリサが謝ると、アールは気にしないでと声をかける。
 と、そのときだった。
「マスター、アリサ。こちらに来てください」
 モノリスを調べていたカリスが声を上げたのだ。
 すぐさま、二人はカリスの元へやってくる。
「何か文字が書かれている、か……」
 アールの言う通り、モノリスの裏側には、何か文字のようなものが刻まれていた。
 しかし……。
「何が書いてあるのか、さっぱりだわ」
 アリサが最初に根をあげる。
 古代の文字らしく、解読することができない。
「マスター、こちらに数字らしきものが刻まれているようです」
 カリスが指し示す先。
 文字が書かれた箇所の下部に、銀色のプレートがはめ込まれており、そこに数字が刻まれていたのだ。
【GB58 23 66 09】
「……この惑星とは別の座標か。カリス、座標だけでなく、このモノリスの文字盤も記録しておいて」
「了解しました」
 モノリスに刻まれた文字と座標を記録すると、三人はまた宇宙船で更なる惑星へと向かったのだった。

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