1month じょぶじょぶ!

コルル

0day 月へ?

カーテンを開けたらあたたかい陽の光が自分のことを包んでくれる。いつもの朝だなと心で思う星昇宙。中学3年生にもなって体、学力、運動神経、全て平均。可もなく不可もなく、中の中。身支度をし、朝ご飯を食べ、元気よくドアを開け学校へ向かう。
「宙!おはよー」
幼馴染の星宮 叶が宙の背中を叩く。腰までのびている超ロングへアーが特徴的で、優女。たまにドジっ子。
「おはよう、でも痛ってぇよ!次からはもっと優しく叩いてくれ。」
「あ、叩いてほしいんだね。Mなんですね、わかります。」
「ちげぇよバカ。」
何気ない普通の会話。それでも、宙と叶にとって、楽しい時間だった。
「そうだ!今度さ!」
「うん。」
あ、多分この間言ってた、水族館の話だな。ナマコだけが見たいとか言ってたっけ。ってかナマコだけって。まあどうせ水族館の話だから、聞いてやるか。宙はそう考えていた。しかし。
「月行こうよ!」
「へ?」
予想していなかった一言に、思わずえ?ではなく、へ?と声が出てしまった。
「ちょw朝から冗談はキツいぞ。」
「いやまじで。ウチらのクラスに細川凛って人いるでしょ?その人に私誘われたのよねー。女子2人だとつまらないでしょ?だから宙を誘ったの。いいでしょ?ね?」
技術や科学などは日々進歩してきている。細川凛の父は確か超有名宇宙飛行士だと聞いた。しかし何の訓練もしてない普通のどこにでもいるような、中学3年生3人が月へ行けるのだろうか。しかし、もうすぐ夏休みで勉強しかやることがない。そう思った宙は、
「まぁいいけど。月へ行くって…大丈夫なのかね」
「その心配はないよっ、宙くん。」
噂をすれば、後ろから細川凛が話しかけてきた。ショートカットで目がぱっちりしていて、俺の好みだからなのかは分からないが、かなりの美人である。
「おはよう。なんで心配がないってどうして言いきれるんだ?」
「言いたいところだけど、もう学校遅刻しちゃうからまた後でねっ。ふたりとも!」
そう言った彼女は、叶に手紙を渡した。
「今日の放課後、校門に集合。」
それしか書かれていなかった。

そして放課後、3人は校門前に集まった。集まってから40秒ぐらいしてから、1台の車が3人の前に止まった。
「さあ乗ろ!うちの車だからねっ。」
「そーなんだ!じゃあ乗ろ乗ろ!宙はやくぅ!」
「おう」
車に乗ったはいいものの、何から話そうか俺が迷っていると、叶がそれに察したのか、
「どこに向かってるの?凛ちゃんの家〜?」
「私んちにある、科学研究所よっ。その中にある装置を使って今日月へ行くよーん。」
「へー!そうなんだ、科学研究…ん?科学研究所!?今日月へ?!」
叶はそう驚いたが、俺は驚きのあまり、声が出なかった。でも、今日は終業式で明日から夏休みだからとかいう謎の余裕があったからか、あー、月へ本当に行くんだなと思っていた。
「ついたよ!」
着いたのはごく一般的な家。本当に科学研究所なのか?と思ったが、表札にはしっかり「細川」と書かれていた。
細川がドアを開け、彼女のあとを俺と叶はついていった。一つだけおかしかったのは、エレくベーターがあったことである。エレベーターのドアが開いたらその先には何があるんだろう。…あ、月へ瞬間移動できる装置とかあるのか?と思っていたが、エレベーターが止まって、ドアが開いた途端、俺も叶も膝を落とした。
エレベーターがあってからだ。
「おいーまたエレベーターかよーww」
「私もそれ思ったw瞬間移動できる装置かな?とか思ってたもんでねw」
さすが幼馴染。思うこと、考えることは同じようだ。
「え?これに乗って月へ行くのよっ。このエレベーターは、月まで直通でね。」
「嘘言うなよwもし直通だったら、今宇宙でぷかぷか浮いてる人工衛星はなにやってんだよ。エレベーターがあったらさすがに気づくだろ。」
当たり前だ。こんなの近所が見たら、「あら、エレベーターだわ。すごいわね。」で済むはずではないだろう。ましてや、月にまでのびているんだから、たくさんの人がこのエレベーターに、異変を感じているはずだろう。
「その心配はないよっ。このエレベーターの表面には特殊な液を塗ってあるから、人には見えないよっ!」
驚いた。しかし、一つだけ疑問に思うことがあった。それを言おうとした途端、叶が言ってくれた。
「それにのって月に行くなら、私たちはほかの人から見えてるんでしょ?」
「うん、そーだねっ。」
「ほかの人は私たちが浮いているように見えるんじゃない?」
「うん、そーだねっ。でも、ここから、月まで1分だよ?問題ある?」
いやあるだろ。不自然すぎる。でも、1分なら大丈夫とかいう謎の余裕をもってしまった。そんなことを考えていると、前から一人の男が現れた。凛の父である。
「みんな月へ行く準備はできてるかいっっ!?」
できてるわけねーだろ。だって今制服を着て、学校指定のバックを持っている。もっというなら、今朝月に行こうって言われたんだし。
「心の準備はできてます。そういえば、何か持ってくるものはありますか?」
「特にないよっっ!!」
怪しくなってきた。本当に月へ行くのだろうか。実はCGで月へ行ったような気分にさせたりするだけなのではないだろうか。
「じゃあ今すぐ行きましょ!ね!宙行こう!!」
叶が珍しくテンションをあげて話しかけてきたので、俺みたいに疑ってないんだなと思った。
「そうだな。行こう」
「じゃあ行こうかっ!」
3人の思いがひとつになった。
「じゃあこのエレベーターに乗ってねっっっ!!」
3人は凛の父の言う通り、そのエレベーターに乗った。
「はーいっっ、出発まで3ー2ー1ー!」
「え、ちょま、早す…」
「0ーーー!!出発ー!!!!」
どんどん上がっていく。ありえない速さで上へ上がっていくのがわかる。もう地球が見える。
「あとちょっとで月だね!でもどうやって息吸うの?宇宙服ないよ?」
「この薬飲んでねっ!1ヶ月だったら、宇宙でも地球にいるように息吸えるよっ!ちなみに、帰る時は、私がポケットに入れているボールを持って手を繋いで自分の家のことを思えば3人とも戻れるよ!」
一言で言うなら、神。凄すぎる。凛の父はどんな脳みそをしているのか気になった。
そして、ついに月が見えてきた。そう思った瞬間。3人は同じこと思っただろう。
”あれ?エレベーター止まってない?”と。
焦る3人。エレベーターの壁をよく見ると、穴が空いてしまっている。薬を飲んだおかげで、息は吸えるものの、宇宙に放り出されてしまいそうになる。穴はどんどんでかくなり、そしてついに。
俺は宇宙へ放り出されてしまった。
「宙!!」
俺の腕を叶は掴んでくれた。しかし、叶も放り出されてしまった。2人が宇宙を漂う中、凛はというと、
「あはははー!!そのまま宇宙を漂って死んじゃえ!!」
性格が凶変した。もしかしたら父と凛は俺と叶を消したかったのか。とりあえず、絶望した。
叶も絶望して、気を失ってしまった。
「叶ー!!起きろ!」
何故か涙が出てくる。その涙は宇宙空間をぷかぷか浮いてどこかへ行ってしまう。叶の気を失っている顔を見て、俺も目眩がしてしまった。
「う…。」
そして、俺は気を失った。


「う……うん?うおおおおおおいいい!」
目が覚めると、女子の顔があった。そしてさらに驚くの事は辺りを見回しても、叶がいない。
「誰だお前?!叶はどこだ!!」
「お前の下だヨ」
そう、その少女が言う通り、踏んでいた。しかも叶は目が覚めている。
「踏むなぁぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間、殴られた。叶と謎の少女に。
「ちょっと待て。叶が殴るのは分かる。でもそ?なんで君が殴るのかな?」
「なんとなク。あと、私の名前はミチだよヨ。そしてここは、ミチ星だヨ。私はこの惑星の女王だヨ。」
理解出来なかった。突然宇宙へ投げ出されて気を失ったかと思えば、へんな少女に連れてかれて未知の惑星にいるなんて。
「あと、元の惑星に帰りたイ?だったら、1ヶ月働いてテ。」
「は?」
俺と叶の声が今いる部屋の中を響いた。

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