Unlimited cross city

ノベルバユーザー234055

1:remember


我が国には"奇眼"(キガン)と呼ばれる国宝がある。名の通り、その国宝は"人間の眼球"であり、"奇眼"を持って産まれた者は容姿端麗な顔立ち、優秀な魔術的体質、そして所持者の証である"十字の黒目が刻まれた眼球"が授けられる。国家政府はこの"奇眼"の保持を、都市でトップクラスの魔術修道家"アルグリィード家"に任命した。
  アルグリィード家が国宝の保持家系に任命されてから500年以上たったある日、律儀に守られてきた規則が破られた。349代目当主が、一般人との間に子を作ってしまったのだ。事の重大さを知った当主は、すぐに隠し子を始末しようとしたが、出来なかった。

次期当主の実の息子に殺されたからだ。

  それから、349代目当主の事は噂されなくなり、息子が350代目当主になった。新しい当主は、先代とは比べ物にならないほど、素晴らしい人格者だった。物腰柔らかく、困っている者を見かけたらほっとけないような、優しい心の持ち主だった。
  だが、350代目当主は二十歳になる誕生日の日、突如姿を眩ました。何故かは誰も知らない。子もいないため、代を引き継ぐことができない。今、アルグリィード家の当主の座は、空いている___________。
                             国家秘書官: ソウ.ガールディアムズ

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「…………埋まらない方がいい。」
真夜中、色硝子が通した月の光が書物と黒コートの青年を照らす。
「こんな薄汚い国家の国宝など、踏み潰して燃やしてしまえばいい……」
怒りを露にする声色には、微かに憂いが込められている。
「…………」
書物を棚にしまい、窓に歩みより、開け放つ。散乱した資料や書類が、白い鳥のように舞い踊る。まるで、自分に記されている"偽りにまみれた"麗しい記録を自慢するかのように。
「……今、迎えにいく。」
窓のサッシに足を掛け、黒コートの青年は、夜の真っ黒な海に溶けていった。

_____妹を救うために。



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