サイサリア/ハイゼ

ノベルバユーザー220935

ep.1

 戦場に向かうV-22(オスプレイ)の機内で居眠りをする――はずだった。


 大切な時間ルーティンなのに、前のシートに座る男たちの話し声で目が覚めてしまい、無性に腹が立った。


「おい、さっきのやつ見たか? 昨日、特例だとかで転属してきた新入り」
「見た見た。 あいつ、まだ12歳なんだろ?」
「ああ、そうだ。 なのに、あんな派手なパワードスーツ着て、おまけに剣なんか装備してやがる。 ヒーロー気取りかっての」


 目の前で、二人の兵士が話していた。
 時折、ボクを指さしながら。


「ここは遊ぶところじゃねえしな。 ガキは家に帰って、大人しくママのおっぱいでも吸ってな」


 目の前の兵士が、地雷を踏んだ。


「言い過ぎだぞ――」


 別の兵士が注意しようとした。


「――っ!?」


 その前に、ボクは目にも留まらぬ速さで左手を動かし、剣を引き抜いて兵士の喉元に突きつける。


「喉をかっさばく? 首を切り落とす?
 どっちがいい? どっちもできるよ」
「お――お前!」


 怒った男は、パワードスーツの固定装置を外そうとした。
 ただし、オスプレイが飛行している間、緊急時以外で装置を外すことは禁止されている。


「やめろサイサリア! 飛行中に固定を解除するのは禁止されてるだろ! お前も剣を下ろせ、ハイゼ」
「はいはい」


 舌打ちしながらボクは剣を下ろし、サイサリアと呼ばれた兵士も、大人しくなった。
 ついでに、名前からデータベースを検索して、あの兵士の顔を覚えておいてやろう。
 剣を鞘に収めながら、ボクは兵士の名前を検索させる。


 そして、1人の男の顔写真が表示された。


「――」


 ――焦げ茶の短髪に青い目。 顎に散らばった、薄い無精ヒゲ。
 身体データによれば、かなり体を鍛えているようだ。
 これらの特徴があれば、あとで探す時の手間も省ける。


「――さっきハイゼが手にした剣、きれいだったな」


 横でサイサリアをなだめていた男が、話しかけてきた。


「ああ。 この剣――キロネックスはね、刀身がフォトニック結晶で作られてるんだよ」
「そうだったのか」


 30年前から、地球は未知の生命体――いわゆるエイリアンから、攻撃を受けていた。
 30年前の戦争中に、エイリアンのコアを加工して作る『フォトニック結晶』が生まれ、それを動力源として利用した兵器――パワードスーツが誕生した。


 ダイヤに似た外見をしているフォトニック結晶は、膨大な量のエネルギーを溜め込んでいるために、内部が虹色に輝いていた。


「どうして剣にしたんだ? 売れば金になるのに」
「お金には困ってなかったから、試しに作ってもらったの。 以外に切れるんだ、コレ」
「へぇ……。 オレも真似してみようかな」
「なら、ボクが工房を紹介してあげる」
「わかった。 機会があれば頼む」


 ボクと兵士が仲良く話しているのを見て、サイサリアは不機嫌そうに体を揺すっていた。
 青いパワードスーツを着ているせいで、表情まではわからない。


「2人とも、パワードスーツの色が似てるんだな。 青色は青色でも、色味とかが違うはずなのに」


 兵士の言葉を聞いて、サイサリアは顔を背けてしまった。


「……単なる偶然でしょ。 同じ工房で塗装してもらったとかで、同じ色になった――とか。
 あれ? でも、サイサリアは地球防衛軍の所属なんじゃ」
「いや、サイサリアは元々PMCだったんだよ。 まだ新人だから、経験を積むためにこっちの部隊に入隊してる」
「なるほどね。 サイサリアが不機嫌になるわけだ。 ボクと同じだから」


 エイリアンとの戦争から30年経った現在。
 国連 地球防衛軍とは別に、PMC(民間軍事会社)が、依頼を受けてエイリアンと戦うようになっていた。


 ボクは、9歳で両親が立ち上げたPMCに所属し、今日こんにちまでエイリアンと戦ってきた。
 義務教育は、今も通信教育で受けているが、"戦闘に関する知識以外は穴だらけだ"――と、評価されたこともあったっけ?


「ボクの家、生活が厳しいからね。 こうでもしなきゃ生きていけないのよ」
「でも、反対する奴らも居たんじゃないのか?」
「それは大丈夫。 何もしないくせに一丁前なことを言うやつは、何度もぶちのめしてきたから。 老若男女問わずに……ね」


 最後はいたずらっぽく言ってみる。


「ぞっとしない話しだな」


 兵士は肩をすくめた。


 "こんな子供に戦わせるなんて!"
 "子供を食い物にして、儲けることの方が大事か! あんたらは!"


 まだ小学校に通っていた頃に出会った、厚化粧の教育ママや、熱血教師。
 そいつらの顔や言葉を思い出すと、イライラしてしまう。
 でも、この手で殴った時の感触と、殴られて驚くやつらの顔を思い出せば、幸せな気持ちになれた。


「どこまでオレと似てるんだ……」


 サイサリアがなにか言った気がした。


「なんか言った?」
「いや。 お前みたいなガキでも、辛い経験とかしてるんだなって」
「辛いとは思ってないけどね。 ボクのことなんて、ボク自身にしかわからないんだから」
「ああ、そうかい」


 そうだ、ボクのことは……ボクにしかわからない。


 例えば――"ハワイに顕現して立ち去ったビーストの少年"を主人公にした小説とか、"アーティファクトと呼ばれるナノマシンを武器に戦い、死霊術師ネクロマンサーとまで呼ばれた"少年を主人公にした小説があるとする。


 『その小説を見た祖先が、数百年もかけて主人公を再現しようとして、なんとか"雛形ひながた"を作りました』――と自己紹介して、信じてもらえるだろうか?
 いや、信じてくれない。 きっと。


 だから、ボクは普通の人間とは違う生き方をすることにしたんだ。


 ◇


「もうすぐ降下地点だ! 全員、用意しろ! サイサリア、また動けなくなるなよ」
「わかってる!」


 イラついているサイサリアを尻目に、ボクはパワードスーツの状態を確認する。


 ボク達が装備するパワードスーツは、複合素材にフォトニック結晶の微粒子を含ませた強固な装甲と、胸部に動力源である大型のフォトニック結晶(みんなは炉心と呼んでる)を搭載していた。


 関節部には高出力のモーターがあるから、自動車程度なら持ち上げられるようになるし、背中とふくらはぎ、そして足の裏に小型・高出力の推進器スラスターを備えるから、短時間なら空だって飛べる。


 そして現在いまも、パワードスーツはエイリアンとの戦闘における主力であり続けていた。


「――サイサリア。 武器は何を選んだの?」


 ボクは、固定を外して隣に並んだサイサリアを見る。


「呼び捨てはやめてくれ。
 ――20mmアサルトライフルとシールド、バックパック右にレールガン、左に予備弾倉を積んでる」
「積みすぎかもだけど、悪くはないんじゃない?
 頼むから誤射フレンドリー・ファイアは止めてね?」
「馬鹿にすんな! ライフルくらい普通に撃てる!」


 「はいはい」と素っ気なく返しながら、ボクはHUDに地図を表示させた。
 やがて、HUDにマーカーが置かれる。
 ――つまり、戦場に到着したということだ。


「みんな、めちゃくちゃだ」


 ボクは淡々と呟く。


「フロリダ、好きだったんだけどな」


 サイサリアもまた、淡々と呟いていた。


 ◇


 破壊された建物や、炎上する車が次々と表示され、それらが戦闘の激しさを物語っていた。


 2日前にフロリダを襲撃したというのに、ここまで街を破壊できるのは、エイリアンが物量という面で人類に勝っているからだろうか。


「そろそろ降下の準備を始めてくれ! 飛行型エイリアンがこっちに気付く前に離脱したい!」


 オスプレイのパイロットが声を上げた。


「お先にどうぞ、サイサリア。 降下してすぐに腰を抜かしてたら、ボクがそのケツ蹴っ飛ばしてやるからさ」
「お前な……オレのほうが先輩なんだぞ」
「関係ない。 というか早くして、後ろが詰まっちゃう」


 サイサリアはため息をつきながら、最後の固定用アームを外し、オスプレイから飛び出した。


 機内の仲間が続々と飛び出していき、ボクは最後にオスプレイから飛び出して、離脱していくオスプレイを見送る。


 ◇


 高度は100mほど。


 この程度の高さなら、スラスターと反重力機能によって安全に降下できる。


「――!」


 なるべくならエイリアンが居ない場所に降下しよう、と考えていた時、警報が鳴った。


「SOS……か」


 すぐ近くで、パワードスーツがエイリアンから攻撃を受けたらしい。
 パワードスーツはSOSを自動で発信する。
 ただし、信号を発するのは、身動きが取れない状態――つまり死ぬ寸前だ。


「この識別番号は――」


 確認すると、SOSを発していたパワードスーツは、サイサリアのものだった。


 今はアリの形をしたエイリアンに噛みつかれ、装甲を剥がされそうになっている。


(運が悪いなあいつも!)


 ボクはアサルトライフルをバックパックに戻し、代わりにキロネックスを構え、アリの頭に突き刺せるように落下軌道を修正する。


 ◇


 着地すると、キロネックスがアリの頭に深々と突き刺さった。
 突き刺した部分には、エイリアンにとって最も重要な器官――コアが存在し、ここを破壊されれば、エイリアンは即死する。


「サイサリア、生きてる? 死んでる? どっちでもいいから返事して」


 ボクが聞くと、倒れていたサイサリアは、アリの死体を蹴ってどかし、ゆっくりと起き上がる。


「死んでたら、返事はできないだろ」
「ボクなりのジョークってやつよ」


 キロネックスを振るって付着した体液を落とし、腰の鞘に格納したあと、アサルトライフルを装備した。
 サイサリアも、パワードスーツの装備を確かめ、落としていたシールドを拾い上げる。


「……感謝する」
「ボクのこと、散々馬鹿にしてたくせに、お礼は言えるんだね」
「うるせぇ」


 HUDに映し出されたサイサリアは、不機嫌そうな表情をしていた。
 ボクは映像通信で答えていたので、そんなサイサリアに対して微笑んでやる。


「まあ、助けられて良かったよ。 いざっていう時のために、人手は多いほうがいいからさ」
「可愛くねぇやつ」
「うるさい。 それに、大人の機械化歩兵は大事にしないと。 言う事を聞かない子供と戦うのはイヤ」


 10代の少年少女が、パワードスーツを身につけてエイリアンと戦う。
 もう珍しいことじゃない。
 パワードスーツが少なかった30年前の戦いで、優秀な大人達が数多く戦死していったからだ。


 今は、各国に訓練学校が設立されているし、ある程度の基準を満たせば、PMCにだって入れるようになっている。
 ただし、入れるのは15歳以上になってからという条件はあるけど。


「じゃあ、サイサリアはボクに付いて来てくれる?」


 戦況を把握しながら、次に向かうべき場所を決める。


「味方ともはぐれちまったからな。 何をすればいい?」
「ボクは前に出る。 そっちは援護を」
「OK、任せろ」


 ボクはスラスターを吹かし、地表を滑り出した。
 直後、目の前に飛び出したクモ型エイリアンを叩き切る。
 クモの後から飛び出したアリは、サイサリアが撃ち落としてくれた。


「どこに移動するんだ?」


 サイサリアが、周囲を索敵しながら聞いてきた。


「今居る所から、ヨット・クラブにまで移動する。 道中で孤立している味方を保護して、そのあとセント・ルシー川下流に展開している部隊から補給を受ける。
 ボクのパワードスーツは平気だけど、射撃が下手なアンタや、道中で助けた人たちは、弾薬・燃料が心もとないかもしれないでしょ?」
「たしかに。 オレも無駄撃ちしちまうしな」


 彼は、ボクの説明に納得しているようだ。
 まあ、ボクがこうやって説明できるのは、PMCとして戦ってきた経験があるからだけど。


 ◇


 レーダーには、他の部隊のものと思われる信号が多数と、戦車・装甲車合わせて3台分の信号がある。


 ボクとサイサリアが居るのは、セント・ルシー川を挟んだ向かい側の街『パーム・シティ』を直接確認できる場所だ。


 エイリアンは、1週間ほど前に地中から現れ、現在は圧倒的な物量で街を制圧している。


 街の住人を避難させたアメリカは、パーム・シティ解放作戦を計画し、アメリカ軍 海兵隊の部隊が、作戦のための前線基地とした『ウィザム・フィールド空港』に派遣された。
 そして、作戦中にエイリアンの増援を確認したアメリカ軍は、国連やPMCに援軍を要請し、すぐに出撃可能だったボクがフロリダに来た。


 ◇


 作戦開始から1時間後。


 ボクたちは、補給部隊が展開していたセント・ルシー川下流に到着し、道中で助けた兵士達と共に補給を受けていた。


「なあ、お前はどこの所属なんだ? PMCから転属したとしても、国連の部隊に所属することになるんだろ?」
「国連 地球防衛軍 第4小隊だよ。 日本からガルフポート基地に派遣されてる」
「日本人なのか? 12歳と聞いてはいたが、データより若く見える」


 補給中の兵士たちと話しながら、ボクは周辺を警戒する。
 こんな時でも、気を抜くことはできない。


「あの、私達はこれからどうすれば良いんでしょうか?」


 補給を終えた女性兵士が質問してきた。


「補給完了後、パーム・シティに繋がる2本の橋の一つ、サウスウェスト・モントレー・ロードの近くまで移動したい」
「なんでそんな所に?」


 補給を終えた男の兵士が、首を傾げる。


「戦況は拮抗してる。 ボク達が橋のどちらかを制圧できれば、戦闘車両や歩兵が侵入できるようになって、戦況は一気に優勢になると思うんだよ」
「だが、航空隊は飛行型と交戦中。 橋を壊すわけにはいかないから、ミサイル攻撃も要請できない」
「わかってる。 いま確認できてるエイリアンの種別は?」
「数が多いのはクモとアリ。 二つの橋は、ダンゴムシがバリケードになって塞いでいて、その奥でイモムシが地中からアリやクモを運んでいるようだ」


 データリンクに表示される様々な情報を元に、ボクは作戦を黙考する。


「戦闘ヘリは出せませんか? 一応、ふねに待機させてあるんですよね?」


 若い男の兵士が手を挙げる。


「戦闘ヘリなら、橋を越えてエイリアンを叩ける。 しかも、橋に流れ弾を当てないようにできるね。 ――最速で来れるとしたら何分?」
「8分だそうです」


 バックパックの左側に予備のアサルトライフルを格納させ、キロネックスを構えながらボクは立ち上がった。


「じゃ、橋にいるエイリアンが増える前に行くよ。
 橋に到着したら、ボクが突撃してダンゴムシを撃破するから、残りはボクを支援しつつ前進して、橋の制圧を。
 あとは、ヘリが到着するまでの時間を稼ぐ」
「――少し無茶な作戦じゃないか? ヤシロ」


 サイサリアが、不安そうな声で言った。


「PMC時代の時と同じことしかしてないけど?」


 ボクは笑いながら通信回線を開き、ガルフポート基地所属で第2小隊の隊長『デイビッド』を呼ぶ。


「デイビッド、セント・ルシー川に来れる? 橋を一つ取り返したい」
「また唐突な……。
 まあ、こちらは部隊も健在だし、弾薬に燃料もあるから問題はない。 なにをすればいい?」


 しっかりとしたデイビッドの声に、部下達の声が混ざって聞こえる。
 デイビッドと彼の部下は健在らしい。


「ボクらが突入するタイミングに合わせて、制圧射撃をしてほしい。
 特に、川から侵入しようとするエイリアンと、低空を飛ぶエイリアンの対処が必要で」
「他に動けるヤツらを連れてすぐに向かおう。 合流はいつだ?」
「5分後」
「了解。 気をつけろよ」


 通信切れる直前、デイビッドは笑った。
 デイビッドは少し厳しい人らしいが、部下に嫌われていないのは、優しい一面もあるおかげだろう。


「連絡も終わったし、そろそろ始めようか。
 後方や地中、あと上からの襲撃に対する警戒は怠らないで。 陣形はデータリンクを参照して」
「了解!!」


 ボクは静かに命令を出し、全員がはっきりした声で答えてくれた。


 ◇


 陣形は、ボクを先頭に前衛がくさび型に広がり、後衛が縦に並んでやじりを構成するようになっている。
 この陣形なら、橋のような場所で高い攻撃力を発揮できるからだ。


 橋に向かう途中、多数のエイリアンが襲いかかってきたが、デイビッドとは別の部隊が援護してくれたおかげで、ボク達は消耗しないで済んだ。
 そして、目的地である橋が見えてくる。


「ハイゼさん、注意してください。 イモムシから、エイリアンの反応が出てます」


 データベースによれば、まだ機械化歩兵としての日が浅いらしい女性兵士が、焦った様子で声をかけてきた。


「こっちに気付いたみたいだね。 みんな、ボクは予定通り先行するから、援護して」
「了解」


 命令を出しながら、ボクはさらにスラスターを吹かした。
 そしてバックパックからサブアームこどアサルトライフルを展開し、連射させながら先陣を切って突入する。


「すげぇ、体を左右に振ってるのに、クモの脚だけを壊して止めてやがる」
「それだけじゃないわ。 ジャンプした個体への反応と対処は――もっと早い」


 通信で聞こえてくる兵士たちの声。
 ボクの攻撃で動きを止められ、動けなくなるエイリアンを見ながら、誰もが驚いていた。
 一見、エイリアンを殺さないため無駄に思えるが、固い甲殻を攻撃して破壊するより、弾薬と燃料は長持ちする。


「足が止まったエイリアンの動きに注意して! 絶対に油断しないでよ!!」


 ボクは大声で怒鳴り、さらに加速する。


「了解!」


 ボク達の背後に居るエイリアンどもは、川沿いの攻撃艇とデイビッドが率いる部隊からの制圧射撃によって、身動きが取れない。
 代わりに、橋の出口からやって来るエイリアンの数は増えていった。


「全員! ボクが跳躍したら続いて! 私がダンゴムシを撃破するまでの間、滞空してダンゴムシ以外を攻撃!」


 命令を出しながら、ボクはスラスター全開で跳躍した。
 その後、跳躍の限界点でサイサリア達は滞空し、こちらを見上げるエイリアンに鉛弾の雨を降らせる。


 ボクは跳躍限界のタイミングで橋の欄干らんかんに一瞬だけ着地し、そこから更に跳躍して高さを稼いだ。
 同時に、弾切れとなったアサルトライフルをバックパックから切り離し、キロネックスを構えて急降下する。


「死ね!」


 ボクは、ダンゴムシの上に着地した。
 急降下によって威力が増した一突きがダンゴムシの甲殻を砕き、裂け目から緑色の体液が噴出する。
 ダンゴムシは、ぴくぴくと体を痙攣させたあと――絶命した。


「このままイモムシも殺る! 続いて!」
「了解!」


 ――休む暇なんてない。


 すれ違いざまにエイリアンを斬り伏せつつ、ボクは口を閉じようとするイモムシへ接近した。

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