引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

48話 精霊魔動機兵は日本円換算で600万ほどする

「確かに威力だけはすごいらしいんだけど、連続使用で1分しか使えないって問題があって……。ほんとにごく短時間だけはすごい、みたいな。」


能力の限界を超えた膨大な魔力を、ずっと長時間制御し続けることなどできるはずもない。
ルナさんのような体質の子は、一般的に非常に厳しい条件のもとでしか能力を発揮できない。

一次試験では、終了時に顔を赤らめて汗だくで震えながらその場に座り込んでしまうほど、ルナさんは消耗していたそうだ。

試験官の結果発表にも、ずっと俯いて目を目を合わせる気力もなかった様子だったとか……。


1分未満でそれなのだ。
もしも許容限界を超えてしまった時、ルナさんはどれほどの苦痛を味わってしまうのか……あまり考えたくはない。



そんなルナさんの言葉を聞いて、アイシアさんが身を乗り出してルナさんに質問する。


「つまり、1分限定ですごいパワーを発揮するってこと?特級魔法技士すら凌ぐ測定値3000オーバーの。」


「そうそう、最初は1回魔法使っただけでおかしくなっちゃってたからこれでも時間大分伸びた方なんだけど……これじゃ、まだまだカップ麺すら──」


「かっこいい!おねーさんそれすっごいかっこいい!なんかほら、本当はものすごく強いのに、闇の組織に制約をかけられてて、でも1分間だけは真の力を発揮できる大魔導師みたいでかっこいい!」


「闇の組織どこから来たの!?というか、全然かっこよくないし、むしろエロいというか──」


アイシアさんはなぜか「1分限定」という部分に強く興味を惹かれたらしい。
測定値を見たときよりも、興奮度合いが凄まじい。

前にちらっと耳にしたアイシアさんのあの噂は、どうやら本当なのかも知れない。



「ああ、なんかあたしも久々に左手が疼いてきちゃったかも。左目だっけ?まあどっちでもいいや。……おねーさんに負けないように、あたしも封印されし闇の力を解き放つ必要があるかも知れないわね。」

「うん、完全に厨二病だこれ。」


前言撤回。
噂は100%本当のようでした、はい。



そうこうしている内に、どうやら2人は精霊魔動機兵エレメンタル・ゴーレムを粉砕する方向で話がまとまったらしい。


あれ製造原価べらぼうに高いから、あんまりこっぴどく壊されると主催の方で赤字が出るって聞いた気が……。

恐らくそういう理由から、撃破ではなく耐えきることを推奨する前口上を、事前説明で試験官に言わせてるって理由があるんだと思う。


でも、雇われ試験官の私には赤字だろうが何だろうが報酬は契約通り支払われる訳で、それはそんなに関係ない話だ。

なので、是非とも派手な戦いを見せて、楽しませてほしい。
能力的には、この2人なら撃破は不可能ではないはずだから。

コメント

  • さんじゅーすい

    建物の備品勝手に壊したとかじゃなくて試験課題なので、こういうのは試験なんとかセンターが自腹切るので大丈夫です(´・ω・`)
    ちなみに試験なんとかセンターは天下り組織で、赤字の補填は回り回って結局アイナさんも納めてる税金の一部から出るんですけど、アイナさんはそこまで気付いてません笑

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  • 美浜

    アイシアさんが厨二病だったとは。


    精霊魔動機兵をぶっ壊して借金生活でもはじまるのかな?
    (ガクガクブルブル)

    2
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