引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

46話 ルナの特訓プレイ

試験前日、私は予定通り都へ来ていた。


明日は試験会場に朝8時に行かないといけないので、今日はここで泊まるつもりだ。


先日町の交換所でガイストさんに聞いた話では、ガイストさんとリーシェさんもルナさんの付き添いでここへ一緒に来ているらしい。

前日到着と言っていたので、もう着いている頃だろう。


私が試験官を務めることは秘密にしている。
そういう決まりになっているからだ。


何となくぶらぶら歩いていると、本屋に知っている人影が──


「……これはこれは、ルナさ──」


声を掛けようとした私は、思わず言葉を飲み込んだ。


ルナさんは非常に堂々とした立ち振る舞いで本を立ち読みしている。

エロ本を。


あたかも高尚な哲学書を読み解くが如く、時折頷きながら立ち読みしている。

エロ本を。
しかもこれちょっと特殊な性癖のやつ。


学校の生徒でたまにこういうことをする子はいるけど、皆決まってこっそり気まずそうにやるものだ。

目の前のルナさんは余りに堂々としすぎていて、注意していいのか逆に迷ってしまうほどだ。

それでも、やはり性分なのか放っておくわけにもいかないと思い声をかける私だったが──


「……あの、ルナさん。それは──」


「え?……あー、アイナさん!アイナさんですよね!?お久しぶりです!こんな所で会うなんて奇遇ですね、わたし明日資格試験がここであって……あ、そうそう、こないだそれの一次試験結構いい点数で受かったんですよー。いい感じにやばくなってきましたよね、まじで。マーヤちゃんまだ村に帰ってなくて大丈夫かなー、とか思ってたけど全然──」


ルナさんは、エロ本を持ったまま身振り手振りを交えて楽しそうに話す。
エロ本の立ち読みを知り合いに見られたというシチュエーションではない。


「……えっと、ルナさん。……その本は……14歳の女の子が読むには余り好ましくないと言いますか。いえ、ルナさんは私の受け持ちの生徒でもないので、あまり口うるさく言うのも良くないかとは思いますが……。」


それを聞いたルナさんは、得意げに笑って話し始めた。


「アイナさん、これはですね……特訓なんですよ!」

「はぁ……特訓、ですか……?」


「わたしってほら、全然落ち着きないじゃないですか。でも魔法をちゃんと使うには落ち着きが必要だから、こうして特訓してるんです!」


やや説明不足ながら、ルナさんの言うことには一理ある。

魔法の制御には安定した精神による感情のコントロールが必要不可欠。


マナの器は意志と密接に関係があり、流れ込む魔力は感情と密接に関係がある。

落ち着きがないというのは感情が優勢であるため、意志を鍛えることが要求される。


意志が鍛えられれば、自ずと大きくて強いマナの器を得ることができ、感情すなわちより多くの魔力をコントロールできる。

だから、羞恥心を意志のコントロール下に置くようなこういう特訓は、確かに大いに意味のあるものとは言える。


でもこれはさすがに、人として何か大切なものを失ってしまうような……いいんだろうか、ルナさん的には。


いや、でもルナさんの体質を考えるに、そこまでやらないと魔法使いとしてはやっていけないのかも知れない。

本来なら制御できるはずのないものを、何とか制御しようと立ち向かっているのだから。

このちょっと特殊な性癖のエロ本にそれほどまでに深く、切実な想いが込められていたとは。


私はエロ本をただのエロ本と思ったことを悔いた。物は使いよう。エロ本をただのエロ本とするか、特訓のためのエロ本とするかはそのエロ本を読む人次第なのだ。エロ本をエロ本以上の物と定義づけられなかった私は、エロ本という枠組みの内側に自分の思考を閉じ込めていた。それは私自身がエロ本に囚われていたということ。それではいけなかったのだ。そして今日私は何回頭の中でエロ本と言ったのだろうか。



「……そうでしたか。それはとても……良いことだと思います。……特訓、がんばってください。」

「はい!明日に備えてもうちょっとがんばってみます。」


ともかく、ルナさんからは魔法が大好きだという気持ちがものすごく伝わってきたので水を差すのはやめておこうと思う。
試験前日でもあるし。

それにどうやらあのマーヤ様の教えも受けているようだし、道を間違うことは多分ないはず。


「あ、ちょっとわたしトイレ行ってきますね。」


そう言って走り出して階段を駆け上るルナさんだったが──


いや、まあ……さすがに見間違いだろう。
影になってたし、ほんの一瞬だったし。

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コメント

  • さんじゅーすい

    最後のは割としょーもないことですけど、近々判明する予定です笑

    1
  • 美浜

    最後のはなんだろう?

    アイナさんエロ本言い過ぎw

    2
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