引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

45話 痩せるサプリ(仮)

私の体感では、数百人に1人ぐらいの割合で、制御しきれない程の異様な魔力を放つ体質の子がいるように思う。

ルナさんもその内の1人らしい。


一般的には、そういう子は魔法使いには向いていないとされている。
それは単純に、制御しきれない力は危険だという理由からだ。


実際そういう子は落ち着きがなく、感情に流されて魔法を使って、問題を起こしたりすることが多い。

そして、多くは問題を起こした上でやがて魔法学校を去ってしまう。
周囲から理解されない苦しみも相まって、非行に走る子が多いのだ。

その事実がますます、そういう子は魔法使いに向いていないという世間のイメージを強くする。


そんな子を見る度に、私はいつももったいないと思う。
制御さえできれば、いつかは優れた魔法使いになれたかも知れないのに……と。


でも残念ながら、私にそういった子達を正しい道に導く力はなかった。

凡人の私の口からは月並みな言葉しか出てくることはなく、共感を欠いた言葉は決して相手の心には響かない。

凡人の私に、才能や素質ゆえの、持つ者の苦しみを理解することは本質的に不可能なのだ。


恐らくこれは、同じ境遇の誰かが道を切り拓き、可能性を示す必要があることなのだと思う。
そういった力は制御できるものなのだと。


そういう理由からも、今回のルナさんの試験には注目していきたいと思う。

もしかしたら彼女がこの試験に合格することで、そういう世間の偏見を打ち破るきっかけ──


「ごめんくださーい。」

ドンドンとドアを叩く音とともに、男性の声がドア越しに聞こえる。

もう日も沈んだこんな時間に、何の用だというのだろうか。


居留守を使ってもいいが、万一大事な要件だったりすると困る。

ので、念のため杖を持って警戒しつつドアを開ける。


「はい……何でしょうか?」


「夜分遅く申し訳ございません。わたくし、こういう者でございまして──」

言いながら、訪問者は半ば強引に私に名刺を渡す。

それを読む暇も無く、訪問者のマシンガントークが始まる。


「今回わたくしどもがお伺いさせていただきましたのはですね、お客様に非常に耳寄りかつお得な情報をお持ちさせていただいたからでございまして。えぇ、普段わたくしどもは非常に高品質かつ高性能な優れた商品を皆様方にご提供させていただいておりまして、これがまた非常に高いご評判をいただいておりまして、えぇ、つまり、当社のモットーは顧客満足第1!でございまして。そんなわたくしども、設立一周年ということもありまして、お得なキャンペーンセールを実施中──」


どうやら訪問販売らしい。
女の一人暮らしというのが業者間で完全にバレているらしく、割とよく来る。

「……結構です。」


設立一周年って歴史なさ過ぎて怖い。
ものすごく短期間で会社名と所在地変えながら設立と倒産繰り返してそう。


疲れていなければ暇つぶしに話ぐらい聞いてもよかったが、今日はとてもそんな気分になれない。


ドアを閉めようとする私に、訪問者は「これだけでも」と強引にパンフレットを渡してきた。


部屋に戻って何の気なしにそれを見てみた私だったが──


どうやら痩せるサプリの商品説明らしい。

贅肉だけを吸着して排泄する魔法薬を謳っているが、魔法理論の説明が滅茶苦茶で一発で詐欺だと分かる内容だ。

本当に書かれてる内容通りなら、これを飲んだ瞬間胃に大穴が空いて吐血して死ぬことだろう。


こんな商売が成り立つというのは、世の中が平和な象徴でもあるが、何とも複雑な気分だ。



それから──


別にこれとは何の関係も無い話だが……明日からはちょっと早歩きでやや遠回りのルートで出勤しよう。うん。

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コメント

  • さんじゅーすい

    ネット広告でほんまにそういうやつありますからね、ネタでやってるのかと思うレベルのやつ笑

    1
  • 美浜

    胃に大穴が空いて吐血して死ぬって、詐欺とかそういうレベルじゃないw

    2
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