引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

33話 ハーデスは見た

予想に反して、俺はその後の試合も特に苦戦することなく勝利し、2日目が終了した。

そしてもちろん、リヒトも何ら苦戦することなく勝ち上がり、俺たちは3日目の決勝戦で戦うことが確定した。


終わってみれば、俺とリヒトの初戦の相手、エリザとハーデスの実力だけが明らかに群を抜いていた。


改正ルールや組み合わせの妙もあり、今年の剣術大会は大盛り上がり。
都としても多額の興行収入が得られて、ルール改正の思い切った英断は大成功と言ったところか。

俺としても、意外な強敵と戦うことができて大満足である。
なぜかエリザにも妙に気に入られてしまったようで、思わぬところで思わぬ友人ができてしまった。


ともかくリヒトとの約束通り、俺はここまで勝ち上がった。
後は、決勝に備えて万全のコンディションを整えるのみだ。



そしてそんな2日目の夜、俺は何となく眠れずに街を散歩していた。

柄にもなく緊張しているのだろうか?それとも決勝への期待感か?
自分でもよくわからないが、こういう時は色々と考えるよりも、散歩でもして気分転換するのが一番良い。


剣術大会開催中とあって、街には様々な屋台、出店が出店されている。

「そう言えば、少し腹が減ったな……。」

うまそうなにおいに誘われるように、俺はその内の1つの屋台に入った。


「いらっしゃい──おや、これはこれは……決勝進出されたガイストさんじゃありませんか。」

「お陰さまでな……焼き鳥のモモをたれで2本と、ネギ串を1本くれ。」

「あいよ。……ガイストさん、たしか去年も大活躍でしたね。息子もあなたのファンで──」


焼き鳥を焼くうまそうな音を聞きながら店主と世間話をしていると、更に1人入店する者がいた。


「あぁー、腹減ったなぁー……。親父おやじぃ、まだ残ってたらいつもの頼む。……うんめぇーんだよなぁー、ここの焼き鳥はよぉ……。がはははは。」

酒焼けしてガラガラの、この陽気な声の主は──


「んー?……おんやぁ?あんちゃん、ひょっとして決勝進出したガイストかい?……俺も剣術大会出てたんだけどさぁ、知ってるかい?ハーデスってんだけどもよぉ。」

そう、リヒトと初戦で戦ったあのハーデスだ。


「ああ、もちろん知ってるぜ。あんたとリヒトの試合見させてもらったからな。……剣技で闘技場に地震を起こすとは、あの技とんでもなかったな。それに力場を形成しながら大剣を振り回すってのもただ者じゃねえ。」

「そう言ってもらえりゃうれしいことこの上ないねぇ。……まぁ、あっさり負けちまったんだけどもさぁ、がはははは。」


そう言って俺の隣に座ろうとしたハーデスだったが、腰掛けた瞬間椅子がミシミシ音を立ててひん曲がってしまった。


慌てて近くにあった1人掛け用の椅子をこっちに運んできて座り直すハーデス。

俺とハーデス合わせて200kg近くありそうだからな……無理もない。



それから俺たちは、焼き鳥を食いながら剣術大会の話題でしばし盛り上がった。

話題の中心は半ば必然的に、ハーデスの初戦の相手であり、また次の俺の対戦相手でもあるリヒトのことになる。
お互いの意見で一致しているのは、やはりリヒトは強いということ。


そんな中、しばらくしてからハーデスが真剣な顔つきで語り始める。


「なぁ、あんちゃん。あの優男のにぃちゃんとの戦いでさぁ、……オレ見ちまったんだよ。信じてくれるかはわかんねぇんだけどもよぉ。」

「あんたは嘘をつくような人じゃないだろう?信じるぜ。ぜひ話してみてくれないか?」


「それなら──」

と言ってハーデスは一息つく。
そして、一呼吸置いた後にゆっくりと語り始めた。


「──オレのあの技をさぁ、にぃちゃんが軽々受け流したときに……あぁ、確かに見えた。ありゃー確かに、あの英雄の剣聖様だった。一瞬だけだども、にぃちゃんの背後に肖像画そっくりの剣聖様の姿がはっきりと見えたんだわ。……そんでさぁ、オレ思ったんだわ。あのにぃちゃんの異常な強さの理由ってもしかして──」

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コメント

  • さんじゅーすい

    万一そうでも、あれはワンチャンと言えるのかどうか笑

    1
  • 美浜

    リヒトも異世界転移者なわけだし、チートの一つや二つは持ってるよね。

    ルナは······アンデット相手ならワンチャンあるw

    2
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