引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
26話 またあなたとしたいな
空高く飛び上がったエリザは、ちょうど太陽を背にした位置で静止した。
日光が眩しくてエリザを直視するのが難しくなる。
「悪く思わないでね。普段はこんなことしないんだけど……あなただからするんだよ?さっきから嫌な予感がとまんないんだよ。疼いて疼いて頭変になっちゃいそう。」
「いや、ここは戦場だからな。環境をうまく利用して戦うのも立派な戦術だよ。何も間違っちゃいないさ。……ただ、少し決断するのが遅かったな。今の俺には、もうそんな小細工は通用しねーぜ。」
「あはは、単なる減らず口なのか何か策でもあるのか……じゃああたしのことぶった切ってみてよ!あたしもあなたの首、かっ切ってあげるから!もうあたし我慢できないから、いっちゃうよ?」
薄ら笑いを浮かべ、頬を紅潮させ、狂気に満ちた目で俺を見下ろしながらエリザはそう言った。
これまでの発言の数々からして、エリザは相当な戦闘狂のようだ。
いや、むしろ戦闘狂というより──
本来の性的なもの以外に対し、性的興奮を覚える人間はまれにいるらしい。
そして、どうも見ている限り、エリザは戦闘行為に性的興奮を覚える人間のように見える。
なんせ、最後のいくと言ったときの恍惚感溢れる表情は、どう見ても両方の意味で言ってるとしか──
というか、つまりエリザにとって戦闘は性欲を満たす手段で、俺がその相手で……ん?それって──
いやいや、今は妙なことを考えてる場合じゃなかったな。
念のため言っておくと、俺はエロくないぞ?あくまでも、エリザがなんかエロい顔でエロいこと言っただけなんだ。
……って、なんかこれ前にも似たようなことあった気がするな。
ともかく今は戦闘に集中しなければ。
エリザの周囲に力場が展開され、一瞬で魔法が発動する。
それまで以上に強力な風がエリザを包み込んだ。
「あたしの全力、からだ全部で味わってっ……!」
ほんの一瞬、今度は巨大な、そしてとても鮮やかな緑色の力場がエリザの周囲へと展開され、また一瞬で消える。
瞬間、暴風を纏ったエリザが恐ろしい程のスピードで、空中からこちらへ突撃してくる。
エリザの背後には依然太陽がある。
日光が眩しく直視するのも難しい状況。
少し前の俺なら絶望的と言える状況なのだが──
新たな力の目覚め。
感覚の異常な鋭化と拡大により、意識を集中することで、今の俺は闘技場全体があたかも自分の一部であるかのように感じ取ることができる。
エリザの起こす風も、全体の気流の流れも、エリザの息遣いさえも、今の俺には手に取るようにわかる。
エリザの位置も、これからの動きも、全て。
「ぅ゛あぁぁ゛ア……っ!」
深い地の底から吹き上がるような、叫びともうめき声ともつかない奇声とともに、殺気のこもった短剣を俺の首筋目がけて振り抜くエリザ。
エリザ自体の尋常ではないスピードに、振り抜くスピードが加算され、普通なら決して回避不能な速度だ。
だが、攻撃の軌道を完全に読んでいた俺は最小限の動きでそれを回避する。
短剣があっけなく空を切った瞬間、俺とエリザの目が合う。
そのほんの一瞬の内に、エリザの表情は驚きから、また別な恍惚の表情へと変わった。
きっと負けを覚悟したのだろう。
なぜなら、下段から振り上げた俺の剣が、もうすでにエリザの腹部を深く切りつけていたのだから。
「がはっ……!」
切りつけられた衝撃と、風の制御を失ったエリザはそのまま地面に叩きつけられ、闘技場の端まで勢いよく転がっていった。
なぜか妙に手応えが軽かったが、あの様子ならまともに入ったのは間違いない。
一瞬の出来事に、観客席は静まり返っていた。
劣勢だった俺が、たったの一瞬で逆転してしまったのだから無理もない。
実際に剣を交えていたエリザは、俺の変化に気付いていたようだが、観客にはそんなことはまずわからないだろう。
俺は剣を肩に担ぐと、その静寂の中、足音を立てエリザの元へ歩いていった。
「……あははは、今の、完全に読んでたよね?全力だったのに……この短い時間に急に強くなるなんて……。あたしの勘もやっぱ捨てたもんじゃない……。」
「あんたのお陰だよ、エリザ。あんたの無茶苦茶な強さが俺を成長させてくれた。……それより、まだ意識はあるようだが、どうする?続けるか?」
答えはわかっているものの、一応聞いてみる。
「……冗談。今日はもうムリ……でも、またここで、あなたとしたいな……試合。いいでしょ?……ね?」
「そうだな、来年もまたここで会おうぜ。……立てるか?」
俺はエリザに手を差し伸べ、その手をエリザが握り返す。
そしてそのままエリザの腕を俺の肩に回し、俺たちは歩き出した。
「勝者、『魔女の弟子』ガイスト!」
審判の声が響き渡り、歓声が闘技場を包み込んだ。
日光が眩しくてエリザを直視するのが難しくなる。
「悪く思わないでね。普段はこんなことしないんだけど……あなただからするんだよ?さっきから嫌な予感がとまんないんだよ。疼いて疼いて頭変になっちゃいそう。」
「いや、ここは戦場だからな。環境をうまく利用して戦うのも立派な戦術だよ。何も間違っちゃいないさ。……ただ、少し決断するのが遅かったな。今の俺には、もうそんな小細工は通用しねーぜ。」
「あはは、単なる減らず口なのか何か策でもあるのか……じゃああたしのことぶった切ってみてよ!あたしもあなたの首、かっ切ってあげるから!もうあたし我慢できないから、いっちゃうよ?」
薄ら笑いを浮かべ、頬を紅潮させ、狂気に満ちた目で俺を見下ろしながらエリザはそう言った。
これまでの発言の数々からして、エリザは相当な戦闘狂のようだ。
いや、むしろ戦闘狂というより──
本来の性的なもの以外に対し、性的興奮を覚える人間はまれにいるらしい。
そして、どうも見ている限り、エリザは戦闘行為に性的興奮を覚える人間のように見える。
なんせ、最後のいくと言ったときの恍惚感溢れる表情は、どう見ても両方の意味で言ってるとしか──
というか、つまりエリザにとって戦闘は性欲を満たす手段で、俺がその相手で……ん?それって──
いやいや、今は妙なことを考えてる場合じゃなかったな。
念のため言っておくと、俺はエロくないぞ?あくまでも、エリザがなんかエロい顔でエロいこと言っただけなんだ。
……って、なんかこれ前にも似たようなことあった気がするな。
ともかく今は戦闘に集中しなければ。
エリザの周囲に力場が展開され、一瞬で魔法が発動する。
それまで以上に強力な風がエリザを包み込んだ。
「あたしの全力、からだ全部で味わってっ……!」
ほんの一瞬、今度は巨大な、そしてとても鮮やかな緑色の力場がエリザの周囲へと展開され、また一瞬で消える。
瞬間、暴風を纏ったエリザが恐ろしい程のスピードで、空中からこちらへ突撃してくる。
エリザの背後には依然太陽がある。
日光が眩しく直視するのも難しい状況。
少し前の俺なら絶望的と言える状況なのだが──
新たな力の目覚め。
感覚の異常な鋭化と拡大により、意識を集中することで、今の俺は闘技場全体があたかも自分の一部であるかのように感じ取ることができる。
エリザの起こす風も、全体の気流の流れも、エリザの息遣いさえも、今の俺には手に取るようにわかる。
エリザの位置も、これからの動きも、全て。
「ぅ゛あぁぁ゛ア……っ!」
深い地の底から吹き上がるような、叫びともうめき声ともつかない奇声とともに、殺気のこもった短剣を俺の首筋目がけて振り抜くエリザ。
エリザ自体の尋常ではないスピードに、振り抜くスピードが加算され、普通なら決して回避不能な速度だ。
だが、攻撃の軌道を完全に読んでいた俺は最小限の動きでそれを回避する。
短剣があっけなく空を切った瞬間、俺とエリザの目が合う。
そのほんの一瞬の内に、エリザの表情は驚きから、また別な恍惚の表情へと変わった。
きっと負けを覚悟したのだろう。
なぜなら、下段から振り上げた俺の剣が、もうすでにエリザの腹部を深く切りつけていたのだから。
「がはっ……!」
切りつけられた衝撃と、風の制御を失ったエリザはそのまま地面に叩きつけられ、闘技場の端まで勢いよく転がっていった。
なぜか妙に手応えが軽かったが、あの様子ならまともに入ったのは間違いない。
一瞬の出来事に、観客席は静まり返っていた。
劣勢だった俺が、たったの一瞬で逆転してしまったのだから無理もない。
実際に剣を交えていたエリザは、俺の変化に気付いていたようだが、観客にはそんなことはまずわからないだろう。
俺は剣を肩に担ぐと、その静寂の中、足音を立てエリザの元へ歩いていった。
「……あははは、今の、完全に読んでたよね?全力だったのに……この短い時間に急に強くなるなんて……。あたしの勘もやっぱ捨てたもんじゃない……。」
「あんたのお陰だよ、エリザ。あんたの無茶苦茶な強さが俺を成長させてくれた。……それより、まだ意識はあるようだが、どうする?続けるか?」
答えはわかっているものの、一応聞いてみる。
「……冗談。今日はもうムリ……でも、またここで、あなたとしたいな……試合。いいでしょ?……ね?」
「そうだな、来年もまたここで会おうぜ。……立てるか?」
俺はエリザに手を差し伸べ、その手をエリザが握り返す。
そしてそのままエリザの腕を俺の肩に回し、俺たちは歩き出した。
「勝者、『魔女の弟子』ガイスト!」
審判の声が響き渡り、歓声が闘技場を包み込んだ。
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コメント
さんじゅーすい
ガイストには変人や変態を引き寄せる才能があるのかも知れません笑
嫉妬ではないかもですが、次回がそんな感じのネタです(^^)
美浜
ガイスト強いな~。
そして、エリザの相手がガイストw
リーシェに嫉妬されそう。