引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

16話 天才騎士リヒトの噂

「……ところでガイストさん。今年の剣術大会には出場なされないのですか……?都では前大会優勝者、『魔女の弟子ガイスト』がまだエントリーしていないともっぱらの噂ですよ……。」

「おいおい、エントリー者の情報は締め切り5日後まで公開されないはずじゃなかったか?個人情報だだ漏れじゃねーか、まったく。」

「……さすがに前回優勝者の情報ともなれば、人の口に戸を立てることも難しいでしょう。有名税と思って諦めるしかないでしょうね……。」

そこまできょとんとした様子で話を聞いていたルナがおそるおそるといった様子で口を開く。


「あのー、前大会優勝者って、もしかしてガイストさんが……?」

「……まだお聞きになっていませんでしたか?そうです、ルナさん。ガイストさんは去年の都の剣術大会、前回優勝者なのですよ。」

「まじですか!……そうだったんですね!ガイストさん、すごいです!えっ、てゆーかじゃあわたし、有名人と普通に同居とかしちゃってるわけじゃん?やばい、これやばい。普段から何かやけにゴリマッチョだなーとは思ってたけど、──」

同居という言葉に反応して、アイナが俺に視線を向ける。「……同棲ですか?」と聞かれてる気がした。
ただの口癖だろうが、同居「とか」なんてルナが言うからだぞ。何か他にいかがわしいことまでしてるみたいじゃないか。

俺は誤解だという意図を込めて小さく首を振る。了解したと言わんばかりに小さく頷くアイナ。
この間、わずか2.5秒である。俺たちの密かな意思疎通に気付くことなく、スイッチの入ったルナはぶつぶつと独り言を言っている。

まあその内こっちの世界に戻ってくるはずなので、ルナはこのまましばらく置いといて、アイナと続きを話すことにしよう。


「前回の優勝で、一応目標は達成出来てるからな。今年も出場するかどうか迷ってるところなんだ。」

「……なるほど。まあ前大会では、ガイストさんの実力は圧倒的でしたからね。……ですがガイストさん。今年はまたとてもお強い方が出場するという噂もあるのですが、それはご存知ですか?」

「いや、知らないな。村に住んでるとそう言う話にも疎くてな。」


「……半年ほど前、わずか13歳で都営騎士団の入団試験に合格した史上最年少の騎士。天才騎士リヒト。……その剣術の天才と言われる彼が、今大会に出場するそうなのですよ。」

まだ体も出来上がっていないだろう13歳の子供が騎士団員に?
それはまたとんでもない話だ。


「……もう一つ面白いお話があります。その『天才騎士リヒト』は、前回優勝者である『魔女の弟子ガイスト』との剣術大会における戦いを強く望んでいると公言されているということです。」

「……剣術大会への出場要件を考えれば、彼とまともに渡り合えるのはガイストさん位だろうと、皆そう予想しています。そしてこのままだとリヒトさんの一人勝ちは確実だと。……それで最初のお話、ガイストさんがまだエントリーされていないことを残念がる声が多いという内容につながるのです。」

「……ガイストさん。戦ってみたいとは思いませんか?未知の強敵と。そして知りたいとは思いませんか?自分自身の限界とその先にあるものを。」


アイナの話を聞いて、俺は胸が躍るのを感じた。
実力差がありすぎるマーヤ相手では稽古をつけてもらうことしかできないが、そのリヒト相手だと対等な勝負ってやつができるかも知れない。

「そういうことなら、勝負を挑まれてるなら受けない訳にはいかねーよな。……面白い情報ありがとうアイナ。後でエントリーしとくぜ。」

「引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く