引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

15話 資格取るなら

あの後リーシェを誘いに行ったところ、今日は用事があって来られないとのことだった。
ということで、町へは俺とルナの2人で行くことにした。


出発間際、ルナがリーシェに何か耳打ちしてリーシェが顔を赤くしてたがあれは何だったんだろうな。
まあ女同士、俺には言えない話があってもそれは当然だし詮索する気はないが。

ともかく、例のエロルナ事件あたりからひときわルナとリーシェが仲良くなったように見え、俺もうれしい。
世話焼きのリーシェのことでもあるし、もしかしたら何かとルナの相談相手にでもなってくれているのかも知れない。


「ついに到着ですねガイストさん!意外と近いんですねー。……結構おっきいんだ……うちの田舎より都会かもしんないこれ。」

「そこを抜けた突き当たりを右に曲がったとこに、魔血晶交換所の出張所があるんだ。まずこの荷物をさっさと金に換えちまおう。着いてきてくれ。」

「でもなんか思ったより人多くて……迷子にならないように手、つないじゃっててもいいですか?」

「ああ、構わないぜ。」

俺は魔血晶の袋を左手に持ち直すと、右手をルナに差し出した。


雑踏の中を歩き、俺たちは交換所へと辿り着いた。
昼間に町に来ることはあまりないのだが、夕方に比べ人はかなり多い。

「世話になるな。今日も交換の方を頼みたいんだが……ん?昼にあんたが受付をしてるのは珍しいな。」

いつもは夕方にしかいない、例の胸のでかいねーちゃんが珍しく昼に受付をしていたので少し驚いてしまった。

「……毎度ありがとうございます、ガイストさん。今日はお昼の本業がお休みなのですよ。……ところでガイストさん、そちらは……?」

「ああ、最近うちの村に来たルナだよ。前に魔法を覚えたい連れがいるって言ってただろ?あれがルナのことだったんだよ。」

「あぁ、あの時の……ルナさんはじめまして。私はこの交換所で受付をしているアイナと申します。……本業は魔法学校中等部の教師をしていて、ちょうどあなたぐらいの歳の子ども達に魔法を教えているのですよ。」

このねーちゃんアイナって名前だったのか。俺とは正式に自己紹介とかしたわけじゃなかったから、名前までは知らなかったな。
それに魔法学校の教師というのも初耳だ。
魔法学校の教師になるのはかなり難しいと聞いたことがあるんだが……実はすげー人だったんだな。


「はじめまして、アイナさん。さっきガイストさんも紹介してくれましたけど、わたしルナって言います。」

「……あのあの、魔法学校の教師ってすごいですね!わたし、魔法使いに憧れてるから尊敬しちゃいます。それでわたし、使えるようにはなったんですけど、まだちゃんとコントロールできないから、今まさにがんばって訓練してるとこなんです。毎朝ですよ?毎朝。もぉめっちゃスポ根してますよ、マジで。」

初対面のアイナにも、容赦のないルナ節が炸裂してしまう。
しかしさすがの女教師アイナ、変わった子の扱いには慣れているのか、意味不明な部分は適当にスルーして話を続けていく。

「えっと、……すぽこん、ですか?……いえ、まあ、毎日の訓練を欠かさないのはとても良いことです。……ルナさんからはとても前向きな印象を受けますし、きっとすぐに成長することでしょう。」

「……そうですね、魔法使いを目指しておられるなら、少し小話でもしましょうか。ルナさん、魔法使いにはいくつかの資格があることはご存知ですか……?」

ルナと話しながらも、そこそこ速い速度で換金作業を進めるアイナ。
動く度にぷるんと揺れる胸に、つい目がいってしまう。
大きさで言えばリーシェぐらいのが1番好みなんだが、まあこれは男の性ってやつだ。

ちなみに資格があること自体は一応俺も知ってるが、詳しくは知らないってこともあってルナには話してなかったな。

「いえ、知らないです……例えばどんなのがあるんですか?」


「例えば……そうですね。……広く知られているように、この魔血晶は加工され魔導具になる用途が一例としてあるわけですが、それを一定規模以上の事業として行うには、製造所ごとに魔血晶加工取扱技術者という資格の保有者を置かなくてはいけないことは、あまり知られてはいません。」

頷きながら聞いていたルナは、納得した様子で答える。

「そうなんですね……わたしの故郷って言うか、そこでも同じようなのがあったから、なんかイメージはすごく伝わります。難しい試験受かったら色んな仕事できる、みたいな。」

「……その通りです。資格は何らかの専門的な仕事に従事するために必要なもの。……ですがルナさん。資格にはそれ以上の意味もあると、私は考えているのですよ。」

「それ以上の意味、ですか?」

そこでアイナは少し手を止め、真っ直ぐにルナを見つめて話し始めた。
つまりこの先こそが、アイナがルナに対して本当に伝えたかった内容ということか。


「……目標を持って努力し、合格することで、本来形を持たないその努力の成果というものを、はっきりとした形にできるということです。魔法使いとしての自分が、世界共通のものさしで測ってみて、今現在どの程度の位置にあるのかがわかる。……それは自信と、新たな高みへと挑戦するためのモチベーションを与えてくれます。……想像してみて下さい。難関と言われる資格を取得出来たときの自分自身の姿を。そのときの喜びを。」

そう話すアイナの瞳の奥深くには、普段の気だるそうな雰囲気の中に、隠された情熱を宿しているように見えた。
きっとこれは、自身の経験から語っている言葉なのだろう。

そして、努力の成果を形に……今朝俺が考えていたのと同じことが、思わぬ場面で出てきて俺は少々驚いてしまった。
とは言え、剣の道も魔法の道も結局は自分との戦い。本質は同じなのだから当然と言えば当然なのかも知れない。


「……そのための、魔法使いとしてどこまでも成長していくための手段として資格を利用する。さらに副産物として、何らかの専門的な仕事も行えるようになる。そういう考え方もできると思うのです。」

アイナの話にすっかり聞き入っているルナは、なるほどといった様子で頷いている。
興味を引かせて、そこからやる気を出すような方向に話を持って行く。アイナは教師と言うだけあって話がうまい。


「アイナさん、わたし──」

目を輝かせてルナが話し始める。
もはや次の言葉は聞くまでもなかった。
そう、ルナならきっと──

「わたし、資格取るの目指してみようと思います!」

ルナの決意の言葉を聞いたアイナは、ゆっくり頷きながらやさしく微笑んだ。

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