引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─
14話 かわいいけど付き合うというのは何か違う
──じゃあ、私今日からガイストのお姉さんになるよ!ずっとずっと、ずーっと一緒だからね!
──何度だって話しかけるし、笑いかけるよ。だって、ガイストが心の中でほんとはずっと泣いてるの、私わかるもん。
──やっと名前呼んでくれたね!……ねぇ、もう一回呼んでくれないかなぁ、えへへ。
──だいじょうぶだよ、ただの風邪だってマーヤ様も言ってたでしょ……。うつしちゃいけないからここにいちゃダメだよ……。
──もぉー、だから言ったでしょ。今度は私が看病する番だからね!治るまでずっと一緒にいたげるよ!
──────────
「……懐かしい夢を見ちまったな。」
幼い頃に両親を亡くした俺は、天涯孤独になった……はずだった。
でもそうじゃなかった。ただそう思い込んでいただけだった。
差し伸べられた手はいつもそこにあった。
幼い手を一生懸命に伸ばして、深い暗闇から俺を救い出そうとしてくれていた。
最初はその手を握り返す勇気すら持てず、強く拒絶したことすらも頻繁にあった。
握り返すということは、当時の俺にとってはまた失うかも知れないってことを意味していたからだ。
それなら最初から無い方がいいと、俺は思っていた。
それでもリーシェは諦めなかった。いつも眩しいぐらいの笑顔で、何度も何度も手を差し伸べ続けてくれた。
そんなリーシェの姿が、俺の心を少しずつ変えていった。
今の俺がいるのはリーシェがいてくれたからこそだ。
そして俺は、もう二度と家族を失わないため、守るための力を手にすると誓い、強くなることを求め続けている。
こんな夢を見たのは都の剣術大会の申込み期日が迫っているからだろうか。
前大会、初出場にして俺は優勝することができたが、それは守るための力を得るということについて、1つの節目を迎え、成果を形にできた証でもあると言える。
目標は昨年時点で果たされているため、今年も出場するかどうかは正直迷うところだ。
「あ、おはようございますガイストさん。朝日が眩しいですねー。」
外の空気を吸いに出たところ、ルナが既にいたようで、駆け寄って来て俺に挨拶をしてくれた。
俺たちの間では完全になかったことになっている例のエロルナ事件から1ヶ月。
ルナとは特に気まずい空気になるようなこともなく、それまで通りにやっている。
あまりにそれまで通りすぎて拍子抜けしてしまうほどだったが、気まずくなるのは困るし、逆に変なことになっても困るしな……。
というか、ルナとそういう関係になるとかイメージが全く沸かん。
かわいいのはかわいいんだが、どっちかというと小動物的なかわいさなんだよな、ルナは。
側に置いて愛でたいとは思うが、恋人として付き合うというのはなんか違う。
「おはよう、ルナ。こんな早くから魔法の訓練か?精が出るな。」
「そーなんですよ!マーヤちゃんの教えてくれたのずっとやってるんですけど、効果ばつぐんでびっくりしちゃいますよ、マジで。ほらあれ、草タイプにむし技みたいな?」
「最初の頃はせいぜい3秒ぐらいが限界だったのに、1ヶ月で最大30秒ぐらいまでいけるようになったんですよ。当社比10倍ってやばくないですか?100円が1000円になったようなものですよ?おにぎりがチャーシュートッピングしたラーメンに変わったぐらいのヤバさですよ?」
今日もルナは絶好調のようだ。話の9割は何を言ってるのか理解できんが、こういう時は、大体ほぼ関係ないことを言ってるだけなので特に支障はない。
が、すこぶる機嫌が良さそうなことだけはものすごく伝わってくる。
エロルナ事件のこともあって、経緯を聞いてない俺には3秒と30秒が一体何のことなのかもよく分からなかったが、とりあえず魔法の訓練が上手く行ってるらしいのは何よりだ。
直接聞くことはできないが、訓練というのは十中八九エロルナ化の克服だろう。
エロくなるのはともかく、1回魔法を使っただけでしばらく動けなくなるのは、魔法使いとしてあまりに致命的すぎる。
「がんばってるんだな。ルナなら相当すごい魔法使いになれそうで俺も楽しみだ。……それはそうと、今日は1つルナに頼みたいことがあるんだが、いいだろうか?」
「何ですか?わたしにできることなら何でもオッケーです!」
「最近商人が村に来なかったんで魔血晶がそこそこ貯まって来ててな。そいつを町まで持って行って金に交換したい。もし空いてるなら手伝ってくれないか?」
魔血晶は俺一人でも十分運べる量なんだが、せっかくなのでルナも一緒に連れて行って町を案内してあげたいと思った。
つまり用事の方はただの口実だ。ルナはまだ町へ行ったことがないので、きっと喜んでくれるだろう。
「それぐらいならお安いご用です!町かぁ、わたし行くの初めてなんですよね。どんなのか楽しみだなぁ……。ファンタジーの町、やっぱ武器屋とかあるのかな?」
「都ほどじゃないが、ここよりはよっぽど色んなもんはあるな。後でリーシェも誘って、行けそうなら3人で行ってみるか。」
ルナは楽しみで仕方がないという様子。
期待に満ちた目で俺を見上げる姿はまさに小動物的かわいさ。これだから、ルナにはつい何かとしてあげたくなっちまう。
──何度だって話しかけるし、笑いかけるよ。だって、ガイストが心の中でほんとはずっと泣いてるの、私わかるもん。
──やっと名前呼んでくれたね!……ねぇ、もう一回呼んでくれないかなぁ、えへへ。
──だいじょうぶだよ、ただの風邪だってマーヤ様も言ってたでしょ……。うつしちゃいけないからここにいちゃダメだよ……。
──もぉー、だから言ったでしょ。今度は私が看病する番だからね!治るまでずっと一緒にいたげるよ!
──────────
「……懐かしい夢を見ちまったな。」
幼い頃に両親を亡くした俺は、天涯孤独になった……はずだった。
でもそうじゃなかった。ただそう思い込んでいただけだった。
差し伸べられた手はいつもそこにあった。
幼い手を一生懸命に伸ばして、深い暗闇から俺を救い出そうとしてくれていた。
最初はその手を握り返す勇気すら持てず、強く拒絶したことすらも頻繁にあった。
握り返すということは、当時の俺にとってはまた失うかも知れないってことを意味していたからだ。
それなら最初から無い方がいいと、俺は思っていた。
それでもリーシェは諦めなかった。いつも眩しいぐらいの笑顔で、何度も何度も手を差し伸べ続けてくれた。
そんなリーシェの姿が、俺の心を少しずつ変えていった。
今の俺がいるのはリーシェがいてくれたからこそだ。
そして俺は、もう二度と家族を失わないため、守るための力を手にすると誓い、強くなることを求め続けている。
こんな夢を見たのは都の剣術大会の申込み期日が迫っているからだろうか。
前大会、初出場にして俺は優勝することができたが、それは守るための力を得るということについて、1つの節目を迎え、成果を形にできた証でもあると言える。
目標は昨年時点で果たされているため、今年も出場するかどうかは正直迷うところだ。
「あ、おはようございますガイストさん。朝日が眩しいですねー。」
外の空気を吸いに出たところ、ルナが既にいたようで、駆け寄って来て俺に挨拶をしてくれた。
俺たちの間では完全になかったことになっている例のエロルナ事件から1ヶ月。
ルナとは特に気まずい空気になるようなこともなく、それまで通りにやっている。
あまりにそれまで通りすぎて拍子抜けしてしまうほどだったが、気まずくなるのは困るし、逆に変なことになっても困るしな……。
というか、ルナとそういう関係になるとかイメージが全く沸かん。
かわいいのはかわいいんだが、どっちかというと小動物的なかわいさなんだよな、ルナは。
側に置いて愛でたいとは思うが、恋人として付き合うというのはなんか違う。
「おはよう、ルナ。こんな早くから魔法の訓練か?精が出るな。」
「そーなんですよ!マーヤちゃんの教えてくれたのずっとやってるんですけど、効果ばつぐんでびっくりしちゃいますよ、マジで。ほらあれ、草タイプにむし技みたいな?」
「最初の頃はせいぜい3秒ぐらいが限界だったのに、1ヶ月で最大30秒ぐらいまでいけるようになったんですよ。当社比10倍ってやばくないですか?100円が1000円になったようなものですよ?おにぎりがチャーシュートッピングしたラーメンに変わったぐらいのヤバさですよ?」
今日もルナは絶好調のようだ。話の9割は何を言ってるのか理解できんが、こういう時は、大体ほぼ関係ないことを言ってるだけなので特に支障はない。
が、すこぶる機嫌が良さそうなことだけはものすごく伝わってくる。
エロルナ事件のこともあって、経緯を聞いてない俺には3秒と30秒が一体何のことなのかもよく分からなかったが、とりあえず魔法の訓練が上手く行ってるらしいのは何よりだ。
直接聞くことはできないが、訓練というのは十中八九エロルナ化の克服だろう。
エロくなるのはともかく、1回魔法を使っただけでしばらく動けなくなるのは、魔法使いとしてあまりに致命的すぎる。
「がんばってるんだな。ルナなら相当すごい魔法使いになれそうで俺も楽しみだ。……それはそうと、今日は1つルナに頼みたいことがあるんだが、いいだろうか?」
「何ですか?わたしにできることなら何でもオッケーです!」
「最近商人が村に来なかったんで魔血晶がそこそこ貯まって来ててな。そいつを町まで持って行って金に交換したい。もし空いてるなら手伝ってくれないか?」
魔血晶は俺一人でも十分運べる量なんだが、せっかくなのでルナも一緒に連れて行って町を案内してあげたいと思った。
つまり用事の方はただの口実だ。ルナはまだ町へ行ったことがないので、きっと喜んでくれるだろう。
「それぐらいならお安いご用です!町かぁ、わたし行くの初めてなんですよね。どんなのか楽しみだなぁ……。ファンタジーの町、やっぱ武器屋とかあるのかな?」
「都ほどじゃないが、ここよりはよっぽど色んなもんはあるな。後でリーシェも誘って、行けそうなら3人で行ってみるか。」
ルナは楽しみで仕方がないという様子。
期待に満ちた目で俺を見上げる姿はまさに小動物的かわいさ。これだから、ルナにはつい何かとしてあげたくなっちまう。
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