引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

10話 ルナさん魔物討伐をする

ルナが魔法を習得してから1週間。
俺とルナは2人で魔物討伐に来ていた。

ルナにとってはこれがデビュー戦となるのだが、特に緊張している様子がないどころか非常に楽しそうだ。
大した肝だ。俺は最初の頃はいつ殺されるかとビクビクしてたもんだが。

リーシェは見送る時、妙に心配そうにしてたが、ルナがどうしてもと言うので折れた様子だった。
俺が守るからと言っても、そこは全然心配してないと言ってたが、じゃあ一体何をそんなに心配してたんだろうな?まあ考えてわかるもんでもないが。

「ガイストさん。基本的なことなんですけど、そもそも魔物討伐って何のためにするものなんですか?」

考え事をする俺に、ルナが素朴な疑問をぶつけてきた。
ルナは異世界の人間なので、この世界では常識的なことでもまだ知らないことが沢山あるのは当然……なんだが、あまりにルナがこの世界に馴染んでしまっているので、しばしばそのことを忘れてしまう。

「ああ、ルナにはまだ説明してなかったな。目的は大きく分けて2つ。1つは魔物の死骸から魔血晶を採取すること。もう1つは人間の縄張りがここまでだと魔物に認識させ、居住地の安全を確保するためだ。」

「なるほど……それでその魔血晶って言うのは、あのガイストさんがいつも持って帰って来るあの赤色の石みたいなのですか?」

「そうだ。魔物はその名の通り魔力で生きる生き物だ。だから体内には魔力のかたまりが蓄えられている。物質として存在する魔力のかたまりは基本的には魔物からしか採取出来ないから、それは売り物としての価値を持つってわけだ。」

「へぇー、……村を守って、ついでにお金も稼げるってまさに一石二鳥ですね。」

「そういうこった……お、早速一匹見つけたぞ。そこの岩陰だ。手始めにルナがやってみるか?もし失敗しても俺がフォローするから安心してやってくれ。」

真剣な眼差しでこくりと頷いたルナは、両手で杖を構え、目を閉じて息を大きく吸った。

ルナの周囲に力場が形成され、鈍く赤い光と、特有の低い音を発している。
それに気付いた岩陰の魔物が、身の危険を感じたのかそこから逃げだそうとする。

が、もう遅い。

次の瞬間、ルナが目をかっと見開き、風を切り裂く音とともに鋭く杖を振り下ろすと、轟音と共に魔物が発火し、ほんの一瞬、眩い光と熱を放ったかと思えば、骨すら残さずにそのまま灰となって霧散した。

そして、かつてそこに魔物が存在した証として、魔血晶が音を立てて地面に落ち、少しだけ転がったのちに動きを止めた。


「……とんでもねぇな、歴1週間の初心者が使う魔法の威力じゃねーぞありゃ。」

そう言ってルナを見た俺は、当然満面の笑みを浮かべ、元気に、そして得意げに喋るいつものルナを想像した訳だが──

「どうした、ルナ!大丈夫か!?」

ルナは両手で自分自身の身体を抱えるようにして、ぺたりと地面に座り込んでいた。
はぁはぁと息は荒く、頬は紅潮している。
一瞬視界に映ったルナの目は、少し潤んでいるように見えたが、俺の視線に気付いてすぐに顔を背けてしまったためよくは判らなかった。

「だいじょうぶ……だいじょうぶです。……練習だとうまくできてたのに、うぅ……。」

これは魔法の使いすぎか?よくは知らないが、全身を鈍い痛みが走ると聞いたことがある。しばらく経てば治るそうだが、それまで何か俺に出来ることは──


せめてこれぐらいはと、ルナの背中に指を触れた瞬間だった。


「……あっ、ダメですガイストさん、やだ、だめだめ、今触っちゃ……あっ背中、背中だめ……あっ、これやば、また、……ひっ!……うぐ、ぅ……。はぁ、はぁ。」


ん?


「うぅ……はぁ、はぁ……だめ、おかしくなっちゃう……からだ、おかしく……ひっ……!ぅあ……。」


いや待て。待ってくれ。俺はただルナの痛みを和らげようと背中をさすっただけなんだ。
それが何でこんな声を出して、身体をびくつかせているんだ。
というかルナの声ってこんなに色っぽかったか?

いや、自分に嘘を付くのはやめよう。誤魔化しても誤魔化しきれない事ってのは世の中にはあるもんだ。
そう、これはもう完全にあれだ。アレがあれでああなってこうなった。ならば恐らくあれもあんなことになっているに違いない。
否定しようにもそのための材料がなさ過ぎる。
なぜならこのルナの表情からして、もはや完全に──

女 の 表 情かお

一言で言うと、エロい。
男なら10人中10人がエロいと答えるだろう。確実に。なあそうだろう?みんな。俺が特別エロい訳じゃない。今のルナがエロすぎるんだ。
普段のルナのキャラとの差が、余計にエロさを際立たせている。全く意識してなかったそういうの・・・・・とはほど遠い女友達が、というシチュエーションも……ルナ流に言うとやばい。

というかまたって何だ?そういうことなのか?つまりそういうことなのか?ここまでなるものなのか?なあ、誰か教えてくれよ。
もう一回触ったら、またがまたでまたなのか?もちろんそんなことはできないが。

いや、とにかくこの状況は精神衛生上非常にまずい。ルナは当然のことながら、俺も。
というかこないだの感動の物語はどこへ行った?あそこからルナが魔物討伐で輝かしい戦果を上げて、またも俺たちが祝福する流れだったんだが?それがどこでどう間違えたのか、何故かこんなエロ展開になっちゃった訳だが?


と、色々と考えていると、寝そべってぐったりしていたルナが起き上がって、真っ赤な頬にとろんとした目で俺を見つめながらゆっくり話し始めた。


「ガイストさん……。」

「お、おぅ……。」

ルナ、頼む。そんなにエロい目で俺を見つめないでくれ。

「……見なかったことにして下さい。」

「……前向きに善処する。」


すまんルナ。恐らく無理だ。


こうして、ルナの魔物討伐デビュー戦は、気まずい空気のまま幕を閉じた。

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