引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

8話 くすぐり先生

「えいっ。」

「へ?何?……って、あははは!あは、……何するんですか、リーシェちゃ……あははは!ヤバいってこれ、マジであはは、ちょっギブギブ!ダメほんとこれやば、」

一気に距離を詰め、私はルナちゃんの脇腹をくすぐった。
どうもルナちゃんはくすぐったがりのようで、とんでもなく反応がいい。
これなら相当理解も早そうだ。

でも、なんか流石に反応が良すぎてちょっと心配になってきたので、私は早めに切り上げることにした。

「うぅー、急にくすぐるなんてひどいです……これ何てプレイ?女の子同士のくすぐりプレイ?いや、もはやアングラなIVイメージビデオ撮影までいっちゃってるよこれ。お、いいねぇー、もう1枚脱いでみよっか?みたいな……?いやいやそれダメじゃん、わたし18歳未満なのに……。」

「ごめんごめん、ここまでくすぐったがりとは思わなくって……でもルナちゃん朗報よ!くすぐったがりなほど魔法を使うきっかけが掴みやすいものなのよ。つまり、ルナちゃんは魔法に向いてる!」

はぁはぁ言いながらぐったりしていたルナちゃんだったけれど、私の言葉を聞いて急に目を輝かせてがばっと体を起こして喜びの声を上げた。

「ほんとですか!?やった、わたし、魔法に向いてるんだ!グッジョブ、わたしの脇腹……!でもどうして、くすぐったがりだと魔法に向いてるんですか?魔力がどかーんみたいなのと脇腹くすぐりの刑って、なんか全然イメージ違うんですけど……。」

ルナちゃんの疑問はもっとも。でも実際それが結びついてしまうのだから魔法は面白い。
私は魔法学校で学び、自分なりに理解できた内容をルナちゃんに説明する。

「くすぐったいのって身体の感覚になる訳だけど、その感覚って、実際にそこに物質として存在してるわけじゃないのに、自分自身にとってはあたかもその場所、その空間に、くすぐったい何かが存在してるかのように感じられる。ここまではわかってもらえるかな?」

「わかります!すっごい感じます!」

「やっぱりね、くすぐったがりだとこれがすぐわかっちゃう。じゃあ次はその感覚って本来実態のないものにね、あたかもそれが本当に物質として存在してるんじゃないかってぐらい、強いイメージの器を与えるの。心でその感覚の形や色や手触りを観察するって言うのかな?これが魔法習得の第一歩よ。それでこれがしっかり出来れば、魔法習得への道はもうほとんどクリアしたようなもの。」

「感覚を観察して形、色、手触りを捉える。なるほど……。それ、なんかわかる気がします!」

「理解が早くて助かるわ。そんなわけでルナちゃん、……わかるよね?」

「へ?」

私は両手を構えて再びルナちゃんの脇腹に狙いを定める。
この習得方法はくすぐらなきゃ始まらない。
問題は人並み外れたくすぐったがりのルナちゃんに、果たして耐えられるかってことだけど──

「ひっ!無理無理、むりですわたし、死んじゃう、死んじゃいますよぉー!」

両手で脇腹をガードして、早々にギブアップ宣言をしてしまうルナちゃん。

「うーん、どうしてもダメ?」

「ご、ごめんなさい!くすぐったいのはわたしほんとダメで……何か他の方法ってないんですか?」

他の方法……まあ、あるにはあるんだけど──

「うーん、……あんまり気は進まないし、ルナちゃんがくすぐったいのより嫌かも知れないけど……試してみる?いや、まあ私はいいんだけどね、する方だからさ……。」

「くすぐったいのより嫌な事なんてないです!ぜひそっちでおねがいします!ほんとヤバいんですってあれ。マジで死にますよ。死因レアすぎて翌日の新聞載っちゃいますよ。」

そうなると私も覚悟を決めなくっちゃいけない。
私の思いつく限り、くすぐりがだめなら後はあれしかないから。


くすぐったいと反射的に笑う。笑うと楽しいって感情が生まれる。ルナちゃんにはまだ説明していないけれど、この感覚と感情が同時に発生するというのが大事なポイント。
本当に必要なのは、くすぐることそれ自体じゃくて、何らかの方法を用いて感覚と感情を同時に発生させること。

だから、感覚と感情が同時に発生するなら、基本的には何でもいいはず。
問題はその方法が……ちょっと、ね……。


「ルナちゃん、きっとここからの訓練は生半可な気持ちじゃ乗り切れないわ。……それでも、最後までやり遂げる自信はあるかしら?」

いつもにも増して真剣な表情のルナちゃんは、強い決意の証であるかのように両手をぐっと握りしめ、真っ直ぐに私を見つめながらゆっくりと頷いた。

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