引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

4話 寝起きにトイレに行きたくなるのはこの世の常

「この子ねー、寝てるね!すっごい寝てるの!」

「やっぱり寝てるだけなのか……。」

「相変わらずすやすやだねー。マーヤ様みたいでかわいー。」

マーヤの診察により、やはりただ寝てるだということが判明する。
まあ、これで変な病気などの可能性が完全にゼロになったことには、素直に安心できる。

「起きない理由の前にまず説明するね。この子ねー、なんか異世界から来たみたいなの。すごいよねー、マーヤも初めて見たよー。」

「異世界……本当なんですか!?マーヤ様。」

「この子の魂が、この世界のもので構成されていないから、きっとそうなの。過去に遡れば、異世界から人が来た例は今までにもいくつかあったそうなのよ。その文献の例と、この子の魂の特徴は相当一致してるの。」

あまりに突拍子もない話に、俺とリーシェはただ頷くしかなかった。
俺はどうやらとんでもない拾いものをしてしまったようだ。

「それでね、世界と世界の間を移動したときに、構成の違う世界に入ったことでちょっとだけ魂が眩暈起こしちゃったみたいになって、いつもよりながーく寝ちゃってるだけみたいなの。」

詳しい部分はいまいち理解出来かねるが、マーヤが言うのならまず間違いはない。

「なるほど、大まかには事情はわかった。ありがとうマーヤ。……それで、いつ頃目覚めそうなのかはわからないだろうか。」

「今も魂が一生懸命元に戻ろうとしてるから、今日中にはたぶん……でもマーヤならすぐに目覚めさせることはできるの。魂のバランスを元に戻してあげればいいだけだからね。」

流石はマーヤ、原因を一瞬で特定しただけではなく、解決までしてしまえるとは。
とりあえず困ったときには、マーヤに聞いておけば大体間違いはない。

「いつもながら感心するわ……マーヤ様万能説ね。かわいいし何でも出来ちゃうし、ほんと好き。もぉ結婚しちゃいたいぐらい。」

リーシェが屈んで、胸の谷間にマーヤの頭が収まるようにぎゅっと抱きしめた。
そしてそのまま抱き締めつつ、右手でマーヤの頭を撫でる。優しく、撫でる。まさに、愛玩動物扱い。
リーシェはマーヤをこうするのが好きらしく、しばしば理由を付けて抱きしめている。

「えへへー……。リーシェちゃんありがとー……。」

顔を赤らめながらうれしそうな声をあげるマーヤ。マーヤもマーヤで、やっぱりこうされるのが好きらしい。
メンタリティは子供そのものだから、当然と言えば当然か。
マーヤのこのふにゃっとなった感じは、俺も素直にかわいいと思う。

「じゃあねー、やってみるよー。」

マーヤは両手を女の子の胸のあたりに当て、目を閉じた。
その両手が淡い青色の光を纏い、発光し始める。
そして、光は女の子の体を包み込み、優しく輝き、部屋の壁をわずかに青く照らし出した。


異世界から来た少女。一体どんな子なのだろうか。
リーシェが言ったように、俺もこの子からは大人しそうな印象を受けたのは確かだ。
そしてマーヤの話を聞き、今また神秘的なイメージを、新たにこの子に抱いている。

何せマーヤですら初めての出来事と言う。こんなことは滅多にあることじゃない。
俺はこの状況に、久しぶりに心からわくわくした期待感を感じていた。

もしかしたらこの子は何らかの使命を背負ってこの世界へとやって来たのでは?
ばばあの言う魔王復活が本当のことで、この子と俺とリーシェの3人で新たな魔王討伐の旅に出たり?


そして遂に、女の子がその目を開いた。
しかし──

「……んー?ぁあー、よく寝た。……うわやば、何これめっちゃオシッコしたいんだけど。やばいこれ、めっちゃ漏れそう。」

意外すぎる女の子の第一声に、俺たちは何も言葉が出なかった。


うん、まあ何だ。


そう、そうだとも。勝手に神秘的な少女だとか新たな物語の始まりだとか、そういう妄想をした俺が悪かったのだ。
異世界人と言えど、長時間寝過ぎればトイレにも行きたくなるのは当然なのだから。

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