引きこもり14歳女子の異世界デビュー ─変わり者いじめられっ子の人リスタート─

さんじゅーすい

2話 どっちが好み?なんて聞けない

「はぁ、はぁ、……やっと着いたか……。」

日が沈む前に村に帰ることができたこと、帰り道に魔物に遭遇しなかったことは奇跡としか言いようが無い。
元々ここ一番で幸運を発揮するタイプではあったが、今回は本当に助かった。

まあ女の子が結局道中目覚めなかったのは不運とも言えるが、こうして無事たどり着けたのだから十分上出来だろう。

ともかく、まず向かう先は我が家たる宿屋である。

宿屋の扉を開けリーシェの姿を確認した俺は、開口一番こう言った。

「リーシェか。どっか空いてる部屋があればこの子を休ませてやってくれ。怪我はないようなんだが道端で倒れていたんだ。」

「ガイスト!遅くまでご苦労さま、……ん?その子は……?」

リーシェはこの宿屋の娘で、俺の幼なじみでもある。
もっとも、俺も幼い頃に両親を失ってここに引き取られたから実際は姉弟みたいなものだが。

「遺跡付近で倒れてたからここまで背負って帰って来たんだよ。流石にほっとけねーだろ?」

言いながらリーシェの肩へと背中の女の子を預ける。

「遅いから心配してたんだけど、そんなことが……。部屋なら2階の奥が空いてるわ。お疲れのところ申し訳ないんだけど、もう少しだけ手伝ってもらえるかしら。」

「もちろんだ。せーのでいくぞ。」

こうして、俺はリーシェと二人で女の子を部屋のベッドまで運んだ。
ひと仕事終えた開放感から、床にどすりと座り込んでしまう。

今回の件、相当に苦労したものの、一人の人間の命を救えたことはやはり気分がいいものだ。
しかしながら、女の子が一向に目覚める気配がないのは少し気がかりではある。

「ねぇガイスト。この子、見つけた時からずっと眠ったままなの?大丈夫なのかしら……。」

「リーシェも気になったか。まさにその通りで起きる気配が全くねーんだな。」

「怪我はしてないようだし、顔色もいい。となると精神的なものかしら?……まあ、何にしても私たちじゃわからないし、明日にでもマーヤ様に診ていただくのが一番かしら。」

マーヤとは、裏山に住む魔女マーヤのことだ。100年前の魔王討伐及び封印において活躍した英雄の一人である。
当然年齢は100歳を超えている訳だが、見た目は異様に若い。というか幼い。ただの近所の子供にしか見えない。

だが紛れもない、現代に生きる英雄の一人であり、幅広い知識と底無しの魔力を持ち合わせた超越者バケモノである。
俺たち凡人がかなう相手じゃない。
見た目も喋りも、どう見てもただの近所の子供なんだがな。

「そうだな、今日のところは休んで明日また様子を見よう。単に寝不足なだけで、日が昇れば意外にひょっこり起きるかも知れねーしな。」

「それなんだけど……命を救った王子様がキスすれば、案外すぐにでも目覚めるかも知れないわよ?女の子はみんなお姫様だからね。」

「はぁ?何言ってんだ。見ず知らずの女の子に、しかも寝てる間に勝手にそんなことできるわけねーだろ。」

「あはは、だよねぇー。」

いたずらっぽく笑いながら冗談を言うリーシェに、俺はまたかと呆れ気味に答える。

が、急に真顔になったリーシェは俺をじっと見つめながら妙な問いかけをしてきた。

「でもさ、この子とてもかわいいと思わない?私とは全然違う大人しそうなタイプだよね。ガイストはこういう子、どう思う?かわいいと思う?」

リーシェとは長い付き合いだが、時折意図を理解しかねる時がある。
それを聞いて一体、リーシェになんの得があるというのか。
はぐらかしても割としつこく聞いてくるので、正直こうなった時のリーシェはちょっと面倒くさい。

女の子の身長は150cm前後か。小柄でか細い身体、そして肩口で切り揃えられた艶のある真っ直ぐな黒髪に、どこか陰のある印象を与える寝顔。見た目通り、背負った時も意外なほどに軽かった。
が、拾ってからここまでずっと寝たまんまなので、正直この子のことはよくわからん。とりあえず、都の魔法学校の制服に似た、ここいらじゃ見かけない服を着ているのは確かだ。

対してリーシェは身長162cmで、やや細身だが引き締まった身体をしている。腰まで伸ばした髪は鮮やかな金色で、それも明るいイメージを与えることに一役買っている。一言で言えば、活発な女の子だ。冗談をよく言って場を和ませる明るさも持ち合わせている。
家族同然に育っていなければ、俺の好みに完全にはまっていたかも知れない。

「まあ、かわいいと言えばかわいいかも知れんが……俺はもっと元気な方が好みだな。ただ、こういう子は無性に守ってやりたくはなるよな。ほっとけねーって言うか。無理して助けたのもそのせいかも知れん。」

「……そっかぁ……。うんうん。」

うれしそうな、残念そうな、複雑な表情を浮かべながらリーシェは頷いた。

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