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終末屍物語

マシュまろ

第2話「やるしかないよな」#1

・「♪〜♪〜♪〜」

 ここは、渚市の真ん中あたりにある渚リゾートタウンというリゾートホテルと様々な商業施設がくっついていた廃墟。だがここは廃墟という程荒れていなかった。それもそのはずで、ここにはまだ住んでいる者がいて、この住人達が毎日掃除しているのだ。
 そんなこの廃墟の住人でもある彼、灰崎春人はそんな廃墟の一部、リゾートホテルの厨房で料理をしていた。彼はゾンビだが、別に主食が人肉という訳ではない。彼も、そしてここに住んでいる住人、ゾンビ達も普通に生前の人間だった時のように、人間の食べ物を食べるのだ。そして、そんな友人の姿を机に肘をつけて見ているヤクがいた。

「お前…最近本当に上機嫌だな…」
「まぁな♪」

 実は春人はひさぎの生存を確認できたあの日から今日まで約2日間ずっとこの調子なのである。

「お前さぁ、やっぱり一回彼女さんとあった方がいいと思うぜ。」
「だーかーらー、いいの。俺は。アイツの生存が確認できただけでもハッピーなの。ほら、できたぞ。」

2人が会話をしている間に春人が作っていた料理ができていた。

「ほれ完成!『俺ちゃん特製鹿肉唐揚げ』!冷めないうちにどうぞ!」
「おぉ!うまそうじゃん!」

部屋いっぱいに唐揚げのいい匂いが広がる。すると、部屋の外からトトトトトッ!誰かの足音が聞こえてきた。
「ん。1番はやっぱりアイツか…」
「だろうな。アイツお前の飯の時クソ早いからな。来るの。」

2人がそんな会話をしていると厨房の入り口から、勢い良く小さな女の子が飛び出してきた。

「お腹すいたー!!いい匂いー!!」
「やっぱりお前か。パピー」

パピーと呼ばれたこの少女は春人やヤクと同じようなゾンビだが違う所がある。肘から下が鳥の羽根なのだ。もちろん空も飛べる。

「お前、相変わらず早いなー。」
「だって春人のご飯美味しいんだもん!」
「まぁな。それは否定しない。」
「ありがとよ。でも、褒めても何も出ないぞ。」

そんな会話をしていると、さらにもう1人厨房に入ってきた。

「よぉ!相変わらずうまそうな料理を作ってんな!」
「あ、ヤクザさん。」
「ヤクザの兄貴、どもっす!」
「ヤクザのおじちゃんだ!」

彼らがヤクザさんや兄貴と読んだでいる全身傷まみれの男こそここの廃墟のゾンビの大半を治めている。ゾンビ達のリーダー的な存在である。

「いただくぞ。」
「どうぞ〜。」
「そういえば、兄貴がなんでここに?」
「ああ、実はな商業施設の南側に誰か人間が侵入しているみたいでな。」
「「「!?」」」

何の問題もないと言われているかのようなその発言に春人、ヤク、パピーの3人は心底驚くのだった。

・「し、し、し、侵入者ってマジっすか!?」
「ああ。」
「大丈夫なんですよね!?」
「問題ない。南の商業施設の中は、ほぼ何もない。それに、それぞれの入り口にトラップが仕掛けられている。」
「よかった〜…で、その侵入者ってどんなやつですか?」
「ああ…確か監視カメラで見たやつだと…高校の制服に、マフラーをつけた長い黒髪の女性だったな。」
「「!?」」

 この事を聞いた春人とヤクは真顔のまま固まった。特に春人はさっき唐揚げに使った油を頭から浴びたかのような状態になっていた。

「どうしたの?すごい汗だよ?」
「ああ…大丈夫だよパピー。冷や汗だよ…」
「何だ。お前、侵入した人間と知り合いか?」
「はい…」

春人はヤクザにひさぎと自分の事を一通り説明した。すると、ヤクザは少し考えた仕草をした後、ニヤリと笑い、一言。

「よし、春人!侵入者のその彼女、お前が対処しろ。」
「! マ…マジですか?」
「ああ。」

こうして、ゾンビ達の住処に入ってきたひさぎに春人は渋々会いに行ったのだった。

・日野崎ひさぎは今、渚リゾートタウンの商業施設の一部、南エリアにいた。彼女がここに入ってきたのは10分くらい前の事だった。

「まさか、まだ調べてない所があったなんてね…。あれからもうだいぶ経つのに…。」

 2年前に起こったゾンビパンデミック。このせいで何万、何億という人間が死ぬかゾンビになった。それでもごく少数の人間はまだ生き残っていた。しかし、生き残っていた人間はパンデミックの起こった次の日に今度は人間同士で殺し合った。殺し合った理由は1つ。食料の奪い合いだった。当然だろう。ゾンビの主食は人肉だが、最悪食べなくても生きられる。だが、人間はそうはいかない。食べる物がないと餓死してしまう。だから食料を調達しに行くしかなかった。そして、後は簡単に想像がつく。パン1つ、水一杯、ビスケットひとかけら、たったこれだけで生存者同士で殺しあう理由になってしまった。食料を持っていた者を殺して食料を奪い、さらにその食料を奪った者を殺して食料を得る。こんな地獄のような光景がパンデミックが起こってから、約1週間続いた。その中で、他の生存者と協力して生き延びようとする者が現れ始め、パンデミックから一ヶ月たった頃には生存者の間に生存者同士の協定と、5つの集団が出来た。ひさぎはその集団の1つ、『渚市生存者組合』という集団に入っていた。この集団のリーダーは、彼女の友人先崎舞だ。ひさぎは今、彼女の依頼でこの廃墟の探索に来ていた

「舞に頼まれて来て見たけど、大した物は…うん。ないみたいね。もう少し奥まで進んでみてから帰ろうかしら?…あら?あれって…」

 ひさぎは歩いていた足を止め、真っ直ぐに前を見た。そして確認した。廃墟になった施設の中、その店の角からゆっくりとハイキングに来たかのような足取りで男が1人現れたのを。身長は180センチくらい。ジャケットにジーパン、頭に黒いフルフェイスのヘルメットを被っているせいで顔は見えなかった。腰にはショットガンらしき銃火器。手には血に濡れた金属バットを持っていた。そんな男はひさぎを見て一言。

「よお。こんな所で何してるんだ?」

 こんな廃墟に似つかわしくない明るい口調の男とひさぎはこの後、殺し合う事になる。













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