令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
83.終章④
すとんとしたワンピースドレスで、白い襟にリボン。ふくらんだ肩に学院の紋章が刺繍されたワッペンがついている、マヨルやコレットやミラと同じ形の、女生徒用の制服なのだが――。
見たことのない色。
レオニードが手にしている制服は、「水色」だった。
「なんですか、この色……?」
「新設の『呪術科』の制服だよ」
「『呪術科』っ?」
「カロア川の精霊が現れたことで、今、デジャンタンでは昔ながらの『呪術』が見直されはじめている。デジャンタンだけじゃない。カロア様がロギと下流域まで旅したおかげで――なんだかやたら目立つ旅をしたらしくて――今、精霊がちょっとした流行になってる」
「流行、ですか……」
「学院としても、この流行に乗らない手はないというのもあって」
「レオニード君。流行などという軽薄な理由ではないぞ。『呪術科』は有識者や生徒からの要望に答えてだな――」
「あ、はい。申し訳ありません学院長」
レオニードは恐縮し、ごまかすように前髪をかきあげた。
「つまりまあ、君は『呪術科』第一号の生徒ということだ。実験的に新設した科なので、授業内容はこれから詰めていくことになる。もちろん、一般的な術式も学んでもらう」
「……わたしひとりですか?」
「今のところはね。もうひとり正式入学してもらいたい人物がいるんだけども。メリチェル、君からも彼を誘ってみてくれないか? 学費がないなら、学院の用心棒と用務員を兼ねてくれればタダにするからって言って」
「え、え、え。それって……」
「もうひとり、カロア様を呼び出した人物がいるじゃないか。図書室で熱心に『呪術』を独学してた。彼なら、生徒二号にうってつけだろう?」
レオニードはそう言うと、いつもの行儀のいい笑顔とは別の、心から可笑しそうな笑みを浮かべた。
見たことのない色。
レオニードが手にしている制服は、「水色」だった。
「なんですか、この色……?」
「新設の『呪術科』の制服だよ」
「『呪術科』っ?」
「カロア川の精霊が現れたことで、今、デジャンタンでは昔ながらの『呪術』が見直されはじめている。デジャンタンだけじゃない。カロア様がロギと下流域まで旅したおかげで――なんだかやたら目立つ旅をしたらしくて――今、精霊がちょっとした流行になってる」
「流行、ですか……」
「学院としても、この流行に乗らない手はないというのもあって」
「レオニード君。流行などという軽薄な理由ではないぞ。『呪術科』は有識者や生徒からの要望に答えてだな――」
「あ、はい。申し訳ありません学院長」
レオニードは恐縮し、ごまかすように前髪をかきあげた。
「つまりまあ、君は『呪術科』第一号の生徒ということだ。実験的に新設した科なので、授業内容はこれから詰めていくことになる。もちろん、一般的な術式も学んでもらう」
「……わたしひとりですか?」
「今のところはね。もうひとり正式入学してもらいたい人物がいるんだけども。メリチェル、君からも彼を誘ってみてくれないか? 学費がないなら、学院の用心棒と用務員を兼ねてくれればタダにするからって言って」
「え、え、え。それって……」
「もうひとり、カロア様を呼び出した人物がいるじゃないか。図書室で熱心に『呪術』を独学してた。彼なら、生徒二号にうってつけだろう?」
レオニードはそう言うと、いつもの行儀のいい笑顔とは別の、心から可笑しそうな笑みを浮かべた。
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