令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜

サカエ

75.第四章 愛しさと、ぬくもりと⑫

 太陽の光が、細く長い体に反射している。

 神々しい聖獣の姿。

 遠くて細部はよく見えなくとも、ミラがつくった龍の、鋳型のような固さはない。生きているように繊細にうねる、輝く水の龍。

 あれは、火事の夜に見た水龍とおなじだ。

 メリチェルはマヨルを見た。
 マヨルもメリチェルを見ていた。
 ふたりは同時に頭をふった。

(わたしが呼んだのではない――。マヨルでもない。では、誰が?)

 メリチェルは周囲を見渡した。
 いつのまにかレオニードが中庭に出てきていて、空を見上げていた。
 まさかレオニード先生が?と思いメリチェルが話しかけようとしたとき、レオニードがつぶやいた。

「ロギ……?」

「ええっ?」
 水龍は学院の中庭を目指し、急激に高度を下げてきた。
 急降下の勢いで風がおこり、メリチェルの髪を吹きあげる。

 風にまじって、「うわあああああ」と上空から声が聞こえた。


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