令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
58.第三章 くじらちゃんを探せ⑯
「ソシュレスタ伯は娘の呪術師としての素質をおそれた。狭い領地だけで暮らしていたら、いつか先祖のように、自領の利益だけを考えて自然の摂理を変えてしまうかもしれない。そうなる前に、なるべく広い世間を見聞させよう。広い視野を持たせよう。挫折も経験させよう。多くの人と交流させよう……。そう考えたんじゃないかな」
「娘を手元に置いて監視するのではなく?」
「僕はソシュレスタ伯爵の人となりを知ってるけど、鳥を鳥籠で飼わない人だよ」
レオニードの言葉にロギはうなずいた。
令嬢があんなつつましやかな下宿で暮らすことに反対しない伯爵は、かなり変わり者だと思っていたから。
「だけどこのままじゃメリチェルを入学させられない。規則は規則だから」
「……そこをなんとかできないか」
「僕は不正をしないよ」
「不正ではなく、正規の方法で」
メリチェルに術式を指導してやってくれ。
そう言う意味をこめて、ロギはレオニードの目を見つめた。
「努力してみよう」
「……感謝する」
「自分のことじゃないのに、君が感謝してくれるなんて。さては君、メリチェルのことを……」
「はあっ!?」
ロギはおもいっきり素っ頓狂な声をあげた。
「そうかそうか。しかし道のりは険しいな。相手は貴族の令嬢だよ? 王立術士団に入って名をあげて、王様の目に止まって叙爵を受けないとむずかしい。うわあ、男のロマンだね! そういう目標があるってうらやましいなあ」
「……てめぇ、なにお花畑なこと言いやがる」
「応援するよ!」
「するな!」
「そうかあ。メリチェルかあ。まだ子供だけど、将来きっと凄い美人になるよ。ふふふ」
「ふふふじゃねえ! そんなんじゃねえし! 妹みたいなもんで……」
「照れない照れない」
「照れてねええええええ! ちがうし!」
ロギは絶叫した。なんということだ。にやにやしてやるつもりが、にやにやされることになってしまった。
うざい。
心の底からこのボンボンがうざい!
「娘を手元に置いて監視するのではなく?」
「僕はソシュレスタ伯爵の人となりを知ってるけど、鳥を鳥籠で飼わない人だよ」
レオニードの言葉にロギはうなずいた。
令嬢があんなつつましやかな下宿で暮らすことに反対しない伯爵は、かなり変わり者だと思っていたから。
「だけどこのままじゃメリチェルを入学させられない。規則は規則だから」
「……そこをなんとかできないか」
「僕は不正をしないよ」
「不正ではなく、正規の方法で」
メリチェルに術式を指導してやってくれ。
そう言う意味をこめて、ロギはレオニードの目を見つめた。
「努力してみよう」
「……感謝する」
「自分のことじゃないのに、君が感謝してくれるなんて。さては君、メリチェルのことを……」
「はあっ!?」
ロギはおもいっきり素っ頓狂な声をあげた。
「そうかそうか。しかし道のりは険しいな。相手は貴族の令嬢だよ? 王立術士団に入って名をあげて、王様の目に止まって叙爵を受けないとむずかしい。うわあ、男のロマンだね! そういう目標があるってうらやましいなあ」
「……てめぇ、なにお花畑なこと言いやがる」
「応援するよ!」
「するな!」
「そうかあ。メリチェルかあ。まだ子供だけど、将来きっと凄い美人になるよ。ふふふ」
「ふふふじゃねえ! そんなんじゃねえし! 妹みたいなもんで……」
「照れない照れない」
「照れてねええええええ! ちがうし!」
ロギは絶叫した。なんということだ。にやにやしてやるつもりが、にやにやされることになってしまった。
うざい。
心の底からこのボンボンがうざい!
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