令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
57.第三章 くじらちゃんを探せ⑮
ロギは目を見張った。
ついこの間、メリチェルとそんな話をしたばかりだったから。
「童話らしく王様ってことになってるけど、あれはソルテヴィルの古い領主だ。ソルテヴィルが川の瀬替えをした記録が残ってる」
「ソルテヴィル……メリチェルの故郷か」
「瀬替えの結果民が飢えたのは、北のセイリャの国境部。今でも不毛の地だね」
「……」
「童話と違うのは、セイリャの国境の村は、ソルテヴィルに攻め入る元気なんかなかったってことさ。飢饉が起こってほとんどの民が死んだからね」
「その流路変更は、精霊の力を使ったのか?」
「さあ、そこまではわからない。記録が古すぎて、実際のことと民間伝承が入り混じってるからね。ただ、社交界でよく出る話に、ソルテヴィルのソシュレスタ家は、呪術師の家系だ――って話がある。家の箔付けのためにでっち上げた伝承かな? ……どうもそうじゃない気がする」
「……」
「メリチェルじゃないかな」
レオニードの目が光を帯びた。
おとぼけぶりはなりをひそめ、頭の回る実力者の顔になっていた。
「なにが?」
「カロア川の精霊を呼び出した人物だよ」
「……どうだろうな」
しばらく沈黙が流れた。
ロギはレオニードから目をそらしはしなかったが、沈黙がすべてを語ってしまった。
レオニードは前髪をかきあげた。
「これは僕の仮説の話だ」と前置きをして、語り始める。
ついこの間、メリチェルとそんな話をしたばかりだったから。
「童話らしく王様ってことになってるけど、あれはソルテヴィルの古い領主だ。ソルテヴィルが川の瀬替えをした記録が残ってる」
「ソルテヴィル……メリチェルの故郷か」
「瀬替えの結果民が飢えたのは、北のセイリャの国境部。今でも不毛の地だね」
「……」
「童話と違うのは、セイリャの国境の村は、ソルテヴィルに攻め入る元気なんかなかったってことさ。飢饉が起こってほとんどの民が死んだからね」
「その流路変更は、精霊の力を使ったのか?」
「さあ、そこまではわからない。記録が古すぎて、実際のことと民間伝承が入り混じってるからね。ただ、社交界でよく出る話に、ソルテヴィルのソシュレスタ家は、呪術師の家系だ――って話がある。家の箔付けのためにでっち上げた伝承かな? ……どうもそうじゃない気がする」
「……」
「メリチェルじゃないかな」
レオニードの目が光を帯びた。
おとぼけぶりはなりをひそめ、頭の回る実力者の顔になっていた。
「なにが?」
「カロア川の精霊を呼び出した人物だよ」
「……どうだろうな」
しばらく沈黙が流れた。
ロギはレオニードから目をそらしはしなかったが、沈黙がすべてを語ってしまった。
レオニードは前髪をかきあげた。
「これは僕の仮説の話だ」と前置きをして、語り始める。
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