令嬢は呪術師 〜愛しき名に精霊は宿る〜
7.第一章 デジャンタン術式学院⑦
声のほうを見ると、重たげな黒いローブをまとった白髪の男性が、校舎の渡り廊下から笑みを浮かべてこちらを見ている。
その一歩うしろに付き従うように立っているのは、品よく整った顔立ちの若い男性。若いほうの人物は、襟とカフスにモール飾りを施した長上着と襟に結んだクラヴァットという、いかにも都会風なしゃれた装いだ。
「学長と主幹教諭です」
マヨルがささやいた。あわててふたりに礼をとるメリチェル。
マヨルは、メリチェルが「自分で持つから」と言い張って持っていた荷物を渡すよううながした。
    そして「編入試験がんばってください」と言い残すと、学長と主幹教諭に一礼し、メリチェルをその場に残したままスタスタと寄宿舎のほうへ行ってしまった。
荷物を託して手持無沙汰になってしまったメリチェルは、しばらくぽかんとしていた。
しかし、マヨルに言われた一言を思い出して我にかえる。
「へ、編入試験っ?」
「さよう。君の属するクラスを決めるために、術式の実技試験を受けてもらう。ソルテヴィルの推薦者によると、君はかなりの使い手だそうだの」
学長の言葉に、メリチェルは頬が引きつってしまった。
ソルテヴィルではともかく、この地では小動物が掘った穴ひとつ埋められませんでした――と白状するのは、試験の前がいいだろうか後がいいだろうか……?
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