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異世界に召喚されました。

ノベルバユーザー232937

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 俺の背後には、メイド服を着た美少女がいた。ドン引いた顔をしていた。ショートカットで背は割と高い。

「え、いや、俺は……」

 動揺した。
 小さい女の子がいる部屋をノリノリで「コンコン」言いながらコンコンノックしてるとこを見られたのだ。
 かなり恥ずかしい。

 焦った俺が次に放った言葉が、これだ。

「ワタシハ怪しいものじゃアリマセン……よっ?」

「ふ、不審者ですーっ! エルノさまを狙う不審者が現れました!!」

「わーストップ! 違う! 俺勇者だから!」

「ゆ、勇者っ? 勇者の召喚は失敗したと聞きました。そんなウソをつくなんて、やっぱり不審者ですねっ」
 
 メイドさんは懐からよく分からない白い棒を取り出すと、ポッキリと二つに折った。
 折れた棒は一瞬にして赤く染まる。

「これでもう逃げられませんよ。観念しなさいっ」

「だから違うって!」

「問答無用!」

 メイドさんは手の平を俺に向ける。

「――ブレイズ!」

 炎の塊が飛んできた。魔法だ。さすが異世界。

 俺は全力で逃げる。

 神殿の中は迷路みたいで、クネクネ曲がりながら適当に逃げているうちに、出口がどこか分からなくなってきた。

 さっきメイドさんが折った棒が合図になっていたのか、どこからともなくワラワラと人が湧いてくる。
 みんな俺を追ってくる。全員メイドだった。

「「「「「「待ちなさいっ!」」」」」」

「多いわ! 何人いるんだよ!」

 神殿にメイドっておかしいだろ。しかもみんな速すぎるし可愛すぎる。チートを宿す俺じゃなかったら即死だった。

「ぶっ!」

 転んだ。足元になんか飛んできた。
 ズボンが燃えてた。

「アッチィ!」

「追い詰めました、観念なさい」

 軽く十人は超えるメイドさんズに囲まれる。何これご褒美ですか。

「さぁ、どういう目的でここに立ち入ったのか白状するのです」

「いや、実は俺勇者なんですよ。召喚地点を間違えたようなので、自分からやって来ました。偉くありません? 逃げなかったんですよ? という訳で養ってください」

「何を訳の分からないことを……」
「ウソをつくにしても意味不明ね」
「きっと頭がおかしいのよ、かわいそうに」

「おいこら最後」

「とりあえず拘束して詰所に連れて行きましょう」

 それはマズイ。
 いきなり犯罪者スタートはダメだ。

「あっ、野生のUFOっ!」

 メイドさんたちの背後を指差す。
 二、三人は引っかかってくれたが(きっとドジっ娘メイド)、残りは全員白けた顔で俺を見ていた。

 捕獲された。





「ほら、大人しく歩きなさい」

「ねぇ、おかしくない? なんで俺捕まってるの? 勇者だっていってるのに」

「まだそんなことを言うのですか。だったら証拠の一つでも見せてみなさい。どうせ勇者様がどんなものなのかも詳しく知らないくせに」

 俺は手を後ろで縛られ、足にクソ重たい重りをつけられて神殿の中を歩かされていた。

 最初に俺を見つけたショートカットメイドさんが、俺を先導している。

「え、証拠と言われてもな……。ビームなら出せるって分かったけど」

「ビーム?」

「そう、ビームだよ。男のロマン。だからさ、この手のヤツ外してくれない?」

「ダメです」

「ちょっ、証拠見せてみろって言ったじゃん! ウソつき!」

「何とでも言ってください。あなたが不審者であることに変わりはないです。絶対に逃しません」

 クソ、手強いな……。

 どうやって逃げ出そう。

「なぁ、君ってなんて名前なの?」

「何であなたに教えないといけないんですか」

「……」

 ジッと見つめる。

「……アリアです」

「そーか、アリアか」

「馴れ馴れしく呼ばないでください」

「じゃあさアリア、ここで問題です。パンはパンでも食べられないパンは何でしょう」

「何を言ってるのですか、食べられないパンなど、もはやパンではないでしょう」

 俺にジト目を向けながらも、しっかり答えてくれるアリア。
 いい子だなぁ。

「いーや、ちゃんと答えはある」

「……はぁ、付き合ってられませんね」

「正解はフライパンでした」

「ふらいぱん? 何ですか、それは」

 フライパンはないのか。

「じゃあパンツでもいいや」

「一体何の話をしているのですかあなたは……」

 なんか頭が足りない子を見る生暖かい視線が注がれる。その目やめて……。

「あぁっ! あんなとこにイケメンが!」

「っ!?」

「よしきた」

「あっ、!」

 イケメンには反応するのか。
 まぁ俺も美少女って言われたら即反応するけど。

 後ろ手で拘束され、足に重りをつけながら俺は逃走する。

「待ちなさい!」

 やばい追いつかれる。
 クソッ、チートパワーでどうにかならないのか。

 拘束と重りが消えるイメージをするが、意味なし。
 じゃあ壊すイメージ……も意味なし。

 だったら、足首と手首からビームが出るイメージ。
 あ、出た、ちょっとだけ。手の平じゃなくてもいいのか。

 ビームによって重りと拘束具の一部が壊れて外れた。
 身軽になる。

「ひゃっほぅ!」

「なっ、今、どうやって……っ」

「見たか、これがビームだ」

「訳がわかりません!」

 俺は一段階スピードのギアを上げて、角を曲がり、アリアの視界から消えた。

 そのままグネグネとしばらく走り続けた。

「……ふぅ、なんとか巻いたぜ。これはもう逃げたほうがいいかな」

 でも出口が分かんないんだよなぁ。
 
 と、その時、俺は見た。

「……あなた、……だれ?」

 さっき、俺をジッと見つめては部屋に隠れるというのを繰り返していた女の子だった。

 女の子は恥ずかしそうにちょっとだけドアから顔を出している。

 どうやら巡り巡って元の場所に戻ったようだ。

「俺か? 俺の名前は鈴木ユウ。どこにでもいるような普通の高校生だった、今はたぶん勇者」

「スズ、キ……?」

「できればユウって呼んでくれると俺はすごく嬉しい」

「スズキは、勇者なの?」

「そうだな」

「どうしてここに来たの?」

「まぁその質問には答えるから、とりあえず君の部屋にいれてもらえる? 怖い人が来るから」

 女の子はコクコクと頷いて、俺を迎え入れてくれた。

 部屋の中はサッパリとしていた。特に面白そうなものはない。異世界の生活必需品っぽいのがあるくらいだ。
 でも、かなり念入りに掃除されている気配だ。

「エルノは、……エルノ」

「そうか、よろしくなエルノ」

「ん、それで……」

「あぁ、どうして俺がここにいるのかって?」

 コクリとエルノが頷く。

「そうだな……、しいていうなら、養ってもらうため、かな」

「やしなう……?」

「誰かに生活の世話をしてもらうってことだ」

 多分もうそれは無理だけど。

「……じゃぁ、エルノも、ここの人たちにやしなってもらってる」

「へぇ、そうなのか」

「ん」

 こんなでかい神殿の、こんな部屋に一人で?
 両親のこと……は、聞くのはやめようか。

「エルノは、普段はここで何してるんだ?」

「……なにも、してない。たまに空はみる」

 エルノが窓の外を指差す。

「この部屋に、ずっとか?」

 エルノが頷く。

「外に出てもいいって言われてる。……でも、ちょっとこわい」

「なるほど」

 事情はよく分からんが、この子が暇を持て余していることは分かった。

「じゃあ俺と遊ぶか」

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