願いは願いのままに
4
    「やぁ、ようこそ」
 ボクは立ち尽くした。
こういう時どういう反応が正解なのかが分からないからだ。
 あの後屋敷の中に入ると、入口に居たスーツを着た女性の案内で中を歩いていた。
 その途中後ろにいた冴島がベラベラと何か言っていたが、ボクは必要が無いから返事をしなかった。
 そしてやっと広すぎる中を歩いて着いたのは、両開きで木製の扉。
 中に入ると、広い部屋と、その中央奥で机を構え立派な椅子に座った女性がいた。
 その見た目はとても派手だった。
眩しすぎるプラチナブロンドの長髪に、とても整った小さな顔。
なにより、その胸囲はFはあるんじゃないかと言うほど、大きく威圧感があった。
 彼女から発せられた高々としていながらも少し低い落ち着いた凛とした声。
 フリーズしていたボクを置いて、冴島が大きな反応を返した。
「おぉ!
めっちゃ美人!」
「はは、お褒めの言葉ありがとう。
取り敢えず座ってくれ」
 褒められ慣れているのか、彼女は冴島の言葉を上手く躱すと、テーブルの両脇にある皮の黒いソファに座るように言った。
 その時初めて気がついた。
 部屋には、彼女以外に5人も部屋の中にいた。
 
 
 驚きと警戒でドアの前から動かないボクを、冴島が肩を掴んで軽く押しながら部屋に入る。
「はいはい入ろ〜」
「っ、おいッ」
 冴島に押されたままソファに座る。
すると、彼女は立ち上がって手を広げた。
「これで全員だ。
はじめまして。
私は君達を歓迎しよう」
「ちょっと待ちな」
「・・・どうかしたかな」
 彼女の話を止めるように声がした。
殆ど全員が声のした方向を見る。
 そこには、バンドのような派手な格好をした紫のメッシュを入れた髪をしている女子生徒が立っていた。
 耳や唇にまでピアスが付いていて、とても痛々しい。
 まるで今から喧嘩でも売ろうという雰囲気の彼女に、今度は溌剌とした滑舌のいい声がした。
「コラ君!
人の話を遮るものじゃあないぞ!」
 また視線をずらして少し右を見ると、いかにも優等生という文字の似合うメガネに髪を整え、制服はボタンを全て閉めてあるピシッと言う効果音がしそうな男子生徒だった。
 けれど女子生徒も黙る気はないようで、まるで吠えるように男子生徒の方を見て啖呵を切る。
「るせぇ!
黙ってろメガネ!」
「め、メガネ!?
メガネのどこが悪いんだ!」
「・・・おいアンタ。
アンタ誰なんだよ。
いきなり呼び出して、自己紹介もなく勝手に話進めやがって」
 最もらしい意見だが、彼女が言うのは少し似合わない。
プラチナブロンドの彼女は、ふふと笑ってから髪をかきあげた。
「これは失礼。
紹介が遅れたな。
私はこの学園の理事長をしている、セレスティーヌだ。
フルネームは長いので省かせてもらうよ」
「理事長ー?
理事長になんで私達が呼び出される訳?
大体Sクラスってなに?」
「おいお前」
「・・・あ?何よ」
 すると今度は壁に寄りかかって腕を組み、目を瞑っていた男子生徒が低い声で彼女を呼ぶ。
「その小さな脳みそで考えてみろ。
それを今から話そうとしてることくらい分かるだろ。
お前のその無駄な口出しが展開を遅くしてるんだ。
無能は無能らしく黙っていろ」
「あぁ゛!?」
「君達!
静かにしたまえ!!」
 煽るような男子生徒のその言葉に殴りかかりそうになった彼女を、眼鏡を掛けた彼のさらに大きな声が響き、とても騒がしくなったと思うと、柔らかい笑い声した。
 それで皆は黙る。
「・・・何笑ってんだアンタ」
「ふふ、失礼。
この一癖も二癖もある君達こそ、私の求めていたものだと思ってね。
彼の言う通り。
その説明を今からしよう」
 とりあえず落ち着いたのか、メッシュの彼女は、煽っていた彼とは反対側の壁にムスッとした顔で寄りかかる。
 「では改めて言おう。
君達は異常だ」
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