願いは願いのままに
1
 脳が無機質で高いアラーム音を聞いて段々と意識が浮上する。
 瞼は軽く、すぐに眠気も覚めて上半身を起こし、アラームを止めフカフカの布団から抜け出す。
 部屋にある小窓から見える大きな木には、満開の桜がついていて
ぽかぽかと程よい暖かさの気温が、今が春であることを全面的に主張していた。
 昨夜窓を閉めずに寝てしまったせいで、花びらが風で運ばれて部屋の中に少し入っていた。
 それを手で拾ってゴミ箱に入れる。
 軽く背伸びをしてから部屋を出て階段を降り、洗面台へ向う。
 ピカピカに磨かれた鏡は綺麗だが、そこに映る自分の顔なんて見たくなくて、頼んでつけてもらった鏡の窓を閉める。
 袋に入った歯ブラシを手に取ってそこに少量の自分専用の歯磨き粉を出す。
 前から奥、裏までしっかりと磨く。
 細く柔らかい毛が少し擽ったいが、固いのは好きじゃない。
 除菌してあるコップに水を入れて口に含み吐き出す。
 それを何度か繰り返してから、コップをまた除菌して歯ブラシを横のゴミ箱に捨て、洗面台に飛んだ水を綺麗に拭き取る。
 タオルは菌が繁殖するからと使用していない代わりに置いてある、洗面台の横のペーパータオルで手を拭いて洗面所を出ていく。
 後ろで気配がして少し振り向くと、そこには黒く飼い猫ならではの良い毛並みをしたスリム体型の猫のクロが居た。
 名前は今思うとやはり安直が過ぎたかとも思うが、無駄に意味を込めたところで何になるのか。
 脚に頭を擦り付けてくるクロを避けてキッチンへと向かう。
 大きくシンプルなデザインの冷蔵庫を開け卵とソーセージを取る。
 電子レンジの横にある籠の中のからレトルトのスープを出して温め、卵とソーセージも適当に焼く。
 朝食に拘りなんてものは無いし、要さんはもう出てるだろうから必要が無い。
 
 ダシで味付けした卵と塩を振って焼いたソーセージ、レトルトのスープを皿に出して机に並べる。
 座って食べようとするが、後ろからニャーと何かを訴えかける鳴き声が聞こえ、少し溜息をついて立ち上がる。
 戸棚の中からキャットフードを出して猫用の皿に移す。
それをクロの定位置に置くと、クロは礼を言う素振りもなく食べ始める。
 別に猫に礼なんて求めてはいないが、この猫は素っ気ない猫の中でも特別ふてぶてしく愛想がないだろう。
 今度こそ自分の朝食を食べ始めた。
特別美味しくもないけど食べられなくもない料理を黙々と口に運び、噛んで飲み込んでいく。
 食べ終わって食器を洗ってから高額らしい洗浄機に入れてまた洗うボタンを押す。
 リビングの壁に掛かった時計に目を向けると、家を出るまであと30分ほどだった。
 2階の部屋に戻って、パジャマを脱ぎ降り畳む。
後から洗濯機に入れるのを忘れないようにしないと。
 そして新品の制服をじっと見る。
デザインは白を基調としたブレザーで、清潔感があって嫌いじゃない。
 制服が白だからなのか、中の支給されたワイシャツは黒だ。
これをデザインした人間を知っているからこそ、流石と言わざるを得ない。
 制服を着込み最後にネクタイだが、ネクタイは赤というまた目立つ色だ。
 学年別で色の違う黒光りしたバッチをつける。
 着替え終わった姿を丁度顔だけ見えない姿見でネクタイを整えて、必要な筆記用具やらを指定の鞄に入れる。
 脱いだパジャマを洗濯機に入れ、時間になったのでクロの水だけ置いてから電気を消して家を出る。
 高層マンションの最上階なだけあって、廊下から見えるその景色は絶景だ。
 そんなものには一切目もくれず鍵をカードで閉めてエレベーターで1階まで降りる。
 初めだけ来る浮遊感が少し気持ちがいい。
このままエレベーターの線が切れて落下して死ぬなんて最後でもいい。
 あっという間に1階についたエレベーターから降りて警備員のいるロビーを通り過ぎ、セキュリティのついている自動ドアを出る。
 やっと外に出たと思うとマンションから敷地の外に出る門まではそれなりの距離があり、道の周りは綺麗な緑の庭がある。
 裕福な人間が住む世界という感じが溢れている。
その特別な石で作られているらしい道を通って無駄に装飾され重そうな開いた扉の敷居を跨ぐ。
 
 警備員が門の前に2人たっていて、彼らに挨拶は特にせず歩き出す。
 指定の新しい靴は少し違和感がある
足元を気にしていると目の前に黒のリムジンが停る。
 そして運転席から降りてきた黒スーツの男が颯爽とボク側のドアを開ける。
  
 「ありがとうございます」
 
 少し頭を下げて車に乗り込むと、車内はフカフカのソファとテレビ、冷蔵庫まで付いている。
こういうのを“無駄”と言うんだろうな。
 ドアを閉めると彼は運転席にまわり静かに車を出した。
 
 瞼は軽く、すぐに眠気も覚めて上半身を起こし、アラームを止めフカフカの布団から抜け出す。
 部屋にある小窓から見える大きな木には、満開の桜がついていて
ぽかぽかと程よい暖かさの気温が、今が春であることを全面的に主張していた。
 昨夜窓を閉めずに寝てしまったせいで、花びらが風で運ばれて部屋の中に少し入っていた。
 それを手で拾ってゴミ箱に入れる。
 軽く背伸びをしてから部屋を出て階段を降り、洗面台へ向う。
 ピカピカに磨かれた鏡は綺麗だが、そこに映る自分の顔なんて見たくなくて、頼んでつけてもらった鏡の窓を閉める。
 袋に入った歯ブラシを手に取ってそこに少量の自分専用の歯磨き粉を出す。
 前から奥、裏までしっかりと磨く。
 細く柔らかい毛が少し擽ったいが、固いのは好きじゃない。
 除菌してあるコップに水を入れて口に含み吐き出す。
 それを何度か繰り返してから、コップをまた除菌して歯ブラシを横のゴミ箱に捨て、洗面台に飛んだ水を綺麗に拭き取る。
 タオルは菌が繁殖するからと使用していない代わりに置いてある、洗面台の横のペーパータオルで手を拭いて洗面所を出ていく。
 後ろで気配がして少し振り向くと、そこには黒く飼い猫ならではの良い毛並みをしたスリム体型の猫のクロが居た。
 名前は今思うとやはり安直が過ぎたかとも思うが、無駄に意味を込めたところで何になるのか。
 脚に頭を擦り付けてくるクロを避けてキッチンへと向かう。
 大きくシンプルなデザインの冷蔵庫を開け卵とソーセージを取る。
 電子レンジの横にある籠の中のからレトルトのスープを出して温め、卵とソーセージも適当に焼く。
 朝食に拘りなんてものは無いし、要さんはもう出てるだろうから必要が無い。
 
 ダシで味付けした卵と塩を振って焼いたソーセージ、レトルトのスープを皿に出して机に並べる。
 座って食べようとするが、後ろからニャーと何かを訴えかける鳴き声が聞こえ、少し溜息をついて立ち上がる。
 戸棚の中からキャットフードを出して猫用の皿に移す。
それをクロの定位置に置くと、クロは礼を言う素振りもなく食べ始める。
 別に猫に礼なんて求めてはいないが、この猫は素っ気ない猫の中でも特別ふてぶてしく愛想がないだろう。
 今度こそ自分の朝食を食べ始めた。
特別美味しくもないけど食べられなくもない料理を黙々と口に運び、噛んで飲み込んでいく。
 食べ終わって食器を洗ってから高額らしい洗浄機に入れてまた洗うボタンを押す。
 リビングの壁に掛かった時計に目を向けると、家を出るまであと30分ほどだった。
 2階の部屋に戻って、パジャマを脱ぎ降り畳む。
後から洗濯機に入れるのを忘れないようにしないと。
 そして新品の制服をじっと見る。
デザインは白を基調としたブレザーで、清潔感があって嫌いじゃない。
 制服が白だからなのか、中の支給されたワイシャツは黒だ。
これをデザインした人間を知っているからこそ、流石と言わざるを得ない。
 制服を着込み最後にネクタイだが、ネクタイは赤というまた目立つ色だ。
 学年別で色の違う黒光りしたバッチをつける。
 着替え終わった姿を丁度顔だけ見えない姿見でネクタイを整えて、必要な筆記用具やらを指定の鞄に入れる。
 脱いだパジャマを洗濯機に入れ、時間になったのでクロの水だけ置いてから電気を消して家を出る。
 高層マンションの最上階なだけあって、廊下から見えるその景色は絶景だ。
 そんなものには一切目もくれず鍵をカードで閉めてエレベーターで1階まで降りる。
 初めだけ来る浮遊感が少し気持ちがいい。
このままエレベーターの線が切れて落下して死ぬなんて最後でもいい。
 あっという間に1階についたエレベーターから降りて警備員のいるロビーを通り過ぎ、セキュリティのついている自動ドアを出る。
 やっと外に出たと思うとマンションから敷地の外に出る門まではそれなりの距離があり、道の周りは綺麗な緑の庭がある。
 裕福な人間が住む世界という感じが溢れている。
その特別な石で作られているらしい道を通って無駄に装飾され重そうな開いた扉の敷居を跨ぐ。
 
 警備員が門の前に2人たっていて、彼らに挨拶は特にせず歩き出す。
 指定の新しい靴は少し違和感がある
足元を気にしていると目の前に黒のリムジンが停る。
 そして運転席から降りてきた黒スーツの男が颯爽とボク側のドアを開ける。
  
 「ありがとうございます」
 
 少し頭を下げて車に乗り込むと、車内はフカフカのソファとテレビ、冷蔵庫まで付いている。
こういうのを“無駄”と言うんだろうな。
 ドアを閉めると彼は運転席にまわり静かに車を出した。
 
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