学園内の最低ランクの学生がこの世の悪を成敗するそうです。(仮)

怪盗80

第19話:生徒会長はとんでもなくヤバイ奴でした。

鎖の中を駆けて攻撃をしかけるカイト、それに対応する冷斗の攻防は観客席にいる観客を沸かせていた。

「へぇ…カイトくん、この前の練習でも本気ですらじゃなかったんだ…おっと♪危ない危ない♪」

偏差的に蹴り入れた足は冷斗の手に掴まれたが、反対側の足で掴んでいる手を蹴り足を解放するとすぐに鎖に足を伸ばして鎖を駆ける。

「はぁ…はぁ…クソッ…このままだと…」

「あれ?疲れてきたのかな?」

鎖の上を駆けながら冷斗に攻撃をしかけるがそれすらも躱されてしまう。
そして、その状態が数十分続いた。

「はぁ…はぁ…冷斗、お前もう限界だろ…無理しなくてもいいんだぞ?」

「はぁ…カイトくんこそもう苦しいでしょ?」

その場には荒い息を整えながら冷斗の方へと歩いていった。
それに続いて冷斗もカイトの方へと歩き出した。

「はぁ…これで…」

「この一撃で…」

「「終わりだぁ!!」」

二人の拳が届く距離まで接近すると二人は拳を握りしめて殴ろうとする。
殴ろうとした時に二人の間に音廻が間に入った。
二人ともの顔を確認すると持っていたマイクに喋りだした。

「この試合はタイムアップにより引き分けにします!」

音廻がマイクで発した言葉には観客席に届き拍手や声援が飛ぶ筈もなく。

「そんな事ありなのかよ!」

「ちゃんとやれー!美少女じゃないのにそんな事するのかー?」

「とにかく!タイムアップだから…タイムアップってんだろうが!うるさいわ!このクソ野朗誰が美少女じゃないだぁ?!てめぇの◯◯◯を切り取るぞゴラァ!!」

逆ギレしながらマイクを投げつけ、観客席に上がろうとする音廻を羽交い締めにして何処かへと連れて行く眼鏡の生徒。

「ははっ…いやー、参ったなぁ…カイトくんがこんなに強いなんてね♪」

「俺もだ、冷斗…お前もここまで強かったんだな、てっきり葵の方が強いと思っていた」

笑いながら寝転がっている冷斗に手を差し出すカイトはすっきりとした顔だった。

「そんなぁ…僕みたいな真面目で誠実な生徒会長が弱い訳ないでしょ?」

さも、自分は誠実、真面目、純粋だと言い張っている様な事を抜かしていた。
側から見たらとても痛い事だと分かっているのだろう。

「少なくとも真面目で誠実では無いな。あと、どうしてあの名前を知ってたかを…」

「それは引き分けだから無理な話だよ♪まぁ、しょうがないねいつかは話してあげるよ」

その質問に至って真面目に答えると冷斗は笑いながら返した。
そして、後ろからマスクをつけた美少女が冷斗の襟を持ちながら引きずって行こうとするが、冷斗は嫌がってジタバタしているがマスクの下から見える眼差しを見たらすぐに大人しくなった。

「…」

マスクをつけたまま冷斗を連れて行こうとする美少女は突然、髪をまとめていたヘアゴムとマスクを取った。
そこには副会長の水葉葵の笑顔があった。
そして、こちらへ笑顔で会釈をしてからステージを出た。
(あの人…一体何者なんだよ…鎖に少し傷を入れるなんて…ほんとにあの人ただの副会長じゃないだろ…)
膝に巻いて攻撃を防ぎ傷ついた鎖と周りの鎖を元に戻すとアリスが場外から此方へと歩き出した。

「か、カイト…ごめんね…私…」 

「気にすんな、結果引き分けなんだからさ」

「う、うん♪」

照れながらもカイトの横で喜んでいるアリスを見ていると今までの疲れが突然全身に来た。

「悪りぃ…もう限界…」

「えっ!ちょ、カイト!」

倒れたカイトをアリスが支えるとそのまま寝てしまっている状態になっていた。

「ほ、本当に寝ちゃってる…」

「あらら…カイト…ここまでなるまで使い過ぎだって」

アリスに体を支えられているカイトを抱えるとドームからカイトの部屋へと向かった。
その抱えられている間、全く起きる気すらなく唸りながらと眠っていた。

「いやー、ここまで消耗するなんてな…使いすぎだっての!」

「あ、あの…これがデメリットなんですか?デメリットにしては軽いような…」

「ん?いやいや、これは消耗なだけでデメリットではないんだよなぁ…まぁ、とりあえずこいつを部屋に連れて行って寝かせてやれ、多分1日くらい寝かせたら起きるから安心しておけ」

抱えているカイトの頭を軽く小突くとアリスに笑いかけた。
アリスはその笑いに苦笑いで答えた。
そしてシズカがカイトの部屋にカイトを連れ込むと心配そうにカイトの顔色を見ていた。

「でもこんな事は初めてだな、うなされる程なんて…」

眠っているカイトを部屋のベッドの上で寝かせる。
そしてシズカは仕事の為に部屋を出た。
アリスは寝ているカイトが付けているマフラーを取ろうとするがあと少しの所で手を止めた。

「お疲れ様カイト…おやすみ」

静かに物音をあまり立てないように部屋を出た。


その後、カイトはまた夢を見た。
そしてその夢はカイトにとってはとても悲惨な過去だった。

「おい…しっかりしろよ…ハル…」

夏の夕焼けが輝いて見える日差しが差す部屋の壁は紅い鮮血と夕焼けで鮮やかに色付けられていた。
その部屋には横たわる息をしていない家族、目と腹から自分の鮮血を流している夏なのに黒いマフラーを巻いていたハルだけだった。

「…?か、カイト?ははっ…君がよく見えないや…声は聞こえるのにね」

「喋るな!お前…血が…」

口から吐血するハルの腹の傷口を抑えて止血をしている血で赤くなったカイトの手をハルは力強く握った。

「と、止まらない…ど、どうすれば…」

血に濡れた手で傷口を抑えてある程度覚えている止血をするも血が流れ出て来る。

「カイト…最後のお願い聞いてくれないかな…」

吐血しながらカイトの手を握るハルの血まみれの手を握り返す。
泣き出しそうな気持ちを見せないように虚勢を張りながら話しかける。

「あぁ、後で聞くから…今は喋んな!」

「今じゃなきゃダメなんだ…」

そう言うとハルは自分の首から黒色のマフラーを外すと震える手でカイトの首にマフラーを巻いた。
巻かれたマフラーは巻いたと言えるのかどうかは分からないが、ただ首に掛けられたと言った方が正しいだろう。

「そのマフラーをあげるよ…絶対に役に立つから…あはは…うまく巻けれなかったかな…?」

「おい…マフラーより…お前の命が…」

冷たくなってきたハルの手を強く握るとハルは自身の口から言葉を発した。

「カイト…僕はもう限界みたいだ…最後くらいは…僕の友達のカイトの手で…◯◯を◯してくれないかな…?」

聞き入れたくない声だけが聞こえてしまう、聞こえていたとしても聞いていない事にしたかった。
だが、昔のカイトは握っていた手を離して台所にあった小型のナイフを手に持つとゆっくりとハルの手を握った。

「ハル…ッ…!!!」

「いいんだ…あとは任せたよ…◯◯◯◯◯…カイト…」

ナイフを突き立てた体は笑顔のまま眠っていた。
その後、部屋の中では家族の遺体と別に並べられた遺体が置いてあった。
血塗られた部屋には遺体以外誰もいなかった。
荒れた自分の部屋で黄昏ていたカイト。

「ハル…」(ピラッ…)

マフラーから落ちてきた紙切れが地面に落ちた。

「…!!」

そこにはカイトとハルが小さな頃に撮った写真だった。
肩を並べている笑顔の二人。
涙を飲み込んで息を吸うと薄く血がついたマフラーを自分の首に巻く。

「…お前の仇は俺が…絶対に討つ…だから…待っててくれ…」

深呼吸をしたカイトは巻いてあるマフラーを手で握り締めた。


「…またあの時の夢…これで何回目だよ…」
ベッドから壁に掛けてある電子時計を見ると1日経っていた。 
時計の針は朝の8:00を指していた。

「起きなきゃいけないよな…」

微睡んだ目を開けようとするが瞼を開けても暗闇が広がっており真っ暗だった。 

「ん?」

「おし!起きたな!今からリビングに行くから歩くぞ♪」

「えっ、ちょ!なんで!」

目隠しを寝ている間にされたのだろうかアラタに導かれるままリビングに連れ込まれる。

「イタッ…なんだよ…全く…」

何かに足をぶつけながら歩く。
背中を押されながら部屋を歩くが少し距離が遠いと思った。
アラタに勧められるがままにリビングの扉を開けるとカイトの目隠しが外されると目掛けて飛びついてくるユリ。
慌ててカイトからユリを引き剥がそうとするアリス。
後ろでは小町がアスカに無理矢理自分からあーんを強要していた。

「なんなんだ?この状況…」

「ふっふっふっ…それは私が説明しよう!!」

「「「「うわっ!びっくりしたぁー!!」」」」」

台所からヌルっと出てきたシズカは高らかに笑いながら説明し始めた。

「この度、この綺羅星寮に…アリスちゃんが入寮する事になりました!」

「……は?」

「えっと…私の寮がこの前の練習場での事故の影響で電気が通らなくて…シズカ学園長に脅h…問い合わせたところ、この綺羅星寮に住む事になりました!」

「おい待て、ここの寮にはもう空き部屋は無い筈だぞ?」

「何言ってんだよ♪お前の部屋だぞ♪」

………は?
本日二度目の驚きに開いた口が塞がらないカイト。
「待て待て…今なんて?」

「だから…お前の部屋で一緒に住め♪」

「「「「「おおっ…」」」」」

「おおっ…じゃねぇ!てかこんな勝手に決められた事受け入れられるか!その前に俺の部屋で二人が寝るには狭過ぎる…諦めて…」

「あー、お前の部屋なんだが、お前が寝ている間に改修工事しておいたから♪安心して2人どころか4人も寝れるぞ!」

慌てて二階へ駆け上がるとそこには今まであった筈の狭い部屋の原型は留めてなくリビングと同じくらい広くなっており、いつもカイトが寝ているベッドの他に女性が付けるような可愛らしい布団カバーを付けたベッドが置いてあった。

「おい…」

「なんだ?ちゃんとエアコンとテレビだってあるし机まである、この部屋に何か不満でもあるのか?」

後から開いた扉にもたれかかるシズカに怒鳴るように話した。

「大ありだわ!てかなんでダンボールが多いんだよ!この糞学園長(笑)!!」 

「おい、その学園長(笑)はまず、やめろ、まぁ…そりゃあ、なぁ♪」

「えっと…今日からカイトの部屋で過ごすからその…二時間前くらいに…」

アリスは部屋に入ってカイトの耳元で囁いた。

「ごめんね…何故か最近になって私を狙う人達が多くなってきているから護衛の近くにいた方が良いってシズカ学園長が…」

こそこそと耳元で囁きながらシズカの方を見るアリス。
頭をボリボリと掻いて飽きれるが負が落ちたようにため息をつくと。

「わかったわかった、とりあえずこの部屋で一緒に寝ておけばいいんだろ?」

「そうみたいだね♪」

「お前…なんか喜んでないか?」

「そ、そんな訳ないでしょ?だって青春を過ごす歳なのに…ど、同棲的な展開であんな事や…えへへ…」

そんな変態が笑うようなアリスの笑い声が聴こえてきた。
身の危険を感じシズカに向けて助けを求めるが…。

「なぁ、シズカ…やっぱりさっきの発言取り消す、頼むから部屋は分けてくれ」

「あー、聞こえないなぁ!外の音で全く聞こえないなぁ!!」(棒)

(ふざけんなよお前…あとであいつの部屋からプリンを食べてやる…)

「そうだ!ユリ!お前なら…こんな事を許す筈がない…」

さっきまでユリがいたリビングに向かうとそこにはユリはいなくて代わりに乱雑な書き置きがあった。

[私はカイトとアリスの同室に賛成します。]

「おい…」

「まぁ、ユリちゃんも賛成しているみたいだし大丈夫でしょ♪」

二階から何か聞こえた様な気がしたので二階に向かうとすぐにドタバタとした音とともに消えた。

「お前ら俺とアリスをそこまで一緒の部屋にしたいのか!」

「まぁ、でもこの寮の部屋はもうないみたいだし…このまま…」

ダンボールから私物を出し始めたアリスを抑えてポケットから携帯を取り出す。

「それは色々な意味で困る!冷斗に電話して空いている寮の部屋を…(プルル…)」

『カイトくん♪どうかしたかい?』

「この学園内で空いている寮とかないか?女子寮とか…」

『あー、ちょうど空いて…ちょ!!葵ちゃん!?なんで携帯を取り上げるの?カイトくん!助けて…助け…』(プツッ…)

電話の向こうではノイズ音が入り聞こえなくなっていた。

「……やったな、お前ら…」

「何のこと?」

「絶対に葵と手を組んでる事が丸わかりだわ!」

ダンボールを外の廊下に出そうとするとシズカが手を止めた。

「カイト…もう諦めろ、お前はアリスちゃんと一緒の部屋で寝る事になるんだ…その運命は変わらない…」

「何ラストシーン的な空気にしようとしてんだ!脅迫して同じ部屋にしたいだけだろうが!」

「いや?私としては二人とも一緒にいた方が扱い易いからな♪」

「えっ…でもカイトと一緒の部屋になっても何もしないよ?だってカイトに手を出したらねぇ…♪」

アリスはニヤニヤとしながらダンボールから止まっていた私物を取り出しを始めていた。

「あぁ…今までの俺の部屋が…」

「大丈夫♪故意にはカイトの方に行かないから!故意にはね♪」

「なんでも無自覚です、なんて言う訳ないよな?」

「そ、そ、そんな事は…」

目をそらしながらカイトの発言に目を背ける。

「はぁ…仕方がねぇな…開けるの手伝ってやるよ、半ば強制的だが一緒の部屋になるんだからな」

足元にあった小さなダンボールの中を見ようとするとアリスが慌て始めた。

「あっ!そこは!!!大丈夫だから違う方を!」

すぐに手を掛けた小さなダンボールを取り上げると奥の方へと置くと慌てながら他のダンボールを指差した。
(なんであんな風に慌ててるんだ?あっ…もしかして下着とか入っていたのか…それなら悪い事したな)

「そのダンボールに何か入っていたのか?」

「いや…その…大切な物が入っているから…」

「そうか、なら他のダンボールでも片付けておく」

その調子でアリスの私物を部屋に置きリビングに向かうと、今までどこにいたのかと聞きたいがのんびりしていたアスカ達がリビングにいた。

「あっ、カイトおつかれ様♪いやー疲れたー」

「てか、アスカ達はどこに居たんだよ、出掛けてた?」

「んーん?暴れてたユリさんを抑えて…」

「ユリちゃんと一緒にスーパーの列を抑えていたもんねー♪」

小町がアスカを威圧しているように感じるが気のせいだろう。

「あっ!そうだ!言い忘れてたけどもうすぐテストだね♪」

「テストか、まぁ、赤点にはならないだろ、小テストでも90は取れてたからな」

「…」

その場にいたアカリは黙り込みながら背伸びして無理やりカイトの肩に手を置いた。
その顔は残念そうな顔をしていた。

「カイト、お前って…あそこまでの激闘をするくらい強いんだよな…」

「強さはまぁ…」

涙目でカイトに訴えかけるようにアカリの口が開いた。

「残念だけど…このテストは筆記じゃなくて…実技なんだぞしかも退学もあり得る」

「…は?」

カイトの開いた口が塞がらなかった。

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