毒手なので状態異常ポーション作る内職をしています
5-4
***
さらに数日が経った。
道具袋に入れるポーションの種類をチェック。限りある容量の中でどれを何種類持ち歩くか、個数にはいつも悩まされる。
今日はウタと狩りに出かけることになっている。
つまり、助けはまだ来ていない。
だが俺とて、ここに閉じ込められてから一度も逃げ出そうと思わなかったわけではない。
四日目の時にウタの目を盗んで、小屋からずっと歩いて結界のあるらしき場所まで行きはした。
思っていたより結界は広く、俺はてっきり、本当に山小屋の回りだけぐるりと囲っているのかと思っていたが、辿り着くまでにだいぶ時間がかかった。
結界の果ての山肌からは、麓の村をかなり近くで望むことができた。
それも、ウタが俺のポーションを換金しに行っていると思わしき道具屋の看板までくっきりと。
しかし、結界の場所に差し掛かると、とたんにいくら歩いても周囲の風景が変わらなくなる。
それでも強引に走って外に出ようとすると、
“「お帰り~」”
いつの間にか俺は家の中にワープしていて、目の前ではウタがイスに座って出迎えていたのだ。
逃げ出そうとしたことを意にも介さず結界で紅茶を淹れる彼女を見て、どうやら抵抗はムダらしいと悟ったのだった。
「じゃ、そろそろ出発するよーん」
「おうよ」
何度か一人で材料集めがてら簡単な採集には出かけていたが、ウタと行くのは初めてだ。
ウタの武器はナイフで、防具は薄手のスタンダードな魔導コート。
杖を持たない、つまり、サポート系の魔法使い。
彼女の使う結界の魔法は攻撃よりも仲間の補助がメインで、頼もしいというよりは心強い。
俺達は山中へと繰り出した。
今回の目的はワイバーンから取れる『燃えている雫(しずく) 』の採集だ。
計画は、隠れ家から崖道を登って、山の中腹、開けた場所にいる個体を狙うというもの。
ワイバーンは速いため、こちらの攻撃をいかに当てるかが重要だ。
パラライポーションさえ当てられればかなり楽になるのだが、気休め程度に持っておこう。
ふと、レイラとの冒険を思い返す。
あれは一年前。彼女とは初対面だった。
申し訳ないとは思いつつ、ギルドの受付で毒手というお荷物を抱える犠牲者を見繕っていたとき。
『――ちょっと、そこのお前』
声をかけられ、人数合わせのため半ば強制的に同行することになったのを記憶している。
もう一人のメンバーはレイラの付き人、あのカンザクという忍者。かなり歳上のおっさんなのだが、冒険者としての経歴は俺と同じくらいの初~中級冒険者らしい。
というのも、冒険者学校には入学の年齢制限は無いため、集まる訓練生はバラバラなのだ。
それで、カンザクのような見た目だけベテランの人がちらほらいるのである。
いっぽうのレイラは、神童と呼ばれ、子供のうちに冒険者学校を卒業。
いわゆる、絵に描いたような秀才。
その噂は俺の耳にも入っており、七歳の時に既に卒業している彼女が天才であることを知っていた。
「七歳、か……」
それは十年前。
つまりエルという友達に何かがあったらしいとき。
友人の身に起きた爆発事故。
何があって、その後はどうなったのだろうか。
仮にもサイバード・シティという科学の最先端で起こった事故。
その話が本当ならば、不祥事としてもっと世間に知られている筈ではないか。
ウタからは未だに教えて貰えていない。
もしかしたら、レイラがこの隠れ家に来るその時までだんまりを決め込むのかもしれない。
問題は、彼女がここまで来るかどうかだ。ウタはレイラの従者だと言っているし、少なくともこの場所に見当くらいつきそうなものだが。
そうでなくても、俺の仲間の方は探し回っていそうなものだけど。
カリン達、今ごろどうしているのだろうか。
そろそろ助けに来てくれても良さそうな頃合いだ。
傍目からは、突然俺とウタが目の前から消えたように見えたと思うし、さすがに放っておくわけにも行かないだろう。
まさか忘れられて――
な、無いよな?
……なんか心配になってきた。
「なあに、考えごと?」
けもの道を進みながら思索していると、ウタが顔を覗きこんできた。
「ああ、ちょっとな」
「教えてよ」
「なんかやだ」
「……あ、もしかして、えっちぃこと?」
 「――ここからどうやって出ようか、とかな」
歩きながら、隣の彼女を軽くにらんでみる。
「まあその点についてはこのウタ様に任しといてよ。
絶対に助けるから、たーんと、大船に乗ったつもりで待っててね!」
「お前が閉じ込めたんだろっ」
崖道に差し掛かった。
さらに数日が経った。
道具袋に入れるポーションの種類をチェック。限りある容量の中でどれを何種類持ち歩くか、個数にはいつも悩まされる。
今日はウタと狩りに出かけることになっている。
つまり、助けはまだ来ていない。
だが俺とて、ここに閉じ込められてから一度も逃げ出そうと思わなかったわけではない。
四日目の時にウタの目を盗んで、小屋からずっと歩いて結界のあるらしき場所まで行きはした。
思っていたより結界は広く、俺はてっきり、本当に山小屋の回りだけぐるりと囲っているのかと思っていたが、辿り着くまでにだいぶ時間がかかった。
結界の果ての山肌からは、麓の村をかなり近くで望むことができた。
それも、ウタが俺のポーションを換金しに行っていると思わしき道具屋の看板までくっきりと。
しかし、結界の場所に差し掛かると、とたんにいくら歩いても周囲の風景が変わらなくなる。
それでも強引に走って外に出ようとすると、
“「お帰り~」”
いつの間にか俺は家の中にワープしていて、目の前ではウタがイスに座って出迎えていたのだ。
逃げ出そうとしたことを意にも介さず結界で紅茶を淹れる彼女を見て、どうやら抵抗はムダらしいと悟ったのだった。
「じゃ、そろそろ出発するよーん」
「おうよ」
何度か一人で材料集めがてら簡単な採集には出かけていたが、ウタと行くのは初めてだ。
ウタの武器はナイフで、防具は薄手のスタンダードな魔導コート。
杖を持たない、つまり、サポート系の魔法使い。
彼女の使う結界の魔法は攻撃よりも仲間の補助がメインで、頼もしいというよりは心強い。
俺達は山中へと繰り出した。
今回の目的はワイバーンから取れる『燃えている雫(しずく) 』の採集だ。
計画は、隠れ家から崖道を登って、山の中腹、開けた場所にいる個体を狙うというもの。
ワイバーンは速いため、こちらの攻撃をいかに当てるかが重要だ。
パラライポーションさえ当てられればかなり楽になるのだが、気休め程度に持っておこう。
ふと、レイラとの冒険を思い返す。
あれは一年前。彼女とは初対面だった。
申し訳ないとは思いつつ、ギルドの受付で毒手というお荷物を抱える犠牲者を見繕っていたとき。
『――ちょっと、そこのお前』
声をかけられ、人数合わせのため半ば強制的に同行することになったのを記憶している。
もう一人のメンバーはレイラの付き人、あのカンザクという忍者。かなり歳上のおっさんなのだが、冒険者としての経歴は俺と同じくらいの初~中級冒険者らしい。
というのも、冒険者学校には入学の年齢制限は無いため、集まる訓練生はバラバラなのだ。
それで、カンザクのような見た目だけベテランの人がちらほらいるのである。
いっぽうのレイラは、神童と呼ばれ、子供のうちに冒険者学校を卒業。
いわゆる、絵に描いたような秀才。
その噂は俺の耳にも入っており、七歳の時に既に卒業している彼女が天才であることを知っていた。
「七歳、か……」
それは十年前。
つまりエルという友達に何かがあったらしいとき。
友人の身に起きた爆発事故。
何があって、その後はどうなったのだろうか。
仮にもサイバード・シティという科学の最先端で起こった事故。
その話が本当ならば、不祥事としてもっと世間に知られている筈ではないか。
ウタからは未だに教えて貰えていない。
もしかしたら、レイラがこの隠れ家に来るその時までだんまりを決め込むのかもしれない。
問題は、彼女がここまで来るかどうかだ。ウタはレイラの従者だと言っているし、少なくともこの場所に見当くらいつきそうなものだが。
そうでなくても、俺の仲間の方は探し回っていそうなものだけど。
カリン達、今ごろどうしているのだろうか。
そろそろ助けに来てくれても良さそうな頃合いだ。
傍目からは、突然俺とウタが目の前から消えたように見えたと思うし、さすがに放っておくわけにも行かないだろう。
まさか忘れられて――
な、無いよな?
……なんか心配になってきた。
「なあに、考えごと?」
けもの道を進みながら思索していると、ウタが顔を覗きこんできた。
「ああ、ちょっとな」
「教えてよ」
「なんかやだ」
「……あ、もしかして、えっちぃこと?」
 「――ここからどうやって出ようか、とかな」
歩きながら、隣の彼女を軽くにらんでみる。
「まあその点についてはこのウタ様に任しといてよ。
絶対に助けるから、たーんと、大船に乗ったつもりで待っててね!」
「お前が閉じ込めたんだろっ」
崖道に差し掛かった。
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