毒手なので状態異常ポーション作る内職をしています
3-6
唖然とする三人。
「これはいったい……」
俺の手を離したアイザックさんが険しい顔をした。
「それ、ベノムキャノン!じゃあベノムショット!
ふん!はっ!食らえ!放て!出でよ!
やっぱりダメだな……」
試しに、いろいろとやり方を変えて毒弾を近くの的に撃とうとしてみたが、まるで何かがつっかえたかのような感じがして放つことが出来ない。
最後にやけくそで「ただのショット!ただのキャノン!」と言って腕を振り回してみたが、ムダだった。
「――やっぱりダメです。それに毒はおろか普通のエネルギー技さえ出せないです」
「エネルギーも、だって?
たしか、毒手の師とか千の技とか言っていた……なにか関係があるのは間違いないし、少なくとも、これはあの彼の仕業だろうね」
「こやつ、一生このまま過ごすのか?」
「そんなわけないだろ。
……とにかく、言うだけ言って消えたアイツを探さないと。
カティアさん、奴がどっちに行ったかわかりますか?」
「いえ、さっきの瞬間移動と同じ要領でしょうか、ここを出た後、一瞬で消えてしまいました」
彼女は首を振った。
「そんな……」
半分絶望しかけてアイザックさんをすがるように見る。
「あれは所詮ショートテレポートだよ、だからそう遠くには行けないさ。
まだ街にいるはずだよ、手分けして探そう。」
「お師匠、探すと言っても、どうするのじゃ?
いくら街の中とはいえ、ここは相当広いのじゃよ。
やみくもに探していては何日もかかってしまうぞ」
「それについては、僕に考えがある。」
「考え、ですか?」
「市場の商人を使うのさ」
「商人?」
「おお、なるほどですね!その手がありましたか!」
「カティアさん、どういうことですか?」
「情報収集ですよ、簡単に言えば。」
「情報収集、ですか?」
人探しのために情報を集める、当たり前のことのように思えるが。
それにはアイザックさんが説明してくれた。
「市場を行く商人達の、膨大な情報網を利用するんだよ。
彼らは儲けるチャンスを逃さないために、常に耳をそばだてている。
時にはギルドや、情報屋と呼ばれる人達から有益そうな情報をお金で買っているほどだ。
そんなわけで、この街の物価からちょっとした噂まで、ありとあらゆることを知り尽くしているだろうからね。」
「そうか、商人達に聞いて回れば良いのか――、
ん?でも、さっきの奴がもし外の人間だったらどうしょうもないですよね?」
「あの彼、こんな裏道にある旧闘技場を知っていた。それだけで、かなりこの辺に詳しいことが分かったよ。
実は、市場からここまではさっきの道じゃなくても行けるんだ。
普通は住宅街を通らずとも、大きな通りから行ったほうが道に迷わずに行ける。
我々がついていった道の方は近道だけど、複雑に入り組んでいるからね。
大穴で、観光が大好きという可能性もあるけど、ずかずかと入り込んで決闘を挑むあたり、観光ではなく実戦としてかなりここを使いなれている。
だから、彼はランプリットの街に内側から深く関わりがあると考えて問題はないよ。」
俺の疑問は否定された。
「それじゃあ、また市場に戻りましょうか」
「げに、世話が焼ける奴よ」
***
そして。
「さあさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
通りすがりの冒険者、ここにあり!
学者にアーチャー、女戦士!――あと、こいつは、えーと……そうだ、危険物取扱士!
世にも奇妙な即席パーティー!
進行を努めさせて頂きまするは、調合界の申し子の弟子、カリン、そしてばいんばいんのお姉さま、カティア、なのじゃ!」
「こら、最後のそれはやめなさい!」
カティアさんがカリンを軽くはたく。
――なんだよ危険物取扱"士"って。
「今ならわしらが即興で作ったポーションもつけて、な、な、なんとたったの840ゴールド!
さあさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい――!」
「あの~、なぜ私が呼び込みをすることに……」
俺はアイザックさんと、ある店の前に立ちながら二人の漫才を横目で見ていた。
「なんですかこの茶番は……」
「しっ、これも、情報収集のためだよ」
「だとしても、『ここの商品を全部売りさばいたら教えてやる』、なんて無茶苦茶すぎますよ!」
「でも、聴き込み一軒目で『ああ、あの戦闘狂のボウヤかい。よく知ってるよ』、なんて言われるなんて、本当にラッキーだよ」
この二人が店の人の指示で呼び込み役になった。
「元はといえばお主のせいなんじゃぞ、あとで覚えとれ」と言いつつ、ノリノリなカリンである。
「市場にはちょっと帰る前に寄るだけだったのに……
俺のせいでみんな付き合わせちゃって申し訳無いです……」
「気にしない気にしない。二人も案外楽しそうだし。」
「はぁ……」
「兄ちゃん!こっちにも一個くれ!」
「は、はい!ただ今!」
案外人が集まってきて、俺は対応に忙しかった。
「これはいったい……」
俺の手を離したアイザックさんが険しい顔をした。
「それ、ベノムキャノン!じゃあベノムショット!
ふん!はっ!食らえ!放て!出でよ!
やっぱりダメだな……」
試しに、いろいろとやり方を変えて毒弾を近くの的に撃とうとしてみたが、まるで何かがつっかえたかのような感じがして放つことが出来ない。
最後にやけくそで「ただのショット!ただのキャノン!」と言って腕を振り回してみたが、ムダだった。
「――やっぱりダメです。それに毒はおろか普通のエネルギー技さえ出せないです」
「エネルギーも、だって?
たしか、毒手の師とか千の技とか言っていた……なにか関係があるのは間違いないし、少なくとも、これはあの彼の仕業だろうね」
「こやつ、一生このまま過ごすのか?」
「そんなわけないだろ。
……とにかく、言うだけ言って消えたアイツを探さないと。
カティアさん、奴がどっちに行ったかわかりますか?」
「いえ、さっきの瞬間移動と同じ要領でしょうか、ここを出た後、一瞬で消えてしまいました」
彼女は首を振った。
「そんな……」
半分絶望しかけてアイザックさんをすがるように見る。
「あれは所詮ショートテレポートだよ、だからそう遠くには行けないさ。
まだ街にいるはずだよ、手分けして探そう。」
「お師匠、探すと言っても、どうするのじゃ?
いくら街の中とはいえ、ここは相当広いのじゃよ。
やみくもに探していては何日もかかってしまうぞ」
「それについては、僕に考えがある。」
「考え、ですか?」
「市場の商人を使うのさ」
「商人?」
「おお、なるほどですね!その手がありましたか!」
「カティアさん、どういうことですか?」
「情報収集ですよ、簡単に言えば。」
「情報収集、ですか?」
人探しのために情報を集める、当たり前のことのように思えるが。
それにはアイザックさんが説明してくれた。
「市場を行く商人達の、膨大な情報網を利用するんだよ。
彼らは儲けるチャンスを逃さないために、常に耳をそばだてている。
時にはギルドや、情報屋と呼ばれる人達から有益そうな情報をお金で買っているほどだ。
そんなわけで、この街の物価からちょっとした噂まで、ありとあらゆることを知り尽くしているだろうからね。」
「そうか、商人達に聞いて回れば良いのか――、
ん?でも、さっきの奴がもし外の人間だったらどうしょうもないですよね?」
「あの彼、こんな裏道にある旧闘技場を知っていた。それだけで、かなりこの辺に詳しいことが分かったよ。
実は、市場からここまではさっきの道じゃなくても行けるんだ。
普通は住宅街を通らずとも、大きな通りから行ったほうが道に迷わずに行ける。
我々がついていった道の方は近道だけど、複雑に入り組んでいるからね。
大穴で、観光が大好きという可能性もあるけど、ずかずかと入り込んで決闘を挑むあたり、観光ではなく実戦としてかなりここを使いなれている。
だから、彼はランプリットの街に内側から深く関わりがあると考えて問題はないよ。」
俺の疑問は否定された。
「それじゃあ、また市場に戻りましょうか」
「げに、世話が焼ける奴よ」
***
そして。
「さあさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
通りすがりの冒険者、ここにあり!
学者にアーチャー、女戦士!――あと、こいつは、えーと……そうだ、危険物取扱士!
世にも奇妙な即席パーティー!
進行を努めさせて頂きまするは、調合界の申し子の弟子、カリン、そしてばいんばいんのお姉さま、カティア、なのじゃ!」
「こら、最後のそれはやめなさい!」
カティアさんがカリンを軽くはたく。
――なんだよ危険物取扱"士"って。
「今ならわしらが即興で作ったポーションもつけて、な、な、なんとたったの840ゴールド!
さあさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい――!」
「あの~、なぜ私が呼び込みをすることに……」
俺はアイザックさんと、ある店の前に立ちながら二人の漫才を横目で見ていた。
「なんですかこの茶番は……」
「しっ、これも、情報収集のためだよ」
「だとしても、『ここの商品を全部売りさばいたら教えてやる』、なんて無茶苦茶すぎますよ!」
「でも、聴き込み一軒目で『ああ、あの戦闘狂のボウヤかい。よく知ってるよ』、なんて言われるなんて、本当にラッキーだよ」
この二人が店の人の指示で呼び込み役になった。
「元はといえばお主のせいなんじゃぞ、あとで覚えとれ」と言いつつ、ノリノリなカリンである。
「市場にはちょっと帰る前に寄るだけだったのに……
俺のせいでみんな付き合わせちゃって申し訳無いです……」
「気にしない気にしない。二人も案外楽しそうだし。」
「はぁ……」
「兄ちゃん!こっちにも一個くれ!」
「は、はい!ただ今!」
案外人が集まってきて、俺は対応に忙しかった。
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