毒手なので状態異常ポーション作る内職をしています

桐生 舞都

2-3

ダンジョンに入っていきなりザコ敵に囲まれてヒヤヒヤしたが、その後同じように魔物に遭遇しても、それぞれ危なげなく各個撃破していった。


俺は内心ドギマギしていた。毒手の使えなさに二人が呆れることを。


しかし、両人とも戦闘に集中している。時々攻撃を食らって危なっかしくなる俺を気にしながらも、それぞれのターゲットを素早く撃破するのに専念している。


やっぱり、初めから期待されてないんだな……。


とりあえず俺は、二人の足を引っ張らないことに専念しよう……


森ももうすぐ中盤だ。


「ひととおり戦闘をこなしてみて、毒手の扱いが上手くなった感じはするかい?」


「いや、それが全然。こうして戦ってみても、『いつも通りだな~』って感覚でして。


毒の出をコントロールしようと思って、手に感覚を集中させても、全然毒を抑えてるって気がしないんです。」


「ふむ。単に意識を集中させるだけでは、ダメなのかもしれないね。


もしかしたら何か条件が――」


――と。


キィン!キイィイン!


鉄を打ち合う音。


冒険者か?


「ごめんなさい、ごめんなさい!」


謝る女性の声。一瞬、仲間割れしたパーティーの喧嘩か?とも思った。


しかし、俺が目にしたものは、違った。


戦士らしき女性と巨大な魔物がそれぞれ斧と鎌を打ち合っている。


俺が驚いたのは、重そうな斧を振り回しているのが魔物ではなく女性の方だったということだ。


「ごめんなさい!ごめんなさい!もう間違って踏んづけたりしませんから!」


おっとりした感じで、なぜか謝罪の言葉を繰り返している。


女性は言葉とは裏腹に、斧を思いっきり地面に叩きつけた。


ぶぉん、と空気の切れる音がする。


斧は人型の魔物の足に命中したが、そいつは重い一撃を食らってなお平然としていた。


魔物は、ローブを被った三メートル近くある大男だった。袖の下から、包帯を巻いたボロボロの腕が見えた。明らかに人間ではない。


「あの魔物は――!間違いない、ここの中ボスだよ!」


互角に打ち合っているようだけど、女性の方が少し息が上がっている。


「押されているようだ、早く助けないと!!」


俺たち三人は飛び出していった。


「助太刀するのじゃ!」


「――っ!あなたたち、だれっ!?」


「ただの通りすがりの冒険者です!」
「中ボス相手に一人なんて危ないですよ!」


ローブを着た巨体で手には鎌の包帯男。アンデッド系だろうか。アイザックさんは中ボスと言っていた。


魔物は俺たちの姿を確認すると女性と打ち合うのをやめて後ろに飛び退き、そして咆哮した。


耳をつんざくような悲鳴とともに、空気がぴりぴりと震える。


威嚇のつもりだな。


相手は持っている鎌を手当たり次第に振りまくる。
見たところ知能は低そうだ。


アイザックさんが火炎瓶を投げる。


魔法系でない俺たちにとっては、植物とアンデッドが巣くう『墨染の森』での火炎攻撃の役割は大きい。


が――、


バシュッーー


魔物が錆び付いた鎌を降ると火炎瓶は弾き飛ばされ、引火せずに地面に落ちた。


こいつ、以外と速え!


俺は、エネルギー弾を打ち出す。


毒弾は相手に命中するも――。


「くそ、毒が効かねえ!」


うん、わかってた。アンデッド系へのお約束。ローブ野郎は怯みもしなかった。


ならば直接攻撃でダメージを狙う。


俺は腰に差していた小刀を右手に構え、間合いを詰めた。


しかし、敵はステップを踏み、嘲笑うかのように俺の小刀を回避した。


チッ、こうなったら至近距離でぶつける!


俺は左手にエネルギーを溜め――、


「うおっ!?」

当てられなかった。


俺の攻撃の前に、素早く鎌が降り下ろされ、頭を掠める。


このリーチで、接近戦は無謀だったか。


大男は、毒でちょっかいを出した俺を無視して、アイザックさんのほうに突進していった。


危ない!


「師匠じゃのうてワシかコイツを狙え、バカモンが!」


耳元で空気を切る音がして相手の動きが一瞬鈍くなる。


カリンが包帯男の脚を狙って光の矢を放ったのだ。


しかし、足に矢を受けてなお、やつは止まらず、そのままカリン達の方に突撃する。


速い。


「てやぁぁあっ!!」


女性の声。


ごす、と鈍い音。


そして、止まる。


止まった。


包帯男は止まっ……え?


一瞬何が起きたか分からなかったが、大きな鉄の塊。それを見て理解した。


横から飛び出してきた女性が斧を振り上げ、包帯男に命中させたのだ。


この人のこと、半分忘れてた。


上に切り上げた斧を顎に食らった包帯男が後ろによろめき、ローブがずり落ちる。


横槍、もとい横斧を入れられた中ボスはローブと包帯のとれかけた醜悪な肌を晒しつつ後ろに倒れこんだ。


今だ――!!


俺はアシッドポーションと火炎瓶で一気に畳み掛ける。

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