毒手なので状態異常ポーション作る内職をしています

桐生 舞都

第2章 パーティーなんて久しぶりです 2-1


「コーキくん、進捗はどうだい?」


「順調っす」


ファルガーモ研究所で助手をするようになって早三週間。


初めは不安もあったが、助手の仕事は雑用のほかに、アイザックさんの実験に使うポーションを作るのが主なので、内職とあまり変わらないような気もする。


だが、それ以外のことは決定的に違った。


まず、設備だ。
俺は自分で調合するときに、よく失敗する。調合の素材には似通ったものが非常に多く、しょっちゅう間違えるのだ。


しかし、ここではアイザックさんというプロがいて、素材・薬品は厳密に管理されている。


俺がラベルを読み間違えない限り単純なミスは無く、今では失敗は俺の単なる腕前の問題となった。


それから、調合が勉強出来るようになったことが大きい。調合学は難しいので、入門書を少しずつ読める程度だが。


最後は、内職である。アイザックさんが、空いている設備を使うことを許可してくれたため、材料さえあればわざわざ家まで戻らずともポーションを作れるようになったのが地味にありがたい。


俺は今しがた調合したポーションをガラスの容器に入れて並べていた。


基本的に左手の手袋は外せないが、毒薬を作る時は俺が試験管に左手から直接垂らしてやるだけで完成する。


今日は残念ながら毒系のポーションは作らない。


左から、成功、成功、成功、成功、失敗、成功、成功、失敗、一つ飛ばして……パラライポーション!
我ながら中々の成功率だ。



「今日は調子がいいようだね」


アイザックさんが感心したように言った。


「ありがとうございます。」


今は、彼が実験に使うポーションを選んでいたところだ。


「ところで、この前貸した本は読んだかい?」


彼はふと思い出したように聞いてきた。


俺は研究所に入った時、アイザックさんに「なにか興味のあること、研究したいことはあるかい?」等のことを聞かれて、「まだなにもわからない」と答えると調合の入門書を何冊か渡されたのだった。


しかし、入門書とは言っても俺のような初学者には十分難解。それでも仕事の合間や家に帰って寝る前にチマチマと読んではいるのだけども。


「まだ2冊だけ……」



「まあ初めはゆっくり、面白そうなところだけ拾うのでもいい、君がやりたいことを見つけるのが先決だから」


「いや、興味あるなー、面白いなーってのは一応出来たんです」


「ほうほう、何の分野かな?」


「毒には嫌な思い出も多いので俺自身、これに興味を持ったのは不本意なんですけど――、

……実は、状態異常系が気になってます」


「なるほどね。どうしてまた状態異常を?」


「毒の手を上手く扱うためです。」


「具体的にどう扱いたいの?」


「とりあえず、毒のオンとオフを今すぐにでもコントロール出来るようになりたいです」


「あー、それいっつもするの、大変だもんね」


アイザックさんは納得したように、俺の左手にはめた手袋を示す。


「それで、他には無いの?


例えば全身から、誰にも気づかれずに毒を出せるようにして、触れたもの全てを腹痛にさせるとか――、」


そんなことしたら俺嫌われまくりですよ、ある意味誰も近づかなくなりますよ。


「いやそれは結構です」


「冗談はさておき、君は毒手を冒険に役立てようとは思わないのかい?

君がその左手を不便がってるのは分かるけど、それよりもチカラを極めてみようとか考えたりしない?」


「思いません」


「どうして」


「俺の能力を見る他の冒険者の視線が痛いんです

……それに今はもう名ばかり冒険者でして。

ポーション作りで経験値チマチマ稼いでるほうが性に合ってるんですよね……」


「そうかそうか……それで、毒手をコントロールする目処はついているのかい?」


「二年間コイツとつきあってますが、毒をオフにする方法がてんでわかりません……」


「なるほどねー」


「アイザックさんは、何か案があるんですか?」


「僕はね、第一に使いこなすことだと思うよ。」


「使いこなす?ポーションを作りながら特訓でもやるんですか?」


「いや……

僕も君と出会ってから、その毒手を観察し続けて思い至ったんだけどね……」


彼は言いにくそうに続けた。


「実戦を積み、最終的にはチカラを自在にコントロール出来るようになるのが目標……僕はね、毒手を使いこなすためには、冒険にでも出るしかないと思うよ」

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