声の神に顔はいらない。
343 頭大丈夫ですか?
「匙川君、君は声優としてどこまで行きたい?」
「どこまで……ですか?」
社長は私にも車に乗るように言って、私が車に乗って扉を閉めたのを確認するとそう聞いてきた。なぜにわざわざ? とか思ったけど、車に乗って気づいた。普通に駐車場は寒いのだ。車の中は暖房が効いてて温かい。思わず一息ついたところにそんなふうに聞かれたから、ちょっと姿勢を正す。それにしてもよくわからない質問……いや、目標を聞くってのはわかりやすい方だけど……それを聞いて社長はどうしてくれるのだろうか? それに声優一人ひとりの目標とかいうの、社長は確認してるんじゃないの? 流石にクアンテッドほど大きい会社はそんな事しないと思うが、ウイングイメージまだ出来るとは思う。
それにこの人は結構こっちに寄り添ってくれる社長だ。だから私の目標とかわかってると思うけど……社長はこっちを見ようとはしない。でも、バックミラーでこっちを見てるのはわかる。なんか一人で車内にいる演出でもしてるのだろうか? この車も一応声優とか乗せて運ぶだけ会って、後ろの方の窓は薄暗い膜が貼ってあって中から外は見えるけど、外から中は見えないようになってる。だから外に誰かいても、私の存在はバレないだろう。
それがこの場合なんなのか……は知らないけど。私はそもそも顔出ししてないから、アイドル声優みたいに隠れる必要なんてないんだよね。
「そうだ。君は本物の声優になりたいんだろう? なら、どこまで行く気だ?」
なんか社長の口から本物の声優とかワードが出てくると、とたんに恥ずかしい気がしてくる。いや私が言っても十分恥ずかしいものだってのは自覚してるよ。でも社長のように、いい感じに年食ってる人がいうとね……でもその顔も声も真剣そのもの。そしてこれは自分の決意を表す事のような気もする。なに相手は社長だ。マネージャーに言うのとはなんか違う。私は汗ばむ程に拳を握って口を開いた。
「どこ……までも……です。私は……一生、声優で……死ぬ時まで声優でいたい……それが本物の声優だから」
私もバックミラーを見て、社長と目を合わせる。すると社長はふっと笑った……気がした。実際バックミラーじゃ目元しか見えないだ。でも笑った気がしたのは、座席に座ってる社長の肩が揺れたようにみえた……から。
「それは一番とかじゃなくてもいいのかな?」
「声優に……一番なんてないです……から。私はアイドル声優に……なる気はありません」
まあ成れないんだけどね。どう頑張っても無理な人だっているんたよ。アイドル声優のハードルが普通のアイドルとかよりもだいぶ低くても、私にはその大分低いハードルさえも超えられない。だからそんなの見ないのだ。私は声だけでやる……それは事務所にとっては私に旨味を見いだせないって事かもしれない。だって、アイドル声優なら、色々と出来る。イベントとかコンサートとかだ。でも私にはそんなので、事務所にお金を落とすなんてことは無理だ。
「そうだね、君の声は素晴らしいと思ってるよ。だが……それだけでは厳しいのも今の世だ」
「…………」
ギュッと私は更に強く手を握った。諦めろって言われるんだろうか? 今までたくさんの人達にそれを言われてきた。でもどうにかやれそうな感じに最近なってきたんだ。私自身が求められる……そんな状況……誰かの変わりじゃない。私の声を必要としてくれる場所……それは……あると思ってる。でもそれが、私に手を伸ばしてくれることはなくて、私が動かないとやってこない。
そして私だけでは絶対に取りこぼすことになるんだ。なにせ現場はオーディションという形でしかやってこないからだ。私が本当に売れそうもないってなったら、さすがのここでもオーディションの枠を回してもらえなくなる。そうなると私を必要としてる場所を見つけることもできない。だって、飛び入り参加させてくれない。この人に見捨てられた……私は……
「あ、あの――」
「よし、わかった。行きなさい。次のオーディションの内の二枠の一つを君にあてがおう。社長権限でな」
「――え?」
何? どういう事? 新手の詐欺? そのくらい、私は社長が言いだした事が理解できなかった。
「どこまで……ですか?」
社長は私にも車に乗るように言って、私が車に乗って扉を閉めたのを確認するとそう聞いてきた。なぜにわざわざ? とか思ったけど、車に乗って気づいた。普通に駐車場は寒いのだ。車の中は暖房が効いてて温かい。思わず一息ついたところにそんなふうに聞かれたから、ちょっと姿勢を正す。それにしてもよくわからない質問……いや、目標を聞くってのはわかりやすい方だけど……それを聞いて社長はどうしてくれるのだろうか? それに声優一人ひとりの目標とかいうの、社長は確認してるんじゃないの? 流石にクアンテッドほど大きい会社はそんな事しないと思うが、ウイングイメージまだ出来るとは思う。
それにこの人は結構こっちに寄り添ってくれる社長だ。だから私の目標とかわかってると思うけど……社長はこっちを見ようとはしない。でも、バックミラーでこっちを見てるのはわかる。なんか一人で車内にいる演出でもしてるのだろうか? この車も一応声優とか乗せて運ぶだけ会って、後ろの方の窓は薄暗い膜が貼ってあって中から外は見えるけど、外から中は見えないようになってる。だから外に誰かいても、私の存在はバレないだろう。
それがこの場合なんなのか……は知らないけど。私はそもそも顔出ししてないから、アイドル声優みたいに隠れる必要なんてないんだよね。
「そうだ。君は本物の声優になりたいんだろう? なら、どこまで行く気だ?」
なんか社長の口から本物の声優とかワードが出てくると、とたんに恥ずかしい気がしてくる。いや私が言っても十分恥ずかしいものだってのは自覚してるよ。でも社長のように、いい感じに年食ってる人がいうとね……でもその顔も声も真剣そのもの。そしてこれは自分の決意を表す事のような気もする。なに相手は社長だ。マネージャーに言うのとはなんか違う。私は汗ばむ程に拳を握って口を開いた。
「どこ……までも……です。私は……一生、声優で……死ぬ時まで声優でいたい……それが本物の声優だから」
私もバックミラーを見て、社長と目を合わせる。すると社長はふっと笑った……気がした。実際バックミラーじゃ目元しか見えないだ。でも笑った気がしたのは、座席に座ってる社長の肩が揺れたようにみえた……から。
「それは一番とかじゃなくてもいいのかな?」
「声優に……一番なんてないです……から。私はアイドル声優に……なる気はありません」
まあ成れないんだけどね。どう頑張っても無理な人だっているんたよ。アイドル声優のハードルが普通のアイドルとかよりもだいぶ低くても、私にはその大分低いハードルさえも超えられない。だからそんなの見ないのだ。私は声だけでやる……それは事務所にとっては私に旨味を見いだせないって事かもしれない。だって、アイドル声優なら、色々と出来る。イベントとかコンサートとかだ。でも私にはそんなので、事務所にお金を落とすなんてことは無理だ。
「そうだね、君の声は素晴らしいと思ってるよ。だが……それだけでは厳しいのも今の世だ」
「…………」
ギュッと私は更に強く手を握った。諦めろって言われるんだろうか? 今までたくさんの人達にそれを言われてきた。でもどうにかやれそうな感じに最近なってきたんだ。私自身が求められる……そんな状況……誰かの変わりじゃない。私の声を必要としてくれる場所……それは……あると思ってる。でもそれが、私に手を伸ばしてくれることはなくて、私が動かないとやってこない。
そして私だけでは絶対に取りこぼすことになるんだ。なにせ現場はオーディションという形でしかやってこないからだ。私が本当に売れそうもないってなったら、さすがのここでもオーディションの枠を回してもらえなくなる。そうなると私を必要としてる場所を見つけることもできない。だって、飛び入り参加させてくれない。この人に見捨てられた……私は……
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