声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

275 コンセルジュよりもコンセルジュ

「とりあえず此花さんに報告しておくか」

 通常は自分の仕事は此花さんが一括管理してる。でも今回の仕事……に成るかわからない事は此花さんを通してる訳ではない。直接自分に連絡があったんだ。本当はそう言うのないようになってるはずだが……どういうわけか、それがあった。

 こんな事が許されるとわかったら、色んな所からそれこそ色んなメールが届くことになる。事実、最初はそう言う事がめっちゃあった。四六時中メールが届いて、電話が鳴り止まない……なんて事がね。だからこそ、此花さんが矢面に立つようになったんだ。その彼女の努力は敬意を表してる。

 だからこういう事は一律的にダメなんだけどね。でもその熱意にね……ほだされた。とりあえず向こうはいつでも良いらしい。こっちも時間が出来てたから直ぐに会うことにした。どこか指定の場所があるのかと思ったけど、むこうはこっちに合わせてくれるらしい。

(まあそういう物か)

 お願いしてるのは向こうなんだもんな。それならこっちの都合の良いようにしてくれるだろう。でも自分は丁度良い場所なんてわからないぞ。そもそもそういうのも此花さん任せだし……ファミレスとかでいいのかな? 

「やっぱり此花さんに連絡を……」

 なんでも此花さんが居ないと出来ない奴になってる気がするが、いまは仕方ない。いや、自分だって家の周辺くらい良い店はしってるが、どれだけ警戒しなくちゃいけないのかとかわかんないじゃん。それにこういう時の丁度良い場所っていうと……ね。自分が知ってる店は大体一人で行ける店だ。
 誰かと行くことを想定してない。それに誰かと行く事も大体此花さんだし……あとは接待でそういう店にいくくらいだ。そしてそういう店が相応しくないのはわかる。丁度良いの、丁度良さをしりたい。

「流石此花さん」

 スマホにメールが届いた。今回のポイントとか、店とか全て指定してくれてる。なんと頼りになる人だろうか。コンセルジュかな? 使った事無いが……なにせ此花さんいるからな。このマンションにも当然コンセルジュはいるが、此花さんの方が優秀なんじゃないだろうか? 帰ってきたときに、挨拶くらいしかしないぞ。
 通販の荷物を預かってもらえるのは便利だけどね。

 とりあえず此花さんが指定してくれた店の場所を伝える。そのままURLをコピペして返すだけだけどね。それでLINEに地図上で場所が表示されるだろう。Googleマップでもいい。場所が決まったし、少しだけ身だしなみを整えて、家を出た。

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